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街歩き3日目 5
しおりを挟むテーブルの上にはフォークとナイフ。それと、お店の定番だそうなトマトソースのピッツァがそれぞれの前に1枚ずつ。
薄い生地にチーズとトマトと香草が乗っているだけのシンプルなピッツァはとてもおいしくて、あっという間にお腹の中に納まってしまう。
私の代わりにハクとライムの分を切り分けてくれていたリベラトーレさんは、感心したような驚いたような複雑な顔をしていたけど、
「……アリスの従魔たちはちっこいのに良く食うなぁ。おかわりいるか?」
まだまだ食べられる!といった様子のハクとライムを見て、おかわりを提案してくれた。もちろん、うちの仔たちに遠慮の文字はなく、
「にゃん!」
「ぷきゅっ!」
元気いっぱいのお返事をして私の頬を赤く染めさせた。 ……私が何も食べさせていないみたいだから、もう少しだけ控えてくれると嬉しいかなぁ? まあ、このお店のピッツァがおいしいから仕方がないんだけどね。
おかわりで焼いてくれたのは、同じくトマトソースの上にチーズとごろごろとした野菜がたっぷりと乗せられたもので、これもとてもおいしかった。
ただ、2枚続いて野菜ばかりの物だったので、お肉大好き!なハクには少しだけ物足りなかったみたいだけどね。
でも私は大満足だったので、素直にとてもおいしかったとお礼を伝えたんだけど……。
「どうやらお口には合わなかったみたいね? 猫ちゃん、スライムちゃん、ごめんなさいね~」
接客のプロのお母さまには、従魔たちの不服を見抜かれてしまっていた。
「うにゃ~~ん?(おいしかったにゃよ?)」
「ぷきゅん!(ぼくも!)」
2匹がそんなことはない!と伝えても、お母さまと、石窯の前から離れてこちらへ来てくれたお父さまの顔は晴れない。私とディアーナがどんなに「おいしかった!」と伝えても、残念そうにハクとライムを見つめている。
仕方がないので、
「ハクとライムのお店のピッツァをおいしかったと言っています! ただ、主の私が作った物ではないのでちょっとだけ満足度が足りていないだけで。これは<従魔>としての特性なので、如何ともし難く……」
という、訳の分からない言い訳をしてしまった。
でも、それが、
「だったら、アリスちゃんが作ってあげたらどうかしら?」
という話になるとは思ってもみなかったんだ。
「料理人の聖域である厨房に初見の私が立ち入ることはできない!」とお断りをしたら、「イザックのお友達だから特別」と笑っていなされ、「石窯を使ったことがないから無理」と言ってみても、「だったら焼くのだけは俺がしてやる」とあっさり解決案を出されてしまう。
どうしたものかと困っている間に店主夫妻が揃って私の腕をとり、「「まあまあまあまあ……」」と宥めるように言いながら厨房の前に引っ張り込まれてしまった。
「ここにあるものは何でも使っていいぞ!」
と力強く言われて戸惑っていると、リベラトーレさんがお腹を抱えて笑いながら、
「親父とおふくろはちっちゃくて可愛いものに目がなくてなぁ。2匹の満足した顔が見たいんだよ。見せてやってくれないか?
おまえたちも、ご主人さまの作るピッツァが食いたいよな?」
「にゃん!」
「ぷきゅっ!」
さっさと2匹を味方につける。ついでとばかりに、
「俺たちの分も作ってくれると嬉しいぞ。親父とおふくろもたまには他人の作るものが食いたいだろう?」
と言って、ハードルを上げてしまった。
本職さんの前で素人が作ったのもの披露するのは結構厳しいんだよ? いくら最後の仕上げはその本職さん本人がしてくれると言ってもね!
でも……、自分は好きなように具材を乗せるだけで後は本職さんがきっちりと焼き上げてくれる機会なんて、そうそうないに決まってる。この機会を逃したら後悔しそうな気がしたので、ここは素直に甘えさせてもらおうかな♪
「あまり期待はしないでね? あと、何種類か試してみたいから、2~3人で1枚にしてもいい?」
もしも口に合わなかったときのことを考えて保険を掛けると、
「あら、何種類も違うものが食べられるのね。楽しみだわ~♪」
余計にハードルが上がってしまったのは誤算だったけどね。
おいしくないものを、1枚丸ごと食べるという拷問を避けたかっただけなのになぁ……。
トマトソースにた~っぷりの生ハム(奮発してオークだよ)とチーズと玉ねぎ、バジルを乗せたピッツァは、従魔たちの顔をほころばせ、
「そうか。猫には野菜よりも肉だよなぁ! これは俺がうかつだったな」
「スライムちゃんも嬉しそうよ~♪」
店主夫妻を喜ばせた。
次に、煮詰めたクリームシチューをソースにして、たっぷりのきのことジャガイモと生ハム(こっちはボア)とチーズを乗せたものは、
「このソースは初めてだな。……面白い」
「確かに美味しいわぁ。2匹もとっても素敵な食べっぷりで可愛い!」
店主夫妻の興味を引いた。
特別に作ってもらった少し厚めの生地にマヨネーズソース、大きく切った煮オークと半熟卵とチーズのシンプルなものは、
「これも悪くない……。と言うより美味いぞ! 半熟卵なんて危ないと思っていたが、アリスちゃんの【クリーン】を使うと安全にこんなに美味しく食えるんだなぁ。もう1枚食いたい!」
「この甘辛いお肉はなんなの!? とっても美味しいわ!! 猫ちゃんもスライムちゃんもおかわりするの? 私も食べたい!」
と、店主夫妻にも従魔たちにも大好評だった。もちろん、ディアーナとリベラトーレさんにも。
そして最後に焼いて貰った、カスタードクリームとカットした果物をたっぷりと乗せたドルチェピッツァは……、
(おいしいのにゃ♪)
(おいしいね♪)
「「「「……………」」」」
従魔以外の人たちを沈黙させてしまった。
く、口に合わなかったら無理して食べなくても良いからね!?
ライムが食べてくれるから遠慮なくお残ししてください!!
そんな、黙ったままでこっちを見ないで! 怖いってばっ!!
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