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食事会 4

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「同盟国からしてきた第三妃はもちろん大切であるがな。 予の可愛い義姪をないがしろにすることは許さぬぞ」

 水晶を通して王様の毅然とした声が聞こえる。 さっき聞こえたのは空耳ではなかったらしい……。

「なっ…! 義姪と言うても、陛下とは関係のない娘でございま」
「モレーノの娘であれば、予の……、いや、わたしの姪だ!! 無礼は許さぬ!」

 第三妃の言葉を遮って、王様の鋭い声が聞こえた。

 王様にとって、可愛い末弟の義娘は3番目の妻よりも大切なんだ……?  私は何か早まってしまったかも知れないな…。

 私たちは、昨日の『モレーノ可愛い』発言の数々を聞いていたから受け入れやすい王様の態度だけど、妻の立場の第三妃には受け入れがたいことだろう。

「その娘やモレーノさまには陛下のお子は産めませぬぞ! 陛下のお子を産めるのはわらわだけじゃ!」

 王様に対して必死に己の立場を言い募る。 だけどそのことが王様の逆鱗に触れてしまったらしい。

「子か……。子はそなたがもう少し大人になってから考えるとしようぞ?」

 王様の声が少し低いものになっていた。

 王様が「女官長を呼べ」と命じる声が聞こえると、水晶の向こうが少し慌しくなる。 しばらくは第三妃が王様に取りすがる声だけが聞こえていたが、そこへ女官長が到着すると、

「女官長。第三妃はまだ長旅の疲れが取れていないようだ、後宮にてゆっくりと休ませてやるが良い。 それと、第三妃は予の妻とするにはいささか幼過ぎるようであるから、第三妃から幼さが抜けるまでは後宮内にてのんびりと過ごさせてやると良いぞ。  
 表のことは何の心配もいらぬ。 賢い正妃と優秀な王太子がおるからな。 
 良いな? 後は女官長、そなたに任せるぞ」

 と、王様は第三妃を女官長に預けてしまった。

「陛下!? 陛下っ!」

 第三妃が王様を呼ぶ声がしばらくは聞こえていたが、それもしばらくすると聞こえなくなり、水晶の向こうとこちらに静寂が訪れる。

 ……ねえ、この重たい雰囲気はどうしたらいいの?










「んにゃん♪」
「ぷきゃ~!」

 つかの間の静寂は、従魔たちの楽しげな鳴き声で破られた。

(から揚げをチーズに絡めるとおいしいのにゃ!)
(おかわりーっ)

 ハクたちの食欲は、いつも気まずい雰囲気を吹き飛ばしてくれるなぁ…。

 おかわりを強請りに来た2匹に感謝しながら撫でまわしていると、護衛組が近づいてきた。

「お? なんだ、2匹とも! 嬉しそうだな~」

「チーズフォンデュに入れたから揚げがおいしかったんだって!」

「へぇ? から揚げかぁ!」

 護衛組……、みんなが興味を持ったみたいなのでインベントリからから揚げの大皿を取り出してメイドさんに渡すと、一斉にみんなの持つフォークがお皿に伸びた。

「先ほどから皆が美味そうに食べているそれは何か? 予も食したいぞ!」

「わたしもです、陛下。あれは何なのでしょう? 登録はすんでいるのでしょうか? 
 アリス殿、説明をお願いしますぞ!」

 先ほどとは打って変わって楽しげな王様と、興味津々な宰相さんの声も聞こえる。

 チーズフォンデュの説明をすると、絨毯の上でかまどを設置していることに驚かれて、故郷の魔道具で絨毯をかまどから保護していると言うともう一度驚かれた。  本当はハクの魔法なんだけどね~。 

 そのまま王様と宰相さんが興味のままに質問をして、こちらからは気が向いた人が答える形式が出来上がる。

「その食事のスタイルは珍しいな。椅子に座らぬのは何故か?」

「靴を脱いで絨毯を踏むのが気持ちがいいからですよ。 それにこの食事のスタイルは、食べたいものを好きなように選んで食せるのです。 
 いつか一緒にこの心地よさを堪能したいですね」

「キャベツの芯を食べることに抵抗は感じなかったのか?」

「アリスさんの作ったものが、おかしなものであるはずがないという信頼がありましたので。 食事会の始めに渡されたメニュー表にも堂々と<キャベツの芯>と書いてありましたし」

「本当に、美味であるのか…?」

「はい! 嘘みたいに甘くておいしいです!   ……アリス、どうしてこんなに美味しいの?」

 王様の質問にはきはきと答えたマルタが急に私に話を振ってきた。 王様へ直答することに気後れを感じてしまったらしい。

「鮮度が良いからだよ。畑から収穫したばかりのキャベツをそのままアイテムボックスに入れたからね」

「そうなの? とても贅沢なものなのね!」

「そう?」

「だってこの芯を育てたら、またキャベツが一玉出来るんでしょ? そんなに栄養があるのに美味しいなんて凄いわよ! 
 ……鮮度が悪いと美味しくないのよね? おかわりしてもいい?」

 マルタは王様の質問に答えていたことを忘れておかわりを強請ってきた。 王様も叱ったりしないので、快くおかわりを出してあげると、これにもみんなが一斉に手を延ばす。

「畑から収穫したばかりのものをそのままの鮮度でとは……。 私たちの口には入らない一品ですな…」

「ああ、とても残念だ…。 城の庭で栽培させるか?」

「はははっ! ご冗談を!」

「………宰相の屋敷の庭ではどうか?」

「……検討いたしましょう」

 こちらの部屋のみんなが食事に夢中になっている間に、水晶の向こうでは、やんごとなき人の屋敷の庭で行う家庭菜園の相談がされている。

 貴族の屋敷の庭って花が植えてあるものだよね?  野菜だと、ガーデンパーティーとかお茶会の時に困ると思うんだけどな……。
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