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街歩き6日目 3

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「猫ちゃんとスライムちゃんは可愛いね~! うちの焼き栗も食べておくれ? 1個ずつサービスするよ!」
「んにゃん♪(焼けている分全部お買い上げにゃ♪)」

「一緒にいるスライムにはボヴォレッティゆでたカタツムリがお勧めだよ! 一皿どうだい?」
「…………(せんどがわるいからいらな~い)」
「ハハッ! スライムちゃんはあんたの所はお気に召さないってさ! うちのソプレッサはどうかな?」
「ぷきゃ~♪(アリス、これかって♪)」

「猫には肉だろ? うちの肉串も買ってけよ。 5本買ってくれたら1本サービスするぞ」
「…………(焼きすぎたものばかりを押し付ける気なのにゃ。いらないにゃ!!)」

「猫ちゃんは栗が好きなのか? 俺の焼いた栗も美味いんだぜ! 食べてみてくれ」
「んにゃ~ん♪(これもお買い上げなのにゃ~♪)」

 屋台の店主さんたちからひっきりなしに客引きの声がかかる。……ハクとライムを狙い撃ちで。

 始めは私やディアーナに声がかかっていたんだけどね? その度にハクとライムが味見をしては購買の決定をしているのを見た店主さんたちは、さっさとターゲットを切り替えたんだ。皆さんさすがだよね^^

 白く艶やかな体毛を真っ黒に焼いた焼き栗で汚したハクの姿は(クリーンを掛けようとしたら拒否された)、それだけで❝焼き栗食べたよ。大満足!❞と宣伝して歩いているようなもので、次から次へと焼き栗の屋台からお声がかかりすでに4軒の屋台から購入しているので結構な量になっている。この店で5軒目の購入なんだけど、ハク曰く、「栗の質と焼き加減で味わいが違う」らしいので、宿に戻ってから食べ比べするがとても楽しみなんだ♪

 でも、気に入った所からは大量買い。そうでない所は見ただけでぷいっと顔を背けてしまううちの仔たちに、選ばれなくて不服に思う店主さんも当然でてくる。誰しも好みがあるのだから、見向きしない屋台が出ても仕方がないと思うんだけどね? 

 人族でもない従魔たちに自分がコケにされたと感じたようで、

「ふんっ。獣と魔物に俺の店の味はわからんよな。所詮は猫とスライムだ!」

 なんて悪態をつくのが聞こえてくる。 

 相手にすると余計に感情がこじれるだろうと思い、ハクとライムが興味を持てないほどの粗悪品を出してる方が悪いんじゃないの?と内心で毒づきながらにこやかに2匹が選んだお店で買い物をしていると、

「おっ!? そこにいるのは凄くグルメなスライムと猫と主さん達じゃないか?」

 2匹を擁護するような声が聞こえてきてびっくりしてしまう。

 振り返るとどこかで見た男性……。

「あら、あなたの言っていた質の良い物ばかりを上手に選んで買い物をする凄いスライムって、このスライムちゃんなの? じゃあ、あなたがその主さんね? 主人の野菜を全て買ってくれてありがとう! お陰で今日は家族の時間をゆっくりと楽しめるわ!」

「わぁ! 可愛い猫ちゃんとスライムちゃんだぁ! えっと、とってもグルメなのよね? もうこの辺でお買い物した? あたしにも美味しいお店を教えて欲しいな♪」

 以前お買い物をした野菜の屋台のご主人とそのご家族らしく、ライムとハクを手放しで褒めてくれる。

「んにゃ~ん♪」
「ぷきゃ~~♪」

 自分たちに向けられた悪意を真っ向からぶったぎる一家の言葉は私たちの機嫌を一気に底上げし、ハクとライムは自分たちのお気に入りのお店に奥さんと娘さんを案内しては屋台の人に驚きつつも凄く喜ばれ、悪態をついた屋台のおじさんは怒りの為か羞恥の為か、顔を真っ赤にして震えている。が、

「ああ、そういうことか。 やっぱりお嬢さんの従魔たちはグルメだな! 地元でも評判のいい屋台ばかりを選んでるぞ」

 ディアーナから事情を聞いたご主人が感心するような声を上げると、

「なんだとっ!? 俺の焼いた肉が不味いって言いたいのかっ?」

 とうとう怒鳴り出してしまった。 うん、まあ、そういうことだよね。 

 おじさんが私たちだけに悪態をついているならスルーしておいたんだけど、うちの仔たちを褒めてくれたご主人一家を睨みつけるのはいただけない。だから、

「おじさんの肉串の味は知らないけど、お客を大事にしようとしない人だってことはわかるよ? うちの仔に焼きすぎたものばかりを買わせようとしてたじゃない?」

 さっきハクが言っていたことをそのまま口にした。 

 うちのハクが可愛い子猫だからって侮ったんでしょ? 自分の肉串が選ばれないのは自分の努力が足りないせいじゃなくて、ハク達に味がわからないせいだって責任転嫁しようとしてたんだよね?

 揉め事は面倒だったから放っておいたのにね? でも、売られた喧嘩は買っちゃうよ?

 それまで賑やかだった屋台通りに、なぜか私の声はきっちりと通ってしまったようで、

「え~、あそこってそんな店なの? 他所で買いましょ!」
「なんだ、やっぱりそうだったのか。 うちの子に渡した肉が小さかったのもわざとだったんだな」

 周りのお客さんまでもがその屋台を避けだした。

 また、それまでハクとライムに声を掛けてスルーされてしまった屋台の店主たちは自分たちのお店が❝不味い❞と宣伝した形になってしまい……。

 結果。 うちの仔たちが気に入った屋台には次々とお客さんが並び、選ばなかったお店からはお客さんが離れると言った現象が起きてしまった。

 普通にお買い物を楽しみたかっただけなのに、こんな所で恨みを買うなんて遠慮したいね! 

 私とディアーナは顔を見合わせると野菜の屋台のご主人一家への挨拶もそこそこに、2匹を抱えて屋台通りを駆けだした。

 時間を置けばお客さんたちも入れ替わるハズだから、このまま忘れてくれるといいな!

 言い返しちゃった私が話を大きくしてしまったみたいだけど、そこは自業自得ってことで諦めてくれるといいな!

 次からはやっぱり私が主体で買い物をしよう。ハクとライムにおいしい物を選んでもらうことは続けるけどね。

 あまり目立ち過ぎないように気を付けようと反省しながらも、走る私たちの腕の中でも嬉しそうに焼き栗を食べ続けている2匹の姿に、どうしても力が抜けてしまう私たちだった。
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