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ミネルヴァ家 家族会議 8
しおりを挟むおにいちゃん、おねえちゃんたちの尽力の甲斐があり、ミネルヴァ家の子供たち全員に<沈黙の誓い>を立ててもらうことができた。
最初から覚悟を決めてくれていた大きい子たちとは違い、小さい子たちはあまりの痛みに泣き叫んでいたようだけど、ハクがこっそりと張ってくれていた防音結界のお陰で順番待ちの子たちには聞こえなかったのも<誓い>がスムーズに済んだ理由の一つだ。後できっちり褒めてあげないとね!と思っていたら、
(今日の晩ごはんは煮オーク丼がいいのにゃ♪ しっかりと味の染みたゆで卵も一緒なのにゃ!)
(ぼくはオンセンタマゴがいいな♪)
しっかりと❝ご褒美❞の催促が入る。
煮オークと煮卵なら出来上がったものがインベントリにあるから簡単だ。温泉卵は入れていないけど、簡単にすぐできるものだから問題ない。
にっこりと笑顔で了承を示し、今後の打ち合わせの為にミネルヴァさんと向き合うと、
「次はわたくしの番ですね」
「え? 必要ないでしょ?」
ミネルヴァさんが覚悟を決めた顔で部屋を出て行こうとするので引き留めた。
止められるとは思っていなかったようでびっくりした表情を浮かべていたミネルヴァさんだったけど、すぐに何かに思い当たったのか、とても寂し気な表情を浮かべ、
「そうですか……。わたくしはここでみんなとお別れなのですね」
訳の分からないことを言い出した。
そんな訳ないよね? みんなのお母さん兼おばあちゃんのミネルヴァさんが行かないなら子供たちだってきっと引っ越しを拒否するだろうし、なによりも私がミネルヴァさんとみんなを引き離したくない。
当然一緒に行ってもらうつもりだと告げると、だったらどうして自分に<誓い>が不要なのかと不審気な顔をする。でもね?
「そんな<誓い>に頼らなくたって、ミネルヴァさんは秘密を守ってくれるでしょ? それに、ミネルヴァさんまで誓いを立てちゃったら、新しく入ってくる子たちに仕事を教える人がいなくなっちゃうし」
少し考えればわかることだよね? これで納得?と微笑みかけたんだけど、
「お仕事はアリスさんが教えるのはないのですか? わたくしなどにそのような大任を任せてしまって、もしも、もしも、私が情報を漏洩したらどうするのです!?」
と慌てたように縋られしまう……。
ミネルヴァさんが情報を漏洩? ……それって、そうしないとどうしようもない状況に陥ってしまったってことだよね? きっと。 だったら仕方がないんじゃないかな?
「もしも不測の事態が起きたら、その時は素直に話していいからね? 占有登録の期限が切れたら公開するんだし、それが多少早まった所で大した問題にはならないよ。期間中は商業ギルドが権利を保障してくれるし、裏で出回る分についてはギルドの取り締まりに期待しながら放置してたらいいよ。❝本家本元❞の看板はうちだし、うちの商品が市場に出回ったらすぐにでもブランド化するだろうって、ギルドマスターが太鼓判押してくれたしね」
ミネルヴァさんが安心してくれたらいいな、と私の考えを説明すると、
「にゃにゃ~お! んにゃん!(アリスを信用するのにゃ! 仕方がない状況に怒ったりしないのにゃ)」
「ぷきゅ~う! ぷきゅん!(アリスがだいじょうぶっていったら、だいじょうぶなの!)」
2匹がミネルヴァさんの足元に駆け寄り、体を左右に揺らしながら可愛らしい鳴き声で説得に一役買ってでてくれる。
2匹の言っていることはわからなくても言いたいことは伝わっているようで、
「わたくしは、欲望などには決して負けないことをアリスさんに誓います」
ミネルヴァさんは<沈黙の誓い>を行わないことを受け入れてくれた。
本当は、誓いを立てていても従業員同士の仕事の教え合いは可能らしいんだけどね。そこにはあえて触れないで、この先❝もしものことがあった時に、痛みを感じることなく外部に秘密を話せる人❞の役を背負ってもらう。
ひどい役を押し付けることになっちゃうけど……。他に適任者がいないということで許して欲しいな!
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