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信頼と心配が嬉しいから、寝る! つもりだったのに…… 2
しおりを挟む野営具用品の店主及び経営に携わっている幹部クラスの従業員は商業ギルド員資格の剥奪&2千万メレの罰金。
これが、ギルド長から「君はどう思う?」と聞かれた職員さんが挙げた処分案。
結構大きなペナルティで私はびっくりしたけど、ネストレさん(とハクとライム)は「妥当だな」と軽く頷いている。
<登録申請中のレシピ>に対する取扱いが元々繊細なものであることと、ギルドが試作品を製作しているレシピだと知っていながら申請者&ギルドに無断で店の商品として予約まで取ったことに対して、❝ギルドの顔に泥を塗ったことを後悔させてやる❞という商業ギルドからの強いメッセージが含まれているそうだ。いわゆる❝見せしめ❞を兼ねているらしい。
なので、罰金2千万メレは私ではなくギルドに入ることになる。
そして私のレシピを勝手に使って商売しようとしたことに対するペナルティは……。
私が望むなら、お店を取り潰してその財産を全て没収。その半分を(もう半分はギルドが)手にすることが可能らしい。私が望むなら、だけど。
もちろん、野営具用品店の店主はこの処分案に猛反発した。
当然だよね? ほんのちょっとの❝出来心❞で商売に関する全てを失おうとしてるんだから。でも、
「ギルドはそちらの女性に肩入れしすぎているのではないか!? 私も彼女と同等のCランクギルド員であり長く高額な会費を納めてきているのだから、もっと公平な目で見てもらいたい!」
なんて言ってしまったものだから、話がややこしく……、っていうか、彼に不利に転がってしまった。
だって、私は彼に、自分が商業ギルドのCランク商人だと言っていないから。
(アリスの身辺調査をして、同ランクの新米商人だと知って舐めてかかったのにゃ。ベテランの自分なら、新米のアリスに損害を飲み込ませる自信があったんだにゃ~)
「ほう。アリスさまのランクを調べていたのか。
それで、ギルドに長年貢献してきた君ならこんな舐めた真似をしでかしても大丈夫だと過信したのだな? だが、君は根本的なことを忘れてはいないかね? ギルド所属の一介の商人と多数の登録レシピ保有者では、どちらの方が重要視されるのだ?」
彼の発言で、彼の行動が下調べをした上での❝計画的❞なものだったとわかってしまったら、それを目の前で告白された<ギルド長>のネストレさんが黙って目を瞑れるわけがない。
即・店取り潰しの決定が下ろうとしたその時、
(ちょ~っと待つのにゃ! ……アリス! 早く通訳するのにゃ!)
野営具用品店に救いの手を差し伸べたのは、私の頼れる保護者、ハクだった。
「えっと……、店を潰したら、予約を入れて納品を楽しみにしている高ランク冒険者が気の毒?だから、店はこのまま営業を続けさせて、テントの販売で得る純利益の8割!? …え、全部でも!? いやいや……。8割を私への賠償として支払いを続けさせた方がお得……、いえ、双方の利益につながるのでは?」
ただいま、ハクの言うことをただ伝えるだけの簡単なお仕事の最中です。でも、
「あ~、ギルド員の資格を剥奪された店主の店が生き残れるとは思えないので、出来たら降格くらいがありがたい……。ギルドへの罰金を払ってすぐに計画閉店されると困るから、経営にギルドから監査員を派遣?(それは無理じゃないかな?) その上で、店が潰れてしまった時の為にギルドの口座へ店の余剰金や私財をプールさせておく? レシピの特許期間内に店が潰れたらそのお金を私に……!?(いや、それはちょっとどうなんだろう)」
心の中は、ハクの要望をそのまま伝えることへの葛藤でいっぱいです。
相手の弱みに付け込むワルイヒトになった気がするよね? いや、最初に悪かったのは向こうだってわかってはいるんだけど。
ハクの要望を聞いたネストレさんはなんだか面白そうに私を見ているし、店主さんは眉間にしわを寄せて私を見ている。この居心地の悪い雰囲気をどうしようかと考えている間に、
「わかりました。当方はその条件を吞ませていただきます……」
「では、資格剥奪の代わりにランクの降格で手を打ちましょう。ただし、罰金は値上げしますよ? ギルドにも面子がありますので」
さっさと話はまとまってしまい、
(やったのにゃ♪)
(ハク、えらい!)
満足そうに笑う従魔たちがいた。
……私はどんな反応をしたらいいんだろうね?
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