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〆はラーメン! ・・・・・・いつかはね! 2
しおりを挟む鍋をかき混ぜる合間に細切れで取った睡眠は十分とはいえなくて朝日が目に刺さって辛いけど、一晩頑張った甲斐があり、お出汁はどれも良い具合に出来上がった。
でも、さすがに今からこの出汁を使った料理を作る元気はない。 ………ないんだけどなぁ。
従魔たちの期待に満ちた視線をスルー出来なかった私は、ハーピー出汁を塩で整えてキャベツと卵のスープを作り、オーク出汁を醤油で整えたもので野菜とオーク肉を煮込んだ。
「我がオークの❝げんこつ❞とやらを砕いた成果がこの味に……」
「わたくしがハーピーの骨を砕いた成果この味に!」
「ぼくが❝のこりかす❞をたべたんだよ~」
「僕が鍋をかき混ぜる為にアリスを起こしたのにゃ!」
「うん! みんながお手伝いしてくれた出汁を使ったから、おいしいスープとおかずができたんだよ。ありがとうね!」
❝自分たちがお手伝いした❞出汁を使った料理を食べて満足そうな従魔たちに改めてお礼を言うと、
「また、お手伝いしてあげるのにゃ! だから、おかわりにゃ!」
ハクが元気よくおかわりを要求し、
「ぼくも!」
「我も!」
「わたくしもですわ!」
弟妹たちも元気に続いた。
ハクとライムはいつものことだけど、スレイとニールが私の作ったごはんをこんなに食べるのは珍しい。「果物と生野菜もあるよ?」と2頭の好物を出してあげても、「「今日はこちらの方をいただきたいのです」」と、鼻で空のお皿を前に押し出す。
調理したごはんで大丈夫なのか?という心配は、ハクの、
「スレイとニールは魔物だから心配いらないにゃ!」
苦笑交じりの一言で解消した。 今までの好みは魔物の生肉<果物や野菜だったけど、今は私の作ったごはんの方が嬉しいらしい。 私の作ったものをハクとライムと一緒に食べることが、料理の味を2段も3段も引き上げているようだ。
スレイとニールの健康に害がないなら私としては何の問題もなく、今日からスレイとニールのごはんも私たちと同じメニューになった。
一度に消費する量が格段に増える分作る量も格段に増えるんだけど、私たちには【複製】と言う素晴らしいスキルがあるから大丈夫!。
いっぱい食べて、おおきくなぁれ♪
体の内側に触れている、ゆらゆらと揺れる温かい何か。枕のように頭を支えてくれている、ぷにぷにとした滑らかな何か。首元を覆うような、ふわふわの温かい何かに包まれて私はとても幸せな気分で微睡んでいた。
「おい、どうしたんだ!? 大丈夫か? 生きているか!? おい、お嬢ちゃん!」
なぜだか慌てたように近づいてくる気配を感じるまでは。
「うん?」
本当はまだこの幸せな気分を味わっていたかったんだけど、この状況で❝お嬢ちゃん❞というのは多分私のこと。 何があったのかと不審に思いながらゆっくり目を開けると、門番さんが心配そうな目で私を見上げていた。
「……どうしたの?」
「どうしたのって、お嬢ちゃん………」
何があったのかを問うたのに、なぜか気が抜けたような顔で黙ってしまった門番さんを見ていると、頬に温かいものを感じた。
(おはようにゃ!)
「うん、おはよう……」
ハクからのおはようのキスを受け取りながら状況を整理してみると、
「……もしかして、寝てた?」
スフェーンの森を出発してからの記憶がほとんどなくて、気が付いたらラリマーの街にいる。
どうやら私は、ニールの背中で寝落ちしていたようだ。 そこで心優しい従魔たちはそのまま動くベッドになり、私が落ちないようにベッドガードになり、安眠を守る為の枕になり、風邪を引かないようにマフラーになっていてくれた、と。
なにそれ、みんな優しくて可愛すぎ!! このお礼は……、今は思いつかないけど、ちゃんと考えるから待っててね!
従魔たちの頭をなでなでしながらお礼を言っていると、
「お嬢ちゃん、こんなにデカいスレイプニルの背中から落ちたら大怪我するぞ。 危ないことをするな」
門番さんが子供を叱るように言った。
うちの仔たちは私を落としたりしないよ!って思うんだけど、門番さんの目には純粋に心配している色しか映っていなかったので、素直に忠告を受け取ることにする。
「うん、わかった。 昨夜は一睡もできなかったから寝落ちしちゃったんだけど、次からは気を付ける」
「お嬢ちゃんは森へ行っていたんだよな。魔物の襲撃に遭ったのか?」
「ううん、料理してただけ」
「は…? 料理!? 魔物の出る森で、一睡もせずに料理してたってのか……?」
「街中で作るには向かないものだったからね」
それまで心配気だった門番さんの顔が一気に呆れを含んだものになったので、急いで言い訳をしたんだけど、門番さんは呆れ顔のままだった。
機会があったらオーク骨スープをごちそうするからね! だから、そんな目で見ないで欲しいなぁ……。
「アリスちゃん!…さん」
ニールの背なかに乗ったまま門をくぐると、すぐに私を呼び止める声がした。 振り返ると見覚えのあるちんぴら顔…よりはましな悪人顔が駆け寄って来る。
「バルトロメーオさん、だっけ? どうしたの?」
「1人で森に残ったって聞いてよぉ…。アリス、さんなら大丈夫だとは思っていても心配で……。怪我しなかったか?」
冒険者ギルドで私に絡んでくれた悪人顔のバルトロメーオさんは、酔ってさえいなければなかなか気の良い人だ。私を<コンパニオン>扱いした冒険者にも訂正してくれたしね。
だからか、心の中で私を❝アリスちゃん❞と呼んでいることを隠せていない。 別に良いんだけどね? ちゃん呼びでも。
現在の私は中身はおばさんでも、外見は若さ溢れるお嬢ちゃんなんだから。
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