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えぴそうど1
転校生
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白い白い少年がわたしの小学校にやってきたのは、
さむいさむい冬の日だった。
白いマフラーと、真っ赤な毛糸の手袋と、青い雫のペンダントをして。
先生は、学校にネックレスはだめだと注意したのに、
少年は、これはネックレスではないと、きっぱりと言った。
そして、青い雫だけを空中に浮かび上がらせた。
あの少年はだれだったのか。
名前も記憶もあいまいになり、
いつしか、その存在さえ夢だったような気がした。
あの転校生。
あの、白い少年。
わたしが、吹雪の中、山道を迷いかけたとき、
いつの間にかわたしの前を歩いていた少年。
かれの体を透けて、青い雫が見えて、それを追うように、
つかまえるように歩いた。
そして青い光が赤く、懐中電灯の光に変わったとき、
わたしは、わたしの名を呼ぶ父に抱きしめられた。
それから十年後の同窓会。
わたしは先生に、あの転校生の名前を聞いたが、そんな子はいなかった。
となりのクラスに女子の転校生がいたけれど、半年で転校して行ったという。
青い瞳の女の子だったらしい。
そうか、
わたしはずっと、色白の少女を少年とかんちがいしていたかもしれない。
記憶とはそんなものだ。
「そういえば、おまえが雪山で遭難したとき、
お前のお父さんが変なことを言っていたな」
突然に先生が言いだした。
「吹雪の中、おまえのいる方に、
白い少年の姿が見えた気がして、進んで行ったそうだ。
そしたらおまえが目の前にあらわれて、思わず抱きしめたそうだ」
わたしの初めて聞く話だった。
「あとで気になって見に行ったら、
そこになんと、だれが作ったのか、雪ダルマがあったそうだ」
さむいさむい冬の日だった。
白いマフラーと、真っ赤な毛糸の手袋と、青い雫のペンダントをして。
先生は、学校にネックレスはだめだと注意したのに、
少年は、これはネックレスではないと、きっぱりと言った。
そして、青い雫だけを空中に浮かび上がらせた。
あの少年はだれだったのか。
名前も記憶もあいまいになり、
いつしか、その存在さえ夢だったような気がした。
あの転校生。
あの、白い少年。
わたしが、吹雪の中、山道を迷いかけたとき、
いつの間にかわたしの前を歩いていた少年。
かれの体を透けて、青い雫が見えて、それを追うように、
つかまえるように歩いた。
そして青い光が赤く、懐中電灯の光に変わったとき、
わたしは、わたしの名を呼ぶ父に抱きしめられた。
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