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お仕事 7
しおりを挟む飼い主と離れてしまって元気をなくしていないかと心配だったイザックの愛馬は、冒険者ギルドの厩舎の奥で、もっしゃもっしゃと元気に干し草を食んでいた。
ちょうど朝ごはんの時間のようで、他のお馬さんたちも食事中だったので私たちは中には入らずに入り口から様子を窺うだけ。代わりにハクが様子を見に行ってくれる。
軽やかな足取りでハクが厩舎内を進んで行くとお馬さんたちは食事を止めてハクに軽く頭を下げ、ハクが通りすぎるとまた何事もなかったかのように食事に戻る。という何だかおかしな光景が見えた気がしたけど、きっと気のせいだよね? 腕の中のライムが当たり前のような顔で何も動じていなかったので、私も気にしないことにした。
ハクに気がついたイザックのお馬さんは食事を止めると嬉しそうにハクの鼻先に鼻を寄せてクンクンと匂いを嗅いでいる。あれってお馬さん同士のご挨拶だと思っていたんだけど‥‥‥、猫(虎)相手にもするんだね? 小さなハクが大きなお馬さんの挨拶を受けている姿は見ていて可愛い。
楽しそうに2匹がすりすりしている姿を見て、ハクがイザックのお馬さんと仲良しになっていたことに気がつく。もしかすると私の知らない間にも様子を見に来てくれたいたのかもしれないな。という推測は、
「お? 今日はアリスたちも一緒に来たのか。 ハクは‥‥‥、ああ今日も仲がいいなぁ」
馬たちの様子を見に来たセラフィーノに断定された。
私の気がつかない所で色々と細やかなフォローをしてくれているハクだけど、いつそんな時間を取っているんだろう? ほとんどいつも私と一緒にいると思うんだけど。
そんな疑問にはライムが自慢気に答えてくれる。
どうやら、私が眠っている時間がハクの単独行動の時間らしい。眠っている私の安全が確保できる時だけらしいけどね。
もっと❝僕はこんな仕事もしているんだよ!❞ってアピールしてくれたらいっぱい褒めてあげられるのにね。戻って来て、
(セラフィーノのお世話が気持ちいいから、何の不満もないって言っているのにゃ♪)
自分がこっそりしている仕事のことはおくびにも出さずにセラフィーノに花を持たせるハクの奥ゆかしい一面を愛しく感じながら、今日のおやつは特別に2種類の希望を聞いてあげようと心に決めた。
「この肥料を優しく畑に撒いてね! それから余った肥料はこっちの土と一緒に耕して新しい畑を作るよ~」
「わかったぁ!」
「力仕事なら得意だよっ♪」
‥‥‥ミネルヴァ家に着いたのはお昼前だったんだけど、全ての子供たちは1人1つの<組紐ノルマ>をすでに終えていた。組紐作りが苦手な子は1つだけで終了だけど、得意な子は積極的に二つ目の作製に入っていたり、組紐作りを気に入ったミネルヴァさんとべニアミーナちゃんは色の配色を変えて、すでに3つ目の製作途中だった。
組紐作製中の子供たちの熱心さに感心しながらも、少しだけ離れた所で所在なさげに<組紐作製組>を見ていた子供たちに近づいてみる。
‥‥‥私と目が合うと気まずそうに視線を逸らせる子供たちを見て、マッシモが苦笑をしながら私に視線で(こいつらを叱らないでやってくれ)と訴えかけていた。もちろん叱ったりするわけがないよ。こういう作業が不向きな子がいるのは当然のことなんだから。
<組紐苦手組>が作ってくれたノルマの組紐は売り物にするには程遠い出来上がりだけど、それでもちゃんと最後まで仕上がっている。記念にはなるよね?
せっかく作ってくれたものを廃棄するのは勿体ないので、みんなが作ってくれた最初の一本は作った本人に使ってもらうことにすると、上手にできた<組紐作製組>はもちろん、あまり上手にはできていない<組紐苦手組>も声を上げて喜んでくれたので、私はほっとする。 これからこの家が関わる仕事だからね。❝苦手❞なのは仕方がないけど❝嫌い❞にはなって欲しくなかったから。
上手に出来ている上に、自分から2本目3本目を組み始めてくれていたみんなにお礼を言いながら出来上がりを褒め称え、苦手ながらもきちんと最後まで組み上げてくれたみんなにもお礼を言いながら頑張ってくれたことを褒め称える。
そしてみんなが笑顔になった所で、ミネルヴァさんと組紐が苦手な子たちを庭に連れ出してこれからの仕事について説明を始めた。
彼らのお仕事は<野菜の栽培>だ。
もともと自家用に庭で畑を作っていた為か、幸いなことにこの作業を苦手だと言う子はいなかったので安心する。
「これから作るのはみんなが食べる為の物じゃないんだ。この畑で作る野菜を売って、自分たちの食べる食料を買う為の費用にするの。 頑張ってね!」
と伝えると不思議そうな顔で一斉に私を見る子供たちには、きちんと一から説明をする必要がある。
でも、まずは‥‥‥。元気なうちに力仕事をしてもらおう!
と言うことで始まった畑作りだけど。
ねえ? そこで心配そうに覗いている衛兵さんたち! 良かったら手伝ってもらっていいんですよ~! お礼は子供たちと一緒に作るお野菜になるけど、いかが?
まずは子供たちの力仕事の補助をスカウトするところからスタートです♪
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