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第二章

6.温まるスライム

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「それよりも、パーティーの奴らには何と説明するんだ」

『うっ、それもあったんだった……』

 フェリになら全部話してもいいんだけど、またクリス達への秘密が増えちゃうしなぁ。
 かといって、クリス達に全部話すのは……だめだよねぇ、信じてもらえないと思う。
 クリス達が悪いわけじゃないけど、それぐらい『喋る転生スライム』って変だもん。

 うーん……仕方ない。ちょっとだけ誤魔化しちゃおう。

『フェリには前のボクのことは一旦伏せておくよ。ボクはスライムとして生まれた頃の記憶が無くて、その頃にアインと出会ったことにしよう」

「良いだろう」

 生まれる、アインと出会う、記憶喪失になる、フェリと出会う。
 うん、これならバッチリだ!

『そういえば、アインは何でスライムのボクと話せるの? フェリと同じでテイマーの資質持ち?』

「そうだ。使ったことのない物も多いが、大抵の資質や適正は持っている」

「そ、そうなんだ……」

 チートだ、チートキャラだ……。
 そんなに強くて才能もあるのに、何でボクと知り合いだったんだろ?

 ……気になるけど、頑張って自力で思い出さなきゃね!
 このままじゃアインに悪いもん!

『じゃあフェリを呼ぶから、アインも適当に合わせてね』

「わかった」

『フェ~リ~! 来て来て~!』

 ――ぽいーん、ぽいーん!

 こっちをチラチラと気にしてたフェリが、おずおずと近づいてくる。

 真実をちょっぴり混ぜながら話してみたら、フェリはあっさりと信じてくれた。

「そっか……ニイムって、生まれた頃のきおく、無いんだね……」

『そうなの~。特に困ったこともなかったから、これまで気にしたことなかったんだけどね」

「お前――ニイムの声が俺にも聞こえることは、他のメンバーにも言っておいた方がいいんじゃないか」

『そうだね。クリス達も気にしてるだろうし、説明しに戻ろう!』



 二人と一匹でクリス達のところに戻って、事情を説明する。
 特に怪しまれることもなく、三人はすぐに納得してくれた。

「へぇ、アインって本当に多才なんだな。羨ましいよ」

「しっかしオメー、従魔でもない野良スライムと知り合いって……ヘンな野郎だな」

「ちょっとシーロ、言葉は選びなさいよ! ごめんね、アイン!」

「いや、別に気にしてない」

「そ、そう……?」

 ボクが喋るってことについては、クリス達もすぐに信じてくれたみたいだ。
 ま、フェリとはよく話してたもんね。
 普通のテイマーと従魔でもコミュニケーションはとれるんだから、そう信じがたい話でもなかったのかな。

「それよりも、今日はこのまま野営で良いのか。まだ早い時間だが」

「あぁ、明日はボス部屋に行ってみようかと思ってね。早めに寝ようと思ってるんだ」

「ファスールダンジョンの中ボス……10階の主か。分かった」

「頼りにしてんぜ~、マジックナイトさんよ」

「ちょっと、目標はあくまでもアイン抜きでの討伐だからね!」

「わーってるって」

 明日は初の大物バトルかぁ。ボク、役に立てるかなぁ。
 攻撃は体当たりだけだし、回復は傷口に触れてなきゃダメだし……ムリかも……。

 いやいや、弱気はダメだよねっ!
 中ボスは大きなミノタウロスだって話だから、隙を見て後ろからアタックすればいけると思う。
 回復だって一旦下がってもらえたら出来るんだし、やれることはあるはずだ。
 スライムでも頑張って参加するんだいっ!

「じゃあ交代で睡眠を取ろう。悪いけど、アインとニイムは先に見張りをお願いできるか?」

「問題ない」

『お、おぉぅ……オッケー!』

 まだ二人きりはちょっと気まずいけど……むしろこれはチャンスだよね?!
 いっぱい話して打ち解けて、あわよくば記憶を思い出すきっかけになるかも!

『よーし、アイン、色んなこと話そうよ! ボクも今まであったこと、いっぱい話すからさ』

「……見張りは忘れるなよ」

『もちろんだよっ!』


 こうしてしばらくの間、旧交を温めるボク達だった。
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