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孤児院改め、フランカの実家 1
しおりを挟む「………また来てる」
「どなた?」
「……なんでもないよ!」
ヴァレンテくんの案内で着いたのは、大きなお家。
もちろん大きいと言っても❝豪華❞な訳ではなく、畑になっている広い庭と部屋数は多そうだけどシンプルな外装の❝普通❞の大きなお家だった。所々にひびが入っているのを修復した後などが見えるけど汚れてはいない、大切に住んでいるのが感じられる温かい雰囲気のお家。
その前に停まっている馬車に乗り込もうとしている中年男性と、少し困ったような笑顔を浮かべて見送っている老年の女性を見て、悲しそうな顔になったヴァレンテくん。……気にはなるけど、ヴァレンテくんからは事情を教えてもらえそうにないので、とりあえずは院長さんらしき老婦人にご挨拶、かな。
「ばあちゃん! ただいま!!」
「おかえりなさい、ヴァレンテ! あら、お客さま?」
馬車が動き出すのを待ってからヴァレンテくんが老婦人に向かって駆け出した。老婦人への呼びかけを聞いて、なんだか目が覚める思いがする。
勝手なイメージで❝孤児院=施設❞❝施設の責任者=院長先生❞だと思い込んでいたんだけど、ここは大きな❝お家❞なんだ。おばあちゃんと呼ばれる老婦人を中心に、大勢の子供たちがいる一つのお家。
フランカはここで育ったから、あんなに素敵な女性になった。たった一言の呼びかけなのに、それがすとんと胸に落ちた気がして、なんだか嬉しい。だから、
「こんにちは! フランカの友人でアリスと申します。フランカの代わりに、彼女の❝想い❞を届けに参りました」
初めはどんな顔で院長さんにお会いすればいいんだろうと少し迷いがあったんだけど、自然と笑顔を浮かべることができた。
「フランカの…?」
「アリスさんはねえちゃんの友達だったの!?」
突然現れてフランカの名前を出した私に老婦人は驚いたようだけど、ヴァレンテくんが私に親し気な態度だったことと、「さっき助けてもらった」と先ほどの事情を簡単に説明してくれたことで安心してくれたらしい。穏やかな笑顔で私を招き入れてくれた。
「おねえちゃんはフランカちゃんのお友達なの?」
「フランカ姉さんの話を聞かせて!?」
ミネルヴァさんの案内で応接室に入る頃には子供たちの間で私はフランカの友達だと認識されていて、みんなが嬉しそうに話しかけてくれる。
とっても嬉しいんだけど、これから話すことは子供たちに聞かせたい話ではないので少しだけ困っていると、
「みゃお~ん♪」
「ぷっきゃあ~♪」
「かわいい猫ちゃんだぁ! ちっちゃ~い!」
「なんか変わったスライムがいるぞ! ……襲ってこないんだな? ……かわいい」
私の頼りになる従魔たちが、体を張って子供たちの意識を逸らせてくれた。
「私の大切な家族のハクとライムだよ! あと、お庭にいるお馬さんも私の家族でスレイっていうの。一緒に遊んでくれる?」
「足が8本もある!? ス、ス、…スレイプニルだーっ!!」
庭で待ってくれているスレイを紹介すると、様子を見に行っていた子が大興奮で大声を上げ、子供たちはハクとライムを抱えて庭に殺到する。
(子供たちは僕たちがちゃんと見ているのにゃ!)
(まかせて~♪)
大きな子から小さな子まで一斉に出て行ったので、興奮して怪我などしないかちょっとだけ心配だったんだけど、ハクとライムが子供たちのお世話を請け負ってくれたので安心した。
子供たちの憧れのスレイプニルも子供好きで面倒見がいいしね。うちの従魔はみんな優しい上に優秀だから、安心して子守を任せることにした。
ちっちゃなハクとライムが子供たちに潰されないか、大きな体のスレイに子供たちが潰されないかと心配しているミネルヴァさんにもきちんと従魔たちの性質をお話して安心してもらえたし、ハク達が頑張ってくれている間に、フランカのことをお話しさせてもらおう。
「フランカ……。あの優しい頑張り屋さんは最後まで……」
フランカの手紙と遺品を渡した後、私の話を黙って聞いてくれた院長さんは、聞かされていた話とは違うフランカの最期を嘆いてとても辛そうに涙を流したが、フランカの手紙を繰り返し何度も何度も読み返して彼女の思いを受け止めた。
ゆっくりと顔を上げると私にお礼を言ってくれたので、心の整理がついたと判断してテーブルの上に革袋をいくつか乗せる。
革袋を開いて中のお金を確認してもらうと、フランカの手紙に書かれていた額よりも多いことに驚かれたけど、きちんと説明をして間違いなくフランカの遺産であると証明すると納得してくれた。
……手紙に書かれていたらしい、私の❝取り分半額❞を受け取らないこと対しては (受け取った残りだと言ったが、簡単に嘘だと見抜かれた。フランカが細かい金額まで書いていたようだ)少しだけ強引な説得になったけど、❝私のフランカへの気持ち❞として受けとってもらえたので一安心。
そして最後に大きな革袋を取り出して、このお金が何のお金かを話しながら弔慰金を出してくれた人のリストを手渡すと、……ミネルヴァさんの涙腺は決壊した。 リストを握りしめ、しゃくり上げながらフランカの名を呼び、
「あなたのことを思ってくれた人がたくさんいる。 あなたの最期を❝誇り高い❞と思ってくれる人がたくさんいる。あなたは女神の元へ旅立ってしまったけど、あなたの存在は多くの人の心にきちんと残っている……!」
フランカへのみんなの思いを受け取ってくれた。
フランカ。あなたが家族を思って捧げた命は、形を変えたけど、きちんと家族の元へ届いたよ………。
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