女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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お引越し準備。の準備 4

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「お初にお目に掛かりますわ。ロランドの妻のカッサンドラと申しますの。アリスさまには夫がお世話になっているそうで感謝しております。以後わたくしの事もお見知りおきくださいませ」

 そう言ってふわりと腰を折る女性に私もつられて挨拶を返したものの……。

<ロランド>って誰? 私の頭の中は?マークでいっぱいだ。とりあえずわかっているのは、この美しいご婦人がミネルヴァ邸の購入希望者であることと、見た目はどう見ても貴族っぽいんだけど、どうやら平民らしいということ。

 と言っても判断材料は彼女の挨拶が❝カーテシー❞ではなかったということのみなんだけど。

 私のいた地球では色々なシーンで使われていたカーテシーだけど、この国では貴族女性のみが使える挨拶らしいんだ(モレーノ邸のメイドさん情報)。一般の女性がカーテシーを行うと❝不敬罪❞で罰されることもあるらしい(これもメイドさん情報。挨拶1つもなかなかに難しくて厳しいルールがあるもんだよね)。

 私が頭の中で独りぶつぶつと考えていると、何かにピン!と来た様子のご婦人が、

「まあ! あなたったらまた❝いたずら❞をなさったのね!?
 でも、この方の様子だと……。うふふっ。なぁんとなく、わかりましてよ! 楽しかったのですわね?」

 一瞬だけ咎めるように総支配人さんに視線を送り、でもすぐさまいたずらっぽい笑顔をうかべて総支配人さんの腕を優しく叩く。総支配人さんはご婦人に微笑みを返してから少しだけ困ったように、

「ロランドと申します。アリスさまに名乗りが遅れましたこと、深くお詫びを……」

 名前を名乗ってくれた。

 ………今更だけど、総支配人さんの名前を知らなかった自分にびっくりだ。総支配人さんは<総支配人さん>だと思い込んでいたからね。どうしてかは自分でもわからないけど。

 と言うことは、このご婦人は総支配人さんの<奥さま>ってわけで……。もしかしなくても、結構な年の差婚じゃないのかな? 総支配人さん、なかなかやるなぁ! 

 なんてズレたことを考えてしまった私を見て総支配人さんは、

「やはり、気が付いていらっしゃらなかったようですな」

 楽しそうに笑い声をあげた。

 うん。私にもなんとなくわかったぞ。これはアレだ。礼儀正しい総支配人さんが、今まで名前を名乗らなかった理由。それはきっと、

「アリスさまには大変な失礼をいたしましたこと、夫に代わってお詫び申し上げます。この人の悪い趣味、なのですわ。❝お客さまの本質❞に触れたいと、わざと自分の名前を伏せて反応を観察することがございますの……」

 カッサンドラさんの言う通り、総支配人さんの趣味の❝人間観察❞の一環だったんだろう。

 客商売である宿の総支配人が名前を名乗らない非礼を行うことで、相手がどんな反応をするのか見ていたんだろうね。この宿に泊まれる人はそれなりの地位や名誉を手にしている人が多い。この街一番の❝高級宿❞だからね。そんな人たちにあえて❝名乗らない❞という非礼を働き、どういう風に名を問われるか、または、名を問われない理由は何か、を観察していたんだろう。

 名を問われた時は、誰に問われたか(本人か同行者か)や問われ方、その口調や表情で相手の反応を見られるし、名を問われなかった時は、宿のスタッフの名前など知る必要はないとの考えなのか、自分から聞くことで自分の価値を落とすという考えなのか、などを見ていたのかな?

 ……私は名前を聞き忘れてしまっただけなんだけど。

<総支配人さん>で覚えてしまったから、名前を聞く必要を感じていなかったんだろうな。このことをどんなふうに受け止められたのかちょっと不安だけど、なんだか楽しそうな総支配人さんを見ている限り、悪感情にはつながっていないようだから深く考えないようにする。

 商業ギルドの不動産担当者さんがいる前でわざわざ聞く必要もないからね。

 本当なら、失礼なことをされたと怒るべきなのかもしれないけど、総支配人さんの人となりを知ってしまうと、仕方がない気がするからこれも人徳ってヤツなのかな? 

 だって、顧客観察をするために門番までしちゃう人なんだもん。仕方がないよね?

 さて、皆さんの時間を無駄にしない為にもとりあえずは商談に入ろう。思わず立ち話になってしまったので、仕切り直しとしてまずはソファに腰を掛けてもらい人数分のティーセットを取り出す。

 なんだか妙に気疲れしてしまったので、お茶は甘くしたロイヤルミルクティーシチュードティーが飲みたいな。

 作っておいたシチュードティーをカップに注ぎながら総支配人さん達に何が飲みたいかを聞くと、遠慮をしたのか❝同じ物❞とのことだったので、みんなのカップにもシチュードティーを注いでいくと、

(ぼくがもっていくね~)

 ライムが器用にお盆を持って行ってくれた。その後に続いて自分のカップを持ってテーブルに向かうと、

「なんてお利口なスライム……っ、スライムですわよね? スライムって、こんなに可愛くてお利口だったかしら……?」

 目をキラキラさせてライムを褒めるカッサンドラさんと目が合った。うちのライムがお利口なのは総支配人さんも良く知っていることだけど、カッサンドラさんには話していなかったらしい。顧客の情報はむやみに話さない。話す内容は吟味しているってことかな?

 総支配人さんへの評価を一段上げながら席につき、(さあ、商談だ!)と微笑みを浮かべると、

「1億メレでいかがでしょうか」

 突然の言葉に意表を突かれた。

 は? いちおくメレ……?
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