上 下
34 / 58
第一章

34.試行錯誤のスライム

しおりを挟む
 とにかく。とにかくだ。
 クリスをなんとかしないと……このまま放ってはおけない。
 傷を治す方法か安全に運ぶ方法か、どちらかが必要だ。
 でも薬は無い。回復魔法も無い。戦うにも力が足りない。

 くぅ……今のままじゃどうにもならない……!

『……リ、リーリオ……』

『はい』

 いつもすぐに応えてくれるリーリオ。
 リーリオならもしかして……っていうのは、都合が良すぎかなぁ。

『何か良い方法ってないかな? 安全な抜け道とか、すごい隠しアイテムとかさ』

『……残念ながら』

 うぅ……やっぱりダメかぁ。

『じゃあ、ダメ元で聞いてみるけど……リーリオの力でなんとかなったり、しない……よね?』

『……申し訳ありません。地上の者に私が直接手を出すことは……』

『だ、だよねだよね! ごめんね、聞いてみただけだから気にしないで!』

 リーリオは全く悪くない。
 天使には天使の制約があるんだ……無理は言っちゃいけないよね。

 でも、ボクじゃ役に立てそうにないんだよなぁ……。
 収納スキルじゃ生き物は運べないし、戦闘力も高くない。

 うぅ~、何かないかな~! 何かぁ~!!

『ニイムさん。一つだけ……可能性が』

『えっ、何かあるの?! 教えて教えて!』

 やったぁ! やっぱり困ったときのリーリオ様だね!
 ありがとう、ボクのガイド天使!

『状況を打開できるとしたら、貴方です』

『……え、ボク?』

『はい。見たところ、今のニイムさんはステータスの割にスキルが少ないんです。今のニイムさんなら、もしかしたら望むスキルを手に入れられる……かも・・、しれま――』

『なるほどじゃあ回復魔法が欲しいです回復魔法! 回復魔法でろー!!』

 魔法の出し方なんてよくわかんないから、クリス目掛けてとにかく目一杯の力を込めてみる。
 うー! はー!

『ニ、ニイムさん……』

『どうやったら使えるようになると思う?! ボク、今すぐ使いたいんだけどっ!』

『あ、焦らないでください……あくまでも可能性、ですから』

『でもでも~!』

 今やらなくていつやるのさ!
 スキルが増えるんなら「今でしょ!」って感じだよ?!
 う~ん、でろ~でろ~!

『で、でない……。どうしたら使えるかなぁ?』

『モンスターの魔法の習得方法までは分かりませんからね……出来ることを全て試すしかありません』

『わかった! 思いつく限りのこと、やってみる!』

 ――ぽいーん、ぽいんぽいん、ぺとっ

「うおっ、なんだよこのスライム」

「えっ、何? クリスも収納しちゃうの?」

「ニ、ニイム……?! ど、どうするの?」

『ボク、ちょっと色々試してみるから! シーロとセシリアにも伝えて!』

「う、うん……」

 近い方が効果が出そうな気がするから、とりあえずクリスの顔に引っ付く。
 えーと、なんか傷が回復しそうなこと……。
 まずはさっきみたいに念だ、念を飛ばそう!

 むーんむーんむーん……ハァー!!
 ヒール! キュア! ファーストエイド!

 ……ダメか。
 んじゃ、祈るか。誰に祈ればいいのか分からないけど。

 神様~! どうかボクに回復魔法をお授けください!
 もしくは、クリスに神の奇跡を~! 御慈悲ごじひを~!

 ……ダメかー!
 ええい、こうなりゃ実力行使だ!
 ボクのぷにぷにボディで直接傷口の止血をする!

 ――もにょにょにょ……ぺちょっ

 あ、よく考えたら包帯があるから、ぷにぷにボディは関係なかったかも。
 でもとにかく、血よ止まれ―! 傷よ治れー!
 ちぇえーい!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす
ファンタジー
化粧師の男は異世界に転移したことでスキルとして力を得てその特異な力を使って村人から商人、そして冒険者や傭兵となる。男を巡って女が集まり、様々な思惑が男を巻き込んでいく。

元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる

ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。 モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。 実は前世が剣聖の俺。 剣を持てば最強だ。 最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。

白花の咲く頃に

夕立
ファンタジー
命を狙われ、七歳で国を出奔した《シレジア》の王子ゼフィール。通りすがりの商隊に拾われ、平民の子として育てられた彼だが、成長するにしたがって一つの願いに駆られるようになった。 《シレジア》に帰りたい、と。 一七になった彼は帰郷を決意し商隊に別れを告げた。そして、《シレジア》へ入国しようと関所を訪れたのだが、入国を断られてしまう。 これは、そんな彼の旅と成長の物語。 ※小説になろうでも公開しています(完結済)。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

ヒトナードラゴンじゃありません!~人間が好きって言ったら変竜扱いされたのでドラゴン辞めて人間のフリして生きていこうと思います~

Mikura
ファンタジー
冒険者「スイラ」の正体は竜(ドラゴン)である。 彼女は前世で人間の記憶を持つ、転生者だ。前世の人間の価値観を持っているために同族の竜と価値観が合わず、ヒトの世界へやってきた。 「ヒトとならきっと仲良くなれるはず!」 そう思っていたスイラだがヒトの世界での竜の評判は最悪。コンビを組むことになったエルフの青年リュカも竜を心底嫌っている様子だ。 「どうしよう……絶対に正体が知られないようにしなきゃ」 正体を隠しきると決意するも、竜である彼女の力は規格外過ぎて、ヒトの域を軽く超えていた。バレないよねと内心ヒヤヒヤの竜は、有名な冒険者となっていく。 いつか本当の姿のまま、受け入れてくれる誰かを、居場所を探して。竜呼んで「ヒトナードラゴン」の彼女は今日も人間の冒険者として働くのであった。

処理中です...