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ある日のミネルヴァ家 2
しおりを挟むまるでお通夜のようなミネルヴァ家。
途惑う私たちに、
「アリスちゃんたちも一緒に食べよ! わたしのをハクちゃんとライムちゃんにあげる!」
小さい子からお声がかかるが、
「今日はアリスさんたちは一緒に食べないから、おまえは自分の分をきちんと全部食べろ。腹が減って寝れなくなるぞ」
私の返事の前に、大きい子がお断りの返事をしてしまう。
すると、嫌そうな顔でサラダをフォークでつついていた子が、
「アリスちゃん! 今日のおやつはなあに!?」
ハッとしたような表情で嬉しそうに私に問いかけるが、
「今日はおやつはなしだ。そうだろ? アリスさん?」
これにも、私よりも早く、ルシアンさんが返事をしてしまった。
……持って来てるんだけどね? 一口サイズのパンケーキ。手順は簡単だけど、焼くのがとっても忙しかった一品を。でも、ここは、
「うん、ごめんね? 今日はミネルヴァさんにお話があって来ただけだから、お土産は持って来ていないんだ」
やっぱり空気を読んで、話を合わせるべきだよね?
子供たちはとってもがっかりした表情で私を見て大きなため息を吐いた後、もそもそと食事を再開した。
反対にルシアンさんやミネルヴァさん、マッシモが微笑みを浮かべて私を見ているので、私の対応は間違ってはいないようだ。
とりあえずはこのままここにいるのも気まずいので、ミネルヴァさんに別室で待つと視線で伝えて食堂を出ることにした。
「大きい子たちが自主的に!?」
「ええ、そうなの。この件に関してはわたくしも気になっていたからすぐに取り入れたのだけど……」
さっき見たミネルヴァ家の残念な食卓は、大きい子たちのリクエストだと聞いて私は驚いた。大きい子たち自身も辛そうに食べていた食事を、どうしてわざわざリクエストしたのか。
それは、ご近所さんからいただいた❝お裾分け❞のおかずを、小さな子たちが一口食べて「おいしくない」「もういらない」と拒否したことから始まったらしい。
少し前まで件のご近所さんが差し入れてくれる❝お裾分け❞は子供たちにとってはごちそうで、とても楽しみにしているものだった。
でも最近のミネルヴァ家は食卓事情が改善されて、子供たちの舌が急激に肥えてしまったようだ。特に幼い子供たちが顕著だったらしい。
……私の差し入れるごはんやおやつが悪かったのかな。食材はミネルヴァさんの指示通り、普通(またはそれ以下)の品質のものを使っていたにも関わらず、調味料などはケチらずに使っていたからそのせいかもしれないな。
そしてその状況をミネルヴァさん以上に憂いたのが、大きい子供たちだった。もしかしたら自分たちは下級貴族よりもずっと良い物を食べているかもしれない! と考えた彼らは、今後ミネルヴァ家から独立した際のことを考えて、自分たちの舌を❝再教育❞することにしたようだ。
……うん。さっきは小さい子たちのおねだりに負けず、おやつを出さないで正解だったよね。
理由がわかって安心したので、後は私が今日ここに来た理由を伝えるだけ。
前々から考えていた計画、
「引っ越し、ですか!?」
「うん。ここから少し離れている上に、領主も別の方の土地なんだけどね? もしも良かったら、一緒に来て貰いたいな」
ミネルヴァ家の、ネフ村移住計画についての話をしようと思う♪
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