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再交渉 2
しおりを挟む「ディアーナさんの仕事って何があるの? 一日の流れを教えて?」
カウンターに座って依頼の受付をするだけなら、ギルマスも負担には感じないかもしれない。ギルド内の清掃とかも業務だって言ってくれないかな?
期待したのはその程度のことだったんだけど、
「一日の流れですか? そうですねぇ……。
出勤したらまずはギルドの周りを簡単に掃き掃除します。その後、ギルド内で汚れが目立つ場所の掃除などを。 カウンターは頻繁に拭いておかないとすぐに泥やほこりで汚れてしまうので、気が付いたら拭くようにしています。
それから、前日自分が帰った後の依頼の受注・達成状況を確認して、新しい依頼についての概要を簡単に調べます。その後、買取担当に主な買取品の相場を確認してから受付カウンターに入ります。
後は受付業務を行いながら、担当冒険者の方たちのコンディションの確認…、達成した依頼内容から現在の実力を推測して彼らにお勧めの依頼を精査しておきます。
ああ、担当冒険者の方からの頼まれごと…、ほとんどが調べものですけど、も常にいくつかはあるのでその処理をしながら担当補助員との打ち合わせ。業務時間内はそんなものでしょうか。1日の報告を済ませたら退勤です」
「…………。それを全部俺がするのか?」
「当然ギルマスとしての仕事もあるから、1週間の間は掃除以外でギルドの外に出る暇もないね。まあ、たまにはいいだろう?」
ギルドマスターにとってはかなりハードな一日になりそうで、話を聞いて顔色を変えたけどサブマスターに笑っていなされていた。その上、話の流れを理解したディアーナさんから、
「私が担当させていただいている冒険者の方は、アリスさんを含めて19組になります。彼らへの情報提供などのお世話は、くれぐれも細やかにお願いしますね? コンディションに合わない依頼を受けようとする方もいますので、ちゃんと止めて差し上げてください。
ああ、私はギルドを出てからの帰り道は少し遠回りをして、ギルドと提携しているお店や冒険者たちがよく行くお店、鍛冶屋や食堂などに足を運んでいます。 商品の品質チェックや価格のチェックの為ですが、その結果もきちんと教えてくださいね?」
もっと詳しく話を聞かされて、愕然としていた。
私には詳しい想像はできないけど、調べ物って意外に時間と気力を費やすし、それが何組分もあるなんて……。ディアーナさんの仕事を引き継ぐのは、思っていた以上に大変そうだ♪
従魔たちと顔を合わせて笑い合っていると、ほっと胸を撫でおろしている冒険者たちの吐息の音が聞こえた。
……他人事だと思って安心してる? あなた達には別の仕事があるでしょう?
「ねぇ、ディアーナさん。 依頼ボードに❝ドブさらい❞とか❝公衆トイレ❞の掃除ってあるんだけど、これはGランクにしか受けられないの? 違うよね?」
私は依頼ボードの中から色が変色している依頼書を剥がして読み上げる。❝ランク不問❞って書いてあるのを知っていての質問だ。 当然、ディアーナさんの答えは「どのランクでも受けられます」。
ついでに、他にはどんな依頼が不人気なのかを聞いてみると、❝大量発生した虫の駆除❞❝肉屋の解体室の掃除❞❝事故物件の原状回復❞など、なかなか面倒そうな依頼が出て来て、話を聞いていた周りの冒険者&職員たちは3人の冒険者に同情の視線を寄せた。 ……本当に不人気な依頼みたいだ。
「俺たちはAランク冒険者なんだが……」
3人の冒険者が小声で反論するけど、それが何?
私の視線を受け取ったディアーナさんの、
「Aランク冒険者が率先して不人気の依頼を片付けてくれるなんて、ギルドとしても大助かりです! でも一体どうして?」
無邪気を装った質問に口を噤んだ。 ディアーナさんの視線が一瞬だけ冷たく尖ったのを見て、彼女の質問の意図に気が付いたらしい。
ここで改めて「俺たちは集団で女性の寝込みを襲いました」なんて言いたくないものね? さっき私が言っちゃったけど。
男たちはそれぞれに苦悶の表情を浮かべていたけど、治療を待っている冒険者たちの視線や呻き声は無視できなかったらしく、それぞれが力なく了承の意を示した。
「姉貴、手伝ってく」
「無理だね。わたしはそれぞれの後始末で忙しい」
悪あがきをしているギルマスも、最後の頼みの綱を切られて放心状態だ。
ハクとライムを見ると、楽しそうに笑ってじゃれ合っているから、これでひとまずの話は終了。
ディアーナさんから「先ほどの治療費20,061,000メレと、今回の18,000,000メレの入金を確かに行いました」の報告を聞いたら、後はサクッと治療を済ませるだけ。
もちろん、激マズ(らしい)MPポーションは全て受け取ったよ。 飲まずにインベントリにポイしたけどね。
ハクとライムに褒められちゃった♪
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