上 下
53 / 754

お昼ごはん

しおりを挟む


「少しルシィと相談する時間をもらえるかい?」

 そう言って、マルゴさんがルシィさんと店に行くと、

「じゃあ、その間にルシアンに素材を渡してくるよ」

 ルベンさんも家に戻ろうと外に出たので、急いで引き止めた。

「どうした?」

「ルシアンさんに、毛皮のなめしをお願いできますか?」

 腕がいいなら、ぜひお願いしたい。

「種類は?」

「ホーンラビット11枚とワイルドボア1枚です。 いくらになりますか?」

「ルシアンに聞いてみないと正確にはわからんが……。
 ラビットで1枚1000メレ、ボアで1枚5000メレほどだと思うが」

「お願いしようと思うので、一緒に行っていいですか?」

(どうするのにゃ?)

(出先で使う敷物にしようと思って。地面に直に座るよりいいでしょ? 布団にもなるし)

(良い考えにゃ~♪)

「ああ、なら俺が預かっていこう。アリスさんはそこで頑張っているライムに付き合ってやると良い」

 そう言ってくれたルベンさんの視線の先では、ライムが廃棄部分の消化・吸収を頑張ってくれている。

「ぷっきゅっ!」
(行っていいよって言ってるにゃ)

 ライムの気持ちは嬉しいけど、頑張ってるライムだけをお留守番させるのはイヤだな。

「お願いしても良いですか? 代金が倍以上になるようなら、教えてください」

 自分で行くのは諦めて、毛皮をルベンさんに渡してお願いすると、

「ああ、確かに預かった。急いで戻ってくるよ」

 毛皮を見て嬉しそうに笑ったルベンさんは、小走りに出て行った。







「時間、空いたね」

「空いたにゃ~」

「携帯食を作るには時間がなさそうかな…?」

何をしようかと考えていると、ハクが力を込めて言った。

「鑑定するにゃ!」

「何を?」

「アリスをにゃ! アリスは自分のステータスが気にならないのにゃ!?」

「だって、ついこの間鑑定したばかりだし」

「自分の成長を確認することで、もっともっと頑張ろう!ってモチベーションをあげるのにゃ!」

 ……どこかの自己啓発セミナーみたいになってきたぞ?

「成長の確認って言っても、数値とかあんまり覚えてないんだけど…」

「なら、わかるようにイメージしながら鑑定するにゃ! とにかく、早く鑑定するのにゃーっ!!」

 ハクが牙を剥いて鑑定を勧める。 ……素直に鑑定した方が良いみたいだ。


 名前 :アリス
 年齢 :16
 職業
 レベル:4 →9
 HP  :380 → 780
 MP  :800 → 2,300
 攻撃力:85  → 115
 防御力:430 → 460
 従魔 :ハク(神獣・守護獣)
    :ライム(リッチスライム) 
 称号 :女神ビジューの加護を受けし者 女神ビジューの友人  
     神獣の主  異世界からの転移者 
 所持金:991,100G

 スキル
 身体能力向上   レベル3  → 4
 剣術       レベル3  → 4
 魔力操作     レベル3  → 4            
 魔力感知     レベル4  → 5
 鑑定       レベル3  → 5
 料理       レベル1  → 2
 回復       レベル3  → 5  (Newリカバー)
 薬師       レベル3  → 4  (New診断)
 クリーン     レベル2  New
 ウインドカッター レベル1  New

 特殊スキル
 インベントリ   レベルなし。容量無限。時間経過なし。
          リスト機能・ソート機能あり
 マップ      レベル3  → 4
 複製       レベル1 3/3  → レベル2 5/5


 わかりやすく、とイメージしたら前回の鑑定結果も一緒に出てきた。 ビジューのくれたスキルはどこまで便利になるんだろう…?

「いろいろと上がっているにゃ♪」

「うん、軒並み上がってるね。 ……【鑑定】と【回復】の上がり幅が大きくない?」

「ボーナスポイントが付いたにゃ♪」

「ボーナスポイント?」

「【鑑定】は他のスキルとリンクしたから、【マップ】や【診断】を使った時も【鑑定】に経験値が入るようになったにゃ。
【回復】は新しい魔法を作り出したから、経験値にボーナスが付いたにゃ!」

「新しい魔法?」

「【ヒール】を改造したにゃ!」

「たったそれだけで!?」

「十分にゃ!」

 レベルが上がるのは嬉しいけど、この世界の経験値が良くわからないな……。








 鑑定の結果を見終わるのとほぼ同時にマルゴさんとルベンさんが戻ってきた。

「待たせたね。すぐに出られるかい?」

 マルゴさんは椅子に腰掛けることもなく家を出るつもりらしいが、とりあえず引き止める。

「先にお昼ごはんを食べましょう? 今日までお昼ごはんの時間を取れていなくて、すみませんでした」

生活リズムを狂わせていたことを謝ると、

「アタシ達は元々昼にごはんを食べる習慣はないよ」

 二人は顔を合わせて首を横に振っていた。 なんだろう?

「そうなんですか? じゃあ、このまま行きましょうか」

 もともと食べる習慣がないなら食事に誘うのも迷惑になるだろう。 出かける為に玄関に向かおうとすると、ハクが私に飛び掛ってきた。

(生姜焼きむすびは!? 生姜焼きむすびは食べないのにゃ!?)

 悲しげに訴えると、私の頬に牙を当てながら、

(生姜焼きむすびを食べるのにゃ~!)

 叫びながら、ゆっくりと牙に力を込め始めた。

 脅迫? ごはんのことで保護対象を脅迫する“保護者”がどこの世界にいるの!?

(ハク、わかったから離しなさい。 …今すぐに離さないと、晩ごはんも抜くよ?)

「にゃーっ!??」

 どれだけごはんに比重を置いているのか、ハクは裏返った声で悲鳴を上げて私から飛び離れた。

「うちの従魔にごはんを食べさせないと顔を傷物にされそうなので、付き合ってもらえますか?」

 2人を待たせながら自分たちだけ食べるのはイヤだったので、ダメ元で誘ってみた。

「何が出るんだい?」

「おむすびだけです。手軽に食べられるけど、ちょっと寂しいですね」

 誘っておいて何だかなぁ…と、申し訳なく思っていると、

「じゃあ、茶でも入れようか」

 マルゴさんが笑って立ち上がった。

「ありがとうございます! じゃあ、私はルシィさんを呼んできます」

「俺が行く」

 ルベンさんがルシィさんを呼びに行ってくれたので、私はインベントリから生姜焼きのおむすびセットを出すだけだ。

 従魔たちと一緒に席に座って待っていると、ほどなくルベンさん親子も戻ってきて、マルゴさんが紅茶を注いでくれる。

「「「いただきます」」」
「んにゃん!」
「ぷっきゅ」

 『いただきます』に参加したマルゴさんとルシィさんにルベンさんが驚くと、ルシィさんが日本の『食前・食後の挨拶』について説明をしてくれた。

「いい考え方だな……。一言に、ビジュー様への感謝も込めていいのか。 『いただきます』」

 ルシィさんの説明をゆっくりと咀嚼したルベンさんも『いただきます』に参加することになり、みんなで『いただきます』を言う事が懐かしくて、ちょっと嬉しい。

「これは良いね」
「にゃ~♪」
「ああ、手軽なのに美味い」
「ルシアンには内緒だわ…」
「お茶がおいしい…(欲しいなぁ…)」
「ぷきゅ~♪」

 生姜焼きむすびは概ね好評のようで、塩むすびと共にあっと言う間に食べ終わり、

「いってらっしゃい!」

 手を振るルシィさんに見送られて、家を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 【5/22 書籍1巻発売中!】

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

処理中です...