女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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断罪 9

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文中に品のない表現が出てきます。不快に思われたらすみません。


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 裁判官補佐官さんは落とした何かを急いで拾おうとしたのに、その❝何か❞は補佐官さんの手をすり抜けるようにして、ころころと転がり出した。

「うわぁ! 皆さん、触らないでくださいね!! 
 くっ、こんなの弁償できやしない! 頼む、止まってくれーっ!」

 補佐官さんが慌てて追いかけるが、補佐官の手をすり抜けた❝何か❞はころころとビーチェの方へ転がっていき、後ろを向いていたビーチェの踵に当たってやっと止まる。

「と、止まった……。 ビーチェ、動かないで! それを踏まないでくださいよ? 危険ですからね?」

 ほっとした表情の中にまだ焦りの色を残した補佐官さんが慌ててビーチェに声を掛けるが、顔に残った傷跡のせいで興奮していたビーチェは、

「なんのつもりよ! 不愉快ね!」

 振り向きざまに補佐官さんを睨みつけ、自分の足に当たった物が何かを確認することなく補佐官さんに向かって蹴り飛ばした。

「あああああああっ!! な、なんてことをっ!?」

 自分に向かって勢いよく転がって来たを補佐官さんが床に伏すようにして体で受け止め、その様を見ていたビーチェが補佐官さんをバカにするように鼻で嗤った次の瞬間のことだった。

「キャアアアアアッッ! 何? 何なの!? いやあ! やめて!!」

 ビーチェの手のひらから小さな水晶が何個も出現し、床に落ちてそのまま砕け散ってしまったのだ。

「これは珍しい。<女神の断罪>か…」

 裁判官の呟きに不穏なものを感じて慌てて手を握り締めたビーチェだけど……。今度は握り締めている小指の付け根の辺りから水晶が出現し、そのまま床に落ちて砕け散る。

 突然の出来事に驚き言葉を失っていた私たちだけど、ビーチェから水晶が出現しなくなり、憔悴したように座り込んだビーチェを見てやっと言葉を取り戻した。

「<女神の断罪>と言ったか? なんのことだ?」

 サブマスも初めて聞いた単語のようで裁判官に説明を求める。 裁判官はほんの少しだけ迷いを見せたけど、「他言無用です」と念を押した後、説明を始めてくれた。

<女神の断罪>とは、普段は厳重に管理されていて裁判官や補佐官、または犯罪者しか触れることのない<審判の水晶>や<断罪の水晶>だけど、ごくまれに、何かの偶然で他者が触れることがあるらしい。

<審判>も<断罪>も他者が触れても普通は何も起こらない。 よしんば<断罪の水晶>に触れた人間が遊び感覚で❝断罪ごっこ❞に興じてしまっても、<断罪>が起こることはない。 これが<水晶>の使用は裁判官&裁判官補佐官に限られている理由の一つだ。

 でも稀に。<水晶>に触れた者の【スキル】と【ステータス】が水晶となって体内から出てしまうことがある。

 通常であれば、<審判の水晶>と<断罪の水晶>の使用で出現する【スキル】と【ステータス】の水晶は簡単に割れるようなことはない。滅多にないことだけど、裁判官が認めさえすればスキルとステータスの水晶を元の持ち主のスキルやステータスとして戻すことも可能らしい。

 でも、何かの偶然で<水晶>に触れ、その結果【スキル】や【ステータス】が水晶化してしまった時は、その水晶はほんの少しの衝撃にも耐えられない、他者が触れるだけでも簡単に砕け散るほど脆いものになるので2度と元の持ち主の手には戻らないし、残念なことに流通させることも不可能なようだ。

 この稀なケースの発生条件と推測されているのは大きく2つ。 

 1つは悪意を持って水晶に触れた場合。そしてもう1つは触れた者が悪事に加担していた場合。……ビーチェはこの2つ共に当てはまっている。

「加担していた悪事が軽微なものであれば、奪われるスキルやステータスもそれに比例していたはずなのに。 どうやらビーチェには色々と余罪があるらしい。 これが<女神の断罪>と言われる所以ですよ。気は晴れましたか?」

 裁判官の手に係らずに偶然起こった断罪だから<女神の断罪>。偶然が重なった結果のことだけど私には何の不満もない。

 淡々と問いかける裁判官に、私はにっこりと笑顔で頷いた。











「フランカの件については、おまえはすでに<女神の断罪>で裁きを受けているからギルドからは罪には問わねぇでやるがな。ビーチェ、お前はクビだ」

 裁判官の説明を聞いて呆然としていたビーチェだったが、ギルマスの解雇通告を聞いて正気に戻ったようだ。

「あたしをクビになんかしたら、あたしが担当をしている冒険者たちが暴動を起こすわよ!」

「それは誰のことだ? 今おまえを専属担当にしている冒険者は1人もいないぞ。そいつらは当然、冒険者資格をはく奪されるからな」

 ビーチェの反論に肩を竦めたギルマスに代わって、サブマスが前に進み出た。

「何を言ってるのよ! あたしには多くの」
「おまえが担当しているのはこいつらだけだ。今まで気がつかなかったのか? おめでたいヤツだな」

 サブマスは呆れたようにため息を吐きながらビーチェに言った。

「おまえの態度の悪さにほとんどの冒険者が見切りをつけたんだ。 始まりはバルトロメーオのいるパーティーだったな。メンバーの緊急時に邪魔をする担当はいらない、とのことだったぞ。次はおまえのデマを真に受けたせいでアリスに絡んだアイツだよ。もう少しでこの支部の冒険者たちの大半を敵に回すところだったんだから当然だな。止めとなったのは、おまえが唆してスフェーンへ行かせようとしたパーティーだ。
 おまえは桃を貰ったディアーナがそんなに羨ましかったのか? まだCランクのパーティーを自分の欲でスフェーンの中心地に向かわせようとするなんて、ギルド職員失格だ」

「彼らはCランクでも上位だったのよ! この女はEランクで桃を採ってきたんだから、そのくらいできるわよ!」

 サブマスが挙げる理由に納得できなかったらしいビーチェは果敢に反論するが、ここにいる人たちから冷たい視線を集めただけだった。

「あの森の中心地はAランクがパーティーで挑む場所だ。Cランク程度にアラクネーがどうこうできる訳がないだろう」
「冒険者ギルドの受付なら、本当はそれくらいわかっているだろう?」
「アリスの実力がランクに見合っていないことくらい、あのギルドにいる職員と冒険者たちはみんな理解しているぞ」

 上位ランク冒険者こぐまが諭すように言うとみんなが口々に同意する。それを聞いていたサブマスがニヤリと笑い、

「アイツらはきちんと自分たちの実力を把握していたぞ。スフェーンでの採取依頼を受けたが、ビーチェについでだから中心部にっている桃を採取してくるように言われた。自分たちは中心部に行くだけの実力はないと思うんだが、ビーチェは大丈夫だから絶対に桃を採って来いと言う。本当に大丈夫だろうか?って、おまえの担当している他の冒険者たちに聞いて回ったんだ。 
 結果は……、わかるだろう? 冒険者を死地に向かわせようとするやつに担当を任せるのは怖すぎる。いくらお断りだってさ」

「……なっ!!」

 サブマスの言葉を聞いたビーチェの顔色は、真っ赤になったり真っ白になったりと忙しい。ああ、でも、そういうこと、ね?

 どうしてビーチェがギルド内であそこまで横柄に振舞えるのかと疑問に思っていたんだけど、ビーチェと冒険者たちが後押ししていたからなんだ? でも、今回その人たちが離れたお陰でビーチェを処分しやすくなった、と。 

 ビーチェがしたことを考えたら解雇処分は当然だと思うんだけど、当のビーチェは納得しなかった。 ふん、と鼻を鳴らし、高らかに言い放つ。

「あたしをクビになんかしてタダですむと思ってるの!? あたしはこの国で五指に入る冒険者ギルドのギルドマスターの孫娘で、王都の次期ギルドマスターの婚約者よっ!!」
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