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お引越し準備。の準備 10
しおりを挟むカッサンドラさんの見通しに安心したのか、総支配人さんはいつも通りの穏やかな瞳に戻り……、いや、違う。なんだかいたずらな光を瞳に宿し、
「❝野菜を摂取すると肌が白くきめ細やかに美しくなる❞なんて話、王妃陛下は一体どこでお知りになったんだろうねぇ?」
私をじっと見つめながら微笑みを浮かべた。その微笑みに気が付いたカッサンドラさんは❝あっ❞という表情で私を見ながら、
「近々商業ギルドが詳しい情報を発表すると言っていらしたそうですわ。情報登録をされたのが王家縁の方だそうで、王家は登録者から事前に話題にすることの許可を得ているとのことで……。でも、詳しい話は商業ギルドからの発表を待つようにおっしゃったそうよ。その情報の発表と共に、野菜を使った美味しい料理のレシピも同時に発売されるそうで、とっても楽しみにしていると…………。 ねえ、旦那さま?」
「ああ。きっと、そうなのだろうねぇ」
「………宿の料理は、ますます評判になりますわね!」
夫妻で話を完結させて、なんだか不思議な笑顔で私をみつめる。
なんて言うか、ああ、そうだ…。マルゴさんたちや護衛組たちが浮かべていた❝大丈夫、わかっているからね?❞とでも言いたげな笑顔だ。
……ここでも何かの誤解が発生したことを私は理解した。けど、打てる手を思いつかなかった。何を言っても、誤解の上塗りになりそうな予感がしたんだ……。
気を取り直してカッサンドラさんと話をした結果、
・ミネルヴァ家の家は取り壊すことなく、農作業者や泥棒除けに雇う護衛たちの休憩・宿泊施設としてそのまま使用する(状況に応じて補強工事などは行う)。
・庭に農具収納の為の倉庫を建てる(余った肥料もここに入れるらしい)。
・家と倉庫以外の土地は全て畑にする。
・私から買い取る肥料については、ライムの存在が表に出ないようにシナリオを用意する。
事が決まった。
その後でコネクティングルームで待機してくれていた商業ギルドの職員さんにお金のことを相談した結果、
・ミネルヴァ家の販売価格は1億メレ(初回肥料代込み)。
・次回からの肥料の販売については、ネフ村の商業ギルド経由で肥料を販売する。(今はまだ商業ギルドがない村だけど、新領主の要請で近いうちに支部を置くことになっていると職員さんが教えてくれたので信用する。商業ギルドなら手数料を払えば代理販売をしてくれると、これも職員さんに確認済。問題はギルドの中で肥料を置いておく場所だけど……、まあ何とかなるだろう。馬を放して荷馬車(幌付き)のまま置いておいてもいいんだしね)
・肥料の価格は、10㎏35,000メレ(随分と割高な気もするけど、ライムの肥料は殺虫・殺菌・除草までこなす優れモノで世話の手間が大分省ける(ハク談)とのことなので納得した。何より、購入者のカッサンドラさんが「安い!」って言っているんだから、気にしても仕方がない)
・商業ギルドの手数料は販売価格の3%
で話がまとまった。
この話が出なくてもマルゴさんの所には定期的に肥料を届けるつもりだったので、そのついでにお小遣い稼ぎをすることになる。
マルゴさん達から肥料代金を受け取る気はないので、ネフ村までの肥料の輸送費用をカッサンドラさんへの肥料販売の利益で賄う形になった。……素直にラッキー♪って喜ぶことにする。
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