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初めての鑑定&名付け
しおりを挟む「これからどうしようか?」
小さな保護者さんに意見を求めてみると、
「アリスはどうしたいにゃ? どうしたらいいと思うにゃ?」
質問を返されてしまった。
何か方向性を示してくれるかと期待したが、私の保護者は甘やかすタイプではなかったらしい。
「まずは…、現状把握。自分に何ができるかの確認。
それから、ここがどこかを確認して、人の生活圏への移動。かな」
そう答えると、子猫は、
「両方、スキルを使うと便利にゃ♪」
長い髭をぴくぴくさせながら得意気に笑った。 猫って笑えるんだ……。
「ここがどこかを調べるのは【マップ】スキルだね? でも、自分に何ができるのかの確認は?」
そんなスキルあったかな?
「【鑑定】にゃ」
「【鑑定】って、植物とかが食べられるのかを調べるスキルじゃないの?」
「にゃ!? 鑑定は植物だけじゃなく、人間にも魔物にもアイテムにも使えるにゃ!
レベルが上がると魔物のウィークポイントまでわかるようになるのにゃ!」
! 鑑定、超・便利!!
「鑑定は使えば使うほどレベルが上がるから、まずは色々と鑑定してみるにゃ♪」
使うだけでレベルが上がるなんて、楽でいい。
じゃあ、まずは…、
「【鑑定】」
名前 :
年齢 :0歳
種族 :神獣・白虎
職業 :アリスの守護獣
レベル:1
HP 10,000
MP 10,000
攻撃力 150
防御力 5,000
スキル:世界の理
備考 :創造神ビジューによって創造された、アリスの守護獣
鑑定結果は半透明の羊皮紙のようなものに写し出された。 ちょっとだけ見難い。
あれ?
「シンジュウはシンジュウって名前じゃなかったの?」
「何を鑑定したのにゃ?」
「シンジュウを鑑定してみたんだけど、名前の欄が空欄なの」
なんか、ペットって文字が見えるんだけど、見ないことにした方がいいよね。私の保護者って言ってるし。
「初めての鑑定は自分に使うのが王道にゃ!」
何の王道!? 牙を剥いて怒ってるけど、よくわからない。
「シンジュウは神獣だったの?」
「さっきからそう言っているにゃ~。今までなんだと思っていたのにゃ?」
「シンジュウという名前の猫」
「猫じゃないにゃ! 僕は虎にゃ!!
アリスの世界でとっても偉い、白く輝く虎の姿を貰ったのにゃーっ!」
「だって、語尾が『にゃん&にゃ』だし。猫でしょ?」
それに、ビジューに聞かれて「猫が好き」って言った覚えがある。
「語尾に『にゃ』を付けるのは、ビジュー様からの厳命にゃ。『癒し』に必要だと言われたのにゃ」
「うん? あ~、まあ、かわいい、かな…」
ビジューの趣味だったのかぁ。 だったら、ちょっとだけうるさいかも、なんて言えないなぁ……。
「日本の四聖獣の白虎のことだね。 名前がないのはどうしてなの?」
「名前はアリスに付けて貰うように言われたのにゃ。アリスが呼びやすい名前を付けるのにゃ!」
ペットに名前を付けましょう。みたいなノリでいいのかな。
「じゃあ…。 じゃあ、タマ」
「猫じゃないのにゃーっっ!」
だ、だめかなっ? 牙を剥いた凄い顔で怒られた。
「じゃあ、シロ、とか?」
「うにゃぁ……」
これもダメみたい。でも、名前なんてそんなに簡単に思いつかないし……。
「ビャッコ、とかは?」
「アリスは『シロイヒト』って呼ばれて嬉しいのかにゃ?」
それは、イヤだな。
「あ~、シマとかモコかフワとか?」
「………」
「モチとかユキとかハクとか」
猫、じゃなくて、虎の元気がどんどん無くなっていく。 私には名づけのハードルは高すぎた。
「もう、最後のでいいにゃ……」
え?
「もう、僕の名前はハクでいいにゃ……」
猫改め虎さんは、深い深いため息を吐きながら、譲ってくれた。
「『ハク』でいいの?」
「いいにゃ。アリスには致命的にセンスがないことがわかったにゃ。 もう、仕方がないにゃ……」
ご、ごめんね。センスがなくて……。
諦めて名前を受け入れてくれた子虎の目には、とても0歳の赤ちゃん虎とは思えない諦観の色がありました……。
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