ピストルが震える

ユウガ

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ピストルが震える

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青い。青い。青い空。
私はこの暑き空を影から見ている。
公園のベンチから影を地へ垂らし、子らは走り回っては黄色く肌を焦がしていた。
その対比かのように子らの母親達は冷ややかに話をする。
ミンミンミンミンミンミン・・・
蝉?蝉か。もう夏なのか。
どうりで暑い訳である。
汗が泡立つのも悪くないが、やはりこの独特な気持ち悪さがある。
たまらずタオルに汗を染みこませる。
それと同時に無心も落ちたのだろう。
ふと‘あの日の事’を思い出す。
「・・・何やっているだろうな、俺」
だが、今思えばこの言葉自体が前ぶりだったのだろう。
誰かが微笑みながら近付いてくる足先が視界に入った。
「あんた、冴えない顔してるねぇ」
「・・・えっ?」
それは中腰のばあさんだった。
所々に穴を開けた麦わら帽子の下からタオルらしき物がたれていた。
服などには土が生地に浸透していて、ばあさんの手には軍手もしていた。
おそらく、農業でもやっているのだろう。
この公園の近くには小さな畑があるしな。
そんな事にうつつを抜かしていると、ばあさんがよいっしょと隣に座って来た。
「眺めが良いねー」
「はい」
「・・・でも、あんたからしたら眺めが悪いじゃないかい?」 
「・・・えっ?」
その言葉に図星を突かれた気がした。
そこからばあさんの顔つきがじわじわと変わって行くのを肌で感じた。
「だって、あんたは今、‘殺そうかどうか、迷っているんだもの’ね」
「な、何を言ってるんですか・・・」
「ふふふ、友人にやられたでしょ?お金で」
「そ、それをどこで・・・!!」
再び、ばあさんの方に顔を向けるとばあさんは
少し遠くを歩きながら「ゆっくり考えな」と言い残していった。
そして、視線を下に向けるとそこに謎の包みに入った‘それ’があった。

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