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新惑星書 四番目の星

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太陽のまわりを回っている星を惑星と言います。
太陽に近い星から水星、金星、地球、火星とつづいて地球は三番目です。
それで四番目の惑星は火星になっていますが、火星ではなく、
実は地球にそっくりの星がもう一つあるのです。
その星は太陽を真ん中にして、ちょうど地球の反対側にありまして、
いつも太陽の陰になっていて見えません。
地球と同じところをグルグル回っていて大きさも同じ。
水と空気のあるところも同じで、生物も住んでいます。
地球と双子の星と言ってもいいのですが、
ほんのちょっと地球より後にできましたから、四番目なのです。
ただ誰も知らないなので、名前はありません。
地球に似ていても星が違うため、そこで生れる世界は当然違ってきます。

※この物語はフィクションであり、星の名前その他は全て架空の物で、
この地球とは一切関係ありません。


その星には、雲の上に七人のヌシと呼ばれる人たちがいました。
地上の生き物たちを造り育てて、のんびりと暮らしていました。
ときどき大きな動物も造りました。
動物たちはゆっくりと進化していきます。
動物によっては何万年もかかるものもいました。
ときには失敗して消えてしまうものもいました。
そして何億年もかけて、地上はいくつもの変化を繰り返してきたそうです。
けれどもヌシたちは変わりません。
かれらはこの星ができたときから、太陽とともに生きてきましたから、
太陽がある限り死ぬこともないそうです。
そんなかれらがある日、
自分たちの姿に似せた人間という生物を創りました。
大きな動物が絶滅したあと、しばらく経っていたので、
そろそろ次の動物をと思い立ち、地上に住まわせ始めました。
これはそれからのお話です。
 

七人のヌシたちは自分に似た男女をそれぞれ一人ずつ、
合わせて十四人の人間を造りました。
その人々は子供を増やし、
数十年もすると子や孫が増えて、何百人にもなりました。
そのころはまだみんな同じような人間たちですから、
一つの家族のように仲良く暮らしていました。
けれどもそのままではつまらないので、ヌシたちは人々を七つに分け、
七つの国を作って、どの国が一番豊かになるか見守ることにしました。
そのために人々に三つの試練を与えたのです。

 一つは夢を持つための「知恵」
 二つ目は限られた時間の「いのち」
 三つ目は助け合うための「病気」

人々が色々なことを考えるようになったのはそれからです。
それぞれ少しずつ違った生き方をして、病気や年老いて亡くなる人が現れました。
ヌシたちは自分の国がどんな国になっていくのかワクワクし、
立派な国ができるだろうと思っていました。

知恵を持った人々はいろいろな生活をするようになり、
他人と違ってもいいんだと思い始めました。
七つの国それぞれに違った言葉、違った文化が生まれていきました。
人が増えると同時に、国の中は少しずつまとまりのないものになりました。

そんなある日、だれかが言いました。
「みんなの中で一番はだれだろう?」
今までだれも一番などという言葉を、考えたことはありませんでした。
知恵をもったことで気になったのです。

みんなは考えて言いました。
「一番最初に生まれたのは、私のおじいさんたちらしい」
「一番、背の高いのはきっと私だ」
「一番声の大きいのはわたし」
「一番歌がうまいのはわたし」
けれども今まで比べたことがなかったので、それが本当かどうかわかりません。
その日から人々はなんでも比べるようになり、
国の中でいろいろな一番が生まれました。
そのおかげで小さないざこざが、あちらこちらで起きるようになりました。
そして、一番偉い人間が支配する国ができていったのです。

それからまた人々の数は増えていき、
やがて七つの国々はともに、自分の国が狭く感じられるようになっていきました。
ついに隣の国どうしで争いを始めるところも現れました。
今まで国の中で一番を目指していた人が、
この星での一番を目指すようになりました。
国もまた、自分の国が一番だと言い出すようになったのです。


ここまでくると、ヌシたちは雲の上で困った顔をしました。
人間たちの知恵が、思っていたのと違う方へ向かっていたからです。
見かねたあるヌシが、地上の人々にまぎれてささやきました。
「一番大切なものは何かな?」

人々はまた考えました。
「私は家族だな」
「私はいのち」
「争いのない世界」
「私たちの国」
いろいろ出たけれどもまとまることはありません。
やがて、
人々は自分の国が一番であり、一番広い国でなければならないと思い始めました。
そして、隣の国を自分たちのものにしようとする国が現れ、
とうとう戦争を始めてしまいました。
人々は知恵を悪用し、命を粗末にし、助け合うことを忘れたようです。


ヌシたちは相談しました。
「人間たちは心の病気のようだ」
「そろそろ終わりかな」
「振り出しへもどる・・・だね」

「どうやって終わらせようか」
「今度は熱くしよう」
「恐竜のときは冷やしていったからね」
「そう恐竜で失敗したから人間には知恵を与えたのに、気づかなかったようだね」
七人はがっかりして地上をながめていました。

それでもまだ、
人間たちが、この星の上で生かされていることに気づくかもしれない、
という望みは捨てきれず、
毎年少しずつ気温を上げていくことにしました。
そうすればリセットされるまで数十年かかるはずです。
心の中でかれらは、
自分をもとに造った人間が愚かなはずがなく、
自分の国が一番豊かで平和になる、はずだったのにと思いました。


たとえもし地上の人々がいなくなったとしても、
太陽がある限りこの星は生き続けます。
つぎはどんな動物を育てようかと、ヌシたちは話し合いました。
もう少し知能を下げた猿を増やしてみようか、などとも考えています。
ただ、
また地上がきれいになるまで数百年かかりそうなので、
それまで寝て待つことにしました。

 
四番目の惑星は地球から見えません。
でも太陽の陰にあるのです。
地球とそっくりだけど七人のヌシがいて、
今は寝ています。


 おしまい
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