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第一章

37.お楽しみスライム

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 フェリがいるなら、このまま人のいる所に居続けるのも良いなぁ。
 なんたって美味しいゴハンが出るもんね!

 でもボク、このままでいいのかなぁ……。

『ねー、リーリオ~』

『どうしました?』

 お祝いムードのクリス達を眺めながら、ウインドウのリーリオと向き合う。

『ボク、そろそろフェリと別れた方がいいのかなぁ? クリス達に任せられたら安心だし……』

『……ニイムさんは、別れたいのですか?』

『そんなことないよ!』

 それは100パー無い!
 フェリとは短い付き合いだけど、大好きだもん。

『でも、でもさ……こうやって迎え入れてくれる人間がいるなら、スライムのボクは引いた方がいいんじゃないかなぁって……。スライムと人じゃ、進む道が違うでしょ?』

『違うんですか?』

『えっ……』

 そりゃ、違うんじゃないのかな。
 スライムはスライムだし、人は人だし、モンスターと人だし……。

『今はテイマーと従魔として、上手くやってるじゃありませんか。それは同じ道を一緒に歩んでいる、ということでは?』

『そ、そうかもだけど……良いのかなぁ?』

『良いと思いますよ、私は』

 リーリオの天使スマイルだ。珍しい。

『ニイムさんはニイムさんらしく、思うように生きて良いんですよ。スライムだとか人だとか、他人の価値観に縛られることはありません』

 そう……か……。

 ……そっか!

『……うん、ありがとう、リーリオ! ボク、ちょっとおセンチな気分になってたみたいだ!』

『ふふ、ニイムさんは元気に笑ってる姿が一番ですね』

『へへへ~♪』

 そうだよね。
 スライムでも人間でも亜人でも、好きに生きていいんだ。
 無理に別々になる必要なんてないよねっ!

『私としては、ニイムさんお一人になられても良いんですけれど……』

『……え?』

『あぁっ! ダンジョンにいた頃が懐かしいっ! 何でも「リーリオ~リーリオ~」と言って頼ってくださっていたのに……今ではすっかりお払い箱で……私だけの、ニイムさんが……ッ』

 ああ、うん……。

『所詮、私はガイド……序盤だけの存在……きっとその内に忘れ去られて……』

『んもー、いじけないの! そんなこと言って、毎晩お喋りしてるでしょ!』

『それはそうなんですけどぉ~!』

 ボクはスライムだから、ほとんど寝ないからね。
 クリス達が寝てる間は大体、リーリオとお喋りしてる。

『それに今回のピンチはリーリオに救われたようなものなんだからさ。もっと自信持ってよ!』

『ニ、ニイムさん……!』

 ふ~、世話が焼けるなぁ。
 まぁそういうところも嫌いじゃないんだけどさっ。

『それはそうと、これからどうしようかな~』

『どう、とは?』

『フェリと出会って、クリス達のパーティーに入れてもらって、とりあえず身の安全は確保できちゃったなーって思って』

『そうですね、冒険自体は安全とは言えませんが……以前に比べると遥かに安全になったと思います』

『でしょー? 今まで生き延びようと必死だったけど、ある程度安全になったからさ。次どうしようかなーって』

『なるほど……では、やらなければいけないことではなく、やりたいこと・・・・・・は無いんですか?』

 やりたいことかぁ。
 あ、そういえばボクの前世が気になるかも。まだちょっとしか思い出せてないもんね。
 むしろチラ見せされて余計に気になるというか……。
 どうにか「ドバーン!」と思い出せないもんかな~。

『前のボクを思い出したいなぁ~チラッチラッ』

『うっ……そ、それは私からは……』

『だよねぇー。だいじょぶ、頑張って自力で思い出すよ!』

 レベルアップや進化で思い出すっていうのは経験済みだもんね。
 頑張ればきっと、もっと思い出せるはずさ!

 っと、結構リーリオと話し込んじゃったな。
 ボクもお祝いに参加しないと!

『じゃあボクはみんなのところに戻るよ。またね、リーリオ』

『はい。またいつでも呼んでくださいね』

 ウインドウが消えた途端、体に衝撃が走った。

 ――ガシッ!

「お~スラ公~、飲んでっか~?」

 シーロ、お酒臭い……。

「おいおい、あんまり絡むなよ?」

「だーいじょーぶだって、さっき自分で酒飲んでたろ~? ほれ、これも飲めや~」

『わーい、いただきまーっす♪』

 シーロに差し出されたお酒のジョッキを中身だけ飲み干して……。
 っぷっはー、美味しい!

「お~、良い飲みっぷりだなぁ~!」

「ニ、ニイム……そんなに飲んで、大丈夫?」

『大丈夫、大丈夫! スライムにアルコールは効かないから! たぶん!』

「な、なら良いんだけど……」

「ほら、フェリ君も食べなよ! このお肉とか美味しいよ?」

「あ、ありがとう、ございます……」

「フェリはもっと肉を食べて体を作らないとな。俺と一緒に鍛えるか!」

「は、はい!」

「んなカテーことは後だ後~! 今は飲めー!」

『いえ~い♪』



 生きるのに精一杯だったボクが、安心できる場所を得られて。
 フェリとボクを受け入れてくれる人を見つけられて。
 クリス達とこんなに仲良くなることができて、ほんと~に良かった!
 これからもみんなと、もっと楽しいこと見つけていきたいな!

 スライム生、楽しんだ者勝ち……だもんねっ♪
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