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冒険者としての初めての報酬
しおりを挟む森へ出発する当日の朝は、思ったよりもバタバタしてしまった。
昨日、後回しにした❝清算❞が思っていたよりも面倒……、❝丁寧❞だったから。
「スフェーンの森のゴブリン88匹と他の地域のゴブリン25匹分の魔石が合計で678,000メレ。 解体手数料とゴブリンの死骸の引き取り料が1匹につき5,000メレと担当職員への報酬を5%いただきますので、差し引き107,350メレですね。
それと、スフェーンの森のゴブリンには討伐依頼が入っていたのでその報酬と、他の地域のゴブリンの討伐報酬を合わせて----------------------------------」
魔物は討伐証明部位を提出すれば討伐報酬を受け取れるんだけど、報告するギルド付近で討伐をした場合には、その魔物に<討伐依頼>がかかっていることがある。 その場合は討伐依頼を後から受注することもできるので、ちょっとお得になったりする。
そんな説明をしてもらいながら、受け取るものは受け取り、支払うものはその受け取るお金から支払う形で、どんどん話を進めていく。
解体をお願いしていたオークとハーピーは魔石や肉などの素材を全て返却してもらい、討伐報酬から解体手数料や担当職員への報酬を引く形。
「骨やハーピーの上半身もお返しして良いのですか? こちらは引き取り料をいただきませんけど……」
ゴブリンだけは死骸を引き取ってもらうのにお金がかかるけど、他の魔物の不要部位は無料で引き取ってもらえるらしい。 でも、❝骨❞は私にとって大事な素材だし❝ハーピーの上半身❞はライムの❝栄養❞になるので全て返却してもらう。
肉はもちろん全て返却してもらったんだけど、ギルドに売った時の今日の相場なども1つ1つ説明してくれたので、とても時間がかかってしまったのだ。
私としては全て計算した後の受け取りや支払いの金額だけ教えてもらったら良かったんだけど、「信頼してもらえるのは嬉しいですが、もしもごまかされたらどうするつもりですか!」とディアーナには口頭で、ハクからは(アリスのおバカっ)と噛みつかれ、ライムからは無言の体当たりでのお叱りを受けてしまったので、大人しく話を聞いていると、
「---------------------------------ということで、アリスさんのランクが1つ上がって、今日からは<Eランク>になります」
いきなりのランクアップ宣言に驚かされた。
何一つ冒険者らしい依頼を受けていないのにランクアップしてしまうことに戸惑う私を置いて、
「すげえな! 登録前にこれだけの魔物を討伐してるんだから当然だな」
「登録前の討伐だから、彼女が倒したかどうかは正確にはわからんぞ?」
「今さら嬢ちゃんの実力を疑うヤツもいないだろう!」
「でも、素材はほとんど回収だろ? ランクアップポイントが足りなくないか?」
「アリス……さんは治癒魔法を使ってギルドに貢献したからじゃないか?」
「俺は今回の昇格はアリだと思う!」
「あたしも異議なしよ! おめでとう!」
「「「「おめでとう!!」」」」
と周りが大盛り上がりをしてしまう。
ランクアップすることに文句はないんだけどね? 登録後何一つ<冒険者活動>をしていないままでのランクアップは、なんとなく気が咎めるような……。
まあ、話を聞いていた冒険者たちからは文句が出る様子もないし、
(当然なのにゃ!)
(ありすすごいね! おめでとう!)
ハクやライムが大喜びしてくれているので、良しとすることにした。
<登録プレート>の更新の為に、また血液が必要になってしまったことだけは残念なんだけど。
楽しそうに私の指を❝かぷっ❞とするハクや、ヒールで傷を塞いだあとの皮膚に残った血液を嬉しそうに吸収するライムを見ていると、多少の痛みは我慢できるから不思議だ^^
こんな場面でも活躍してくれる私の従魔たちを、冒険者たちが口々に「賢いわ!」「可愛いな!」と褒めてくれるのを聞いて、鼻高々になってしまうのは仕方がないよね!
今回、私はゴブリンの魔石以外の素材は全て返却してもらった。
今後何に使うかわからないからね。一応ストックしておいて、お金に余裕がなくなったら売ればいいんだし。
だから今回の収入はゴブリンの魔石と、ゴブリン・ハーピー・オークの討伐報酬から解体手数料を引いた額だけなのであまり期待はしていなかった。
それでもランクアップするための手数料なども差し引いて最後に渡された報酬は、370,500メレ。
「冒険者、一度やったらやめられない……」
思わず呟いた私は周りからの爆笑や、
「うらやましいぜ!」
「負けねぇからな!」
「調子に乗って命を縮めんなよ!?」
の激励を受け取ることになった。
………最初の最悪なイメージとは違って、みんな結構いい人たちだと思った私は単純なのかなぁ?
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