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信頼と心配が嬉しいから、寝る! つもりだったのに…… 3
しおりを挟む野営具用品店製作のテントは持ち帰ってもらうことになった。
注文製作品なのだから「ギルドのモノより品質が悪いからいらないわ~」なんて非常識なことを言うつもりはなかったんだけどね? 故意に手を抜いた商品だとわかったら、素直にお金を出すのには抵抗があったんだ。
だから値切って少しでも安く購入し、これでも良いから欲しいと言う冒険者がいたら同額で譲ろうと考えていたら、さっきから話を続けていたギルドマスターと店主さんが同時にこちらを向いて、
「ギルド製作のテントを用品店依頼分と同額で納品、用品店製作のテントはキャンセルでよろしいでしょうか?」
と言うので私の考え(買い取って同額で転売)を話すと、店主さんが顔色を変え、
「どうか、それだけはご容赦ください!」
慌てたように頭を下げた。
……気に入らない品だけど、材料やそこにかかった手間、自分が発注したものに対する責任を考えて買い取ろうとしているのに、なんだか私が意地悪をしているような言われ方だ。思わず眉間にしわを寄せると、
「全ては当方の責任だと承知しておりますが……、これから出回るギルド製作品とコレを比べられたら、店から客が離れてしまいます! どうか持ち帰らせてください!!」
再度頭を下げられる。……今までのどの謝罪の言葉よりもとても真摯に。
私は単に無駄金を使いたくなかっただけで他意はなかったので、そういうことなら、と了承しかけると、てちてちと小さな足音を立てながら店主さんの前まで移動したハクが、苛立たし気に❝ぱしんっ❞と尻尾を床に打ち付けた。
珍しいハクの行動に「どうしたの?」と声を掛けようとすると、ライムまで私の腕の中から飛び出してハクの隣に並び、ぼよんぼよんと大きく上下運動を始めた。
一見するとただ不機嫌そうな子猫(本当は虎)とスライム。でもネストレさんには、
「温厚な主さまの代わりにお怒りになっているのだ」
と見えたらしく、店主さんに彼らの行動を(とっても主観的に)説明し、店主さんは、
「なんと利口な従魔、いや、従魔さまなんだ! この度の事は本当に申し訳なく…、深く反省を……」
感心しながら謝るという器用な真似をしてくれた。
ハクとライムは言葉を尽くして反省を述べている店主さんが、
「持ち帰らせていただくテントは改良して販売しますが、アリスさまのレシピがきちんと登録されるまでは人目に触れさせないこと、このテントの宣伝を口にしないことをお約束します」
と約束すると、満足そうに、
「にゃ~~お!」
「ぷっきゅ~~う」
ひと鳴きしてから私のそばへ戻って来る。
「テイマー以外と意思の疎通ができる従魔など今まで出会ったことがありません! なんと賢く、そして主思いのけなげな従魔たちなんでしょう!」
「彼らは特別なのだよ。あの主にしてあの従魔あり、と言ったところだね。彼らにお叱りを受けて許されるなど、君は実に運がいい男だ。これからは精進するようにな」
2匹の態度を見て喜ぶおじさんたちは、なんだか無邪気な子供のように見えたことは……、やっぱり内緒にした方がいいよね?
野営具用品店のテントをバラしている隣で、ギルド納品の小さい方のテントをそのままインベントリに入れた時は少し感心したような視線を感じただけだった。でも、その後で組んでもらった大きいテントをそのままインベントリに放り込んだ時には、
「……は?」
「そのまま、ですか……」
「あの……、あなたはあれをそのまま入れられますか?」
「ああ。入るには入るが……、他の物を入れるのが厳しくなるな」
4人が揃って呆れたような、驚いたような、何とも言えない視線を私に向けた。
……容量が決まっているアイテムボックスを有効に使う為に、テントなどのかさばるものはそのたびにバラしてからしまうのが常識になっているようだ。えっと、お鍋を重ねて収納棚に入れる感覚と同じかな?
まあ、私のインベントリに容量は関係ないし、テントの組み立てにはそれなりに時間もかかるしね? 時間を無駄にしない為にもこのままでいいだろう。
少し疲れたように笑う4人を見送って、改めて出した大きいテントの中でハクとライムを遊ばせていると、
「アリスさま、ディアーナさまとラファエルさまがお見えでございますが……」
新たな来客がやってきた。
2匹の❝今日はゆっくりする日!❞と言いたげな視線を感じるけど……、私が出かける訳じゃないからセーフ!だよね?
ディアーナとラファエルさんだから、なんの問題もないよね!?
仕方がないなぁ、とため息で返してくれた2匹に満面の笑みを向け、いそいそとドアに向かった私の後ろでハクとライムがくすくすと笑い合っているので振り向いてみると、私を見守るような瞳で2匹が私を見ていた。
……あれ? 私が❝主❞で合ってるよね?
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