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第7章 動きだす強硬派とカルベル王国内戦! 第2節 潜入と国王の接見、そして内戦開幕! 

第121話 カルド王国で会議と戦争の予兆(前編)

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 レン達が中年男性の案内で王城内を歩いていると、時々不穏な視線を感じていた。

「レン、どうかしたのか?」

 レンが時々後ろをチラチラ見ているので、ファングが不思議そうにレンを見ていた。

「いや、誰かに見られている感じがして?」
「誰かが後ろにいるのか?」

 ファングは後ろを見ていたが、人がいる気配など全く感じなかった。

「レン君、それは緊張状態よ。王城内に入ると、周りに警備がいると錯覚するのよ」
「えっ、そうなの? 僕、緊張しているのかな? 確かに緊張状態だと、少しの風で視線を感じたりするから、僕もその状態なのかな?」

 レンはアリスに言われて納得していたが、ファングは後ろをもう一度確認しながら、アクト達とコンタクトを取っていた。

「おい、アクト、聞こえているか? レンが変な視線を感じるみたいだから、ちょっと周囲を見てくれないか?」
【別に構わないけど、レンの後ろには誰もいないぜ?】

 アクト達もレンが言った方向を見ていたが、特に人影はなかった。

「いや、そうとも限らないぜ、アクト! レンが何かを感じる場合は大半が当たるから、一応不安要因は取り除く必要があるだろう?」

 レンの直感はファング同様に高い確率で、当たるのでファングがかなり神経をとがらせていた。

【確かに、レン君の感は当たるからね】
【レン様の感は恐いくらい的中しますから、私達が周囲を気配りしないと行けませんわね】
【レンに忍び寄る不安要因は私が取り除く!】
「お前ら、張り切るのは良いけど。あくまでも確認な。何かあったら俺に連絡しろよ。俺からレンに伝えるから」

 何かしらの手柄が欲しいのか、情報をファングに集約しろと言うので、アクト達が呆れ返った声で話していた。

【はいはい、分かったよファング! 俺達の手柄を使って、レンに褒めて貰いたいんだな】
「別にそんなんじゃあないし‥‥‥」
【ファングが動揺しているよ】
【図星みたいですね】
【相変わらず、分かりやすい】
「お前ら、さっさと行け」
【はいはい、分かりましたよ。アルトニス、エレント、エレナ、俺はレン達の傍にいるから、何か不審な奴を見付けたら報告しろよ】
【了解!!!】

 アクトの指示で、アルトニス、エレント、エレナは三方向に分かれて、壁をすり抜けながら不審な人物を探し始めていた。

「ファング、やっぱり僕の後ろに不審な人でもいるの?」 

 ファングが後ろを見ながら、アクト達と会話をしている事を知らないレンは心配そうに声を掛けていた。

「レン、後ろを暫く見ていたけど特に誰もいないかな?」
「やっぱり、緊張の類で体が敏感になっているのかな?」
「多分、そうだろうな?」

 レンはアリスが言った事を気にしながら、正面を向いて歩いていた。

 やべぇ、ずっと後ろを見ながらアクト達と話してたから、不審に思われたかな?

 ファングはまたレンの前でミスしたと思いながら、内心バクバクの状態でレンを気に掛けていた。レン達は中年男性の案内で王城内を暫く歩かされると、大きな扉の前に来ていた。

 うぁ、中世ヨーロッパで見る風景だよ。それに漫画やアニメなどで描かれる感じの扉だよ。やっぱり僕は異世界に転生して生まれ変わっているんだな。

 レンは普段見慣れない光景を見て、改めて異世界で生まれ変わったと実感していた。

「コンコン、陛下。リズワール王国魔法騎士学園の関係者を連れて参りました」

 中年男性が扉越しで話している中、アリスがレンの方を見ていた。

「レン君、扉を見てどうかしたの?」

 レンが扉を見て何故か目を輝かせていたので、アリスが不思議そうに声を掛けていた。

「えっあぁ、アリスか! ちょっと見慣れない扉があったから驚いていただけだよ。僕って平民だから、こういった大きな扉を見るの初めてだから、その色々凄いなと思って」
「あっ、僕もレンお兄ちゃんと同じだよ。こんなに大きい扉初めて見るよ」
「まぁ、レンやレオスはごく普通の平民だから、こういった場所には余り来ないよな」
「ファング、ごく普通の平民で悪かったね」
「レン、何でキレるんだよ。頼むから、怒るなよ。俺の言葉に悪い点があるなら謝るから」
「相変わらず、茶番劇が過ぎるわね」
「アハハッハ、まぁレン師匠とファングは仲が良いので、レン師匠が軽くからかっているだけですね」
「お前ら、これから国王に逢うんだから、ビシッとしろ」
「はい、分かりました。ベリット先生」
「はぁ、本当に大丈夫からしらね、レン・フォワード君達わ」
「大丈夫だろう、やるときはやるし」
「ファブリル先生、あんまり説得力に欠けますわね」

 先生達が心配している中、レン達はいつも通りのマイペースを見せていた。それから暫くして扉が開くと王族と思われる人物達が一様に座り、レン達の方を見ていた。

「国王、こちらがリズワール王国魔法騎士学園の学生と先生達です」
「ほう、遠い所を私の頼みを聞いくれて感謝するぞ。リズワール王国魔法騎士学園の学生と先生達よ」
「はっ、お初に掛かります。私は魔法騎士学園の生徒達の指導をしている、ベリット・ランサーと言います。学園長に救難の知らせが来たと言う事でカルド王国に来た所存です」

 ベリット先生が国王に色々と挨拶と、経緯の説明をしている間、レン達は別の方に目線が行っていた。

「レン、凄いご馳走の量だな」
「うん、そうだね。まさか昼食を王城内で取るとは思わなかったよ」

 長いテーブルを見ると、多くの料理が並べられていた。

「レン師匠、僕はもうお腹ペコペコですよ。見ているだけで涎が出そうです。それにアルビィスがご馳走を目にして、早く食べさせろと胃袋を動かしてウズウズしてます」
「レイス君は相変わらず、食いしん坊よね。まぁ、アルビィス君もレイス君に似て大食いだけど」
「アリスさん、アルビィスは僕に似たと言うか、おいしい食べ物には目が無いだけですよ。それとアルビィス、ちょっと胃袋を動かすのやめて下さい。国王の前で変な動きしたくないので」
「レイスお兄ちゃんは、アルビィスお兄ちゃんを上手くコントロールしているよね。それにしても、凄いご馳走だよ。僕も兄さんから早く食べたいって言っているのが伝わってくるよ」

 レン達はコソコソと先生達の後ろで話していたので、クラック先生が呆れ顔で見ていた。

「貴方達、国王の前で何をコソコソ話しているんですか?」
「えっ、何でもないですよ。ちょっと料理が気になって」
「おい、国王の前で何を騒いでいるんだ。申し訳ございません。私達の生徒が無礼を」

 ベリット先生はレン達に注意してから、国王に謝罪していた。

「フォフォフォ、まぁ宵でないか、料理が気になるんだろう?」

 カルド王国の国王に見透かされていたので、レン達が慌てふためいていた。

「えっ、何で俺達がコソコソ話していた事が分かるんだよ」
「ファング・ドレイク、国王に向かって何て口の聞き方だ」
「フォフォフォ、宵でないか。もうお昼だし、お腹が空いたのだろう。ほれ、お前さん達も席に付いて、食事をしながら話そうじゃないか?」
「やった、やっと飯だ」
「ファング・ドレイク、少しは回りの空気を考えろ。お前は貴族なんだろう。少しは礼儀作法を分かっているんじゃ無いのか?」
「分かっていますよ。でも、今は普通の学生です」
「お前ら、本当に私達の生徒が無礼を」

 ベリット先生は何回も国王に謝罪していたが、国王は何回も謝らなくて良いと促していた。レン達はさっさと席に座ると、目の前の料理に興味深々に眺めていた。

「では、皆が席に着いたので、食事をしながら皆の事を一人一人、教えてくれな。私は、カルド王国の国王をやっている、フォックス・カルドだ。そして、私の右側に座っているのが、私の息子のロータス・カルドだ」
「初めまして、リズワール王国魔法騎士学園の学生さん。俺の名前は父上が言った通りロータス・カルドだ。この国の第一王子をやっている」

 王族達が次々に自己紹介している中、レン達は黙々と食事をしていた。

「これ美味いなレン!」
「そうだね。久しぶりに豪華な食事をしているよ」
「レン君、私も豪華な食事は久しぶりだわ。あぁ、このお肉、柔らかくて美味しいわ」
「レオスさん、そっちの料理取ってくれませんか? どれも美味しくて、口が止まりませんよ。はぁ、アルビィスも喜んでいるのが伝わってきます」
「レイスお兄ちゃん、料理を取ってあげるのは構わないけど。アルビィスの事と変な動きは伏せてね」
「あっ、すみません。つい、アルビィスの事をレン師匠に伝えたかったので」
〈兄さん、これスゲー美味いぜ。しかも柔らかくて、やみ付きになるよ〉
〈そうだね。これは、一度焼いてから、釜などでゆっくり火を通したのかな? 凄く柔らかくて美味しいよ〉
「俺っち、こんな豪華な食事をしたの初めてです」
〈お前、何で食事で涙を流しているんだ?〉
「テオ、これは美味しさの余りの感動ですよ」

 レン達は完全に国王側の自己紹介など、眼中にないまま黙々と食事を楽しんでいるので、同じ列に座っている先生達が暗い表情を見せていた。

「それではわが国の自己紹介も終わった事だし、次はリズワール王国魔法騎士学園の自己紹介をして貰おうか」

 王国側の自己紹介が終わり、ロータス王子がレン達にバトンを渡していた。

「はい分かりました、ロータス王子。なら、レン・フォワード。君から、自己紹介をしろ。私は先に自己紹介しているからな」

 ベリット先生が行き成りでレンを一番最初に指名したので、何を話せば良いのか、頭の中が混乱していた。
 
「はい、あのう。僕は魔法騎士学園魔法騎士科に所属しているレン・フォワードです。ごく普通の平民です」
「レンの奴、相当緊張しているな。自分でごく普通の平民とか言っているし」
「そうね、でも私達も自己紹介するから、順番が回ってきたら、上手く話せるか不安だわ」
「僕も同じですよ。何を話せば良いのか検討もつきませよ」
「僕はレンお兄ちゃんの弟として見てくれるか不安」

 レンが自己紹介している中、アリス達はコソコソと話して全くレンの自己紹介を聞いていないので、内心ではかなり怒っていた。

 おい、何で僕の自己紹介を聞かないんだよ。僕が困っているのに、少しはフォローしろよ。

 アリス達は自分の自己紹介の事で頭がいっぱいの為、レンに一切フォローはなかった。それから、ファング、アリスといった順番で自己紹介が進んでいたが、リオス、テオの自己紹介がレンに取って一番気掛かりだった。

 リオスとテオは自分の事何て紹介するんだろう? まさかドラゴンです何て言わないよね? 

 国王達の前でドラゴンって言っても、普通は信じてくれなそうと思っていた。

 リオスとテオ、特に緊張している様子がないから、かなり不安だなぁ。

 レンがリオスとテオを心配しながら、見ていると順番が回って来ていた。

「はい、次はリオスの番だよ」
〈うん、分かったよ、レオス。初めて僕はリオスって言います。リズワール王国魔法騎士学園の魔法科に所属して、常に魔法の勉強に励んでいます。僕の隣に座っているのが、僕の弟で一緒に魔法学の勉強をしてます〉
〈はっ、初めまして俺はテオって言います。さっき兄さんが言った通りです‥‥‥〉

 リオスとテオは適当に魔法科に所属していると言っていたが、レン達から見れば強ち間違ってはなかった。

「レン、リオスとテオって何処にも所属してないよな」
「まぁ、そうだけど。魔法学に関してはアリスに引きを取らないから、魔法科に所属しているのは強ち間違ってはないよ」
「確かに、リオスとテオ君の魔法知識は計り知れないわ」

 リオスとテオを心配していたレンだったが、上手く乗り切れていたので、ホッとした様子を見せていた。

〈次はお前の番だぜ。頑張れよ〉

 テオはゼロに向かって、軽く激励を飛ばしていたが、ゼロは何故か俯いていた。

「うん、頑張るよ‥‥‥」
「どうした、自己紹介でも出来ない事情があるのか?」

 ゼロが中々話さないので、フォックス国王が不審そうに見ていた。

〈おい、早く話せよ、国王が不審に見ているぜ〉
「えっ、うん、今話すよ」
〈ゼロ君、大丈夫かな〉
〈ちょっと、不安だな〉

 リオスとテオはゼロを心配していたが、ゼロは意を決したのか、立ち上がり自己紹介を始めていた。

「初めましてと言った方が良いのか、よく分からないけど? 俺っちの名前はゼロ・フォード・ナツです」

 ゼロが名前を言った途端、王国側の人達がざわつき始めていた。

「何と、貴様はレーザの息子かぁ」
「そうですけど、余り父上の事を話さないでくれますか? 父上の名前を聞くだけで、苛つくので!」

 ゼロは父親に深い恨みがあるのか、レーザの名を聞くだけで、表情が一変していた。

「ベリット殿、どのような経緯で彼を助けたのですか?」

 ロータス王子はベリット先生からゼロを救出した経緯を聞きたい様子だった。

「それは私達にもよく分からないんですよ。たまたまカルド洞窟内で倒れていた所を助けただけなので」

 ゼロが何故、カルド洞窟内で倒れていたのか、ベリット先生は分からなかったが、分かる範囲でことの経緯を説明していた。

「成る程、彼は既にレーザから解放された状態でカルド洞窟内で倒れていたんだな。そして彼を助ける過程でドラゴンに変身したので、そこのレン・フォワード殿と契約を交わした事で、ドラゴンの力を制御出来るようになったと言う事で良いのだな?」
「えぇ、だいたいそれで合っていますよ。ロータス王子」

 ベリット先生が説明した事をロータス王子が分かるように、断片的に端折っていたので、ベリット先生が呆気に取られていた。

「それでは、ゼロ・フォード・ナツは今やレン・フォワード殿の物と言っても良いんだな?」
「えぇ、まぁそう言う事になりますかな? そうだろう、レン・フォワード?」

 国王側の質問攻めにあっているベリット先生は、何とか自分に質問が向かわないように、質問の内容を指している本人にバトンを渡していた。

「えっ、何で僕に振るんですか? 確かに、ゼロと契約して今は僕の使いパシりですけど、本当は契約したくなかったんですよ」
「レン様、それはないですよ。しかも俺っちを遠退けようとしないで下さい。俺っちはレン様に助けられて、一生尽くすと誓ったんですから」

 ゼロが色々とレンに対して熱弁するので、今話している趣旨からずれていた。

「ゼロ、今はそんな話は良いから、君から、事情を話してよ」
「はぁ、分かりましたよレン様。本当に都合が悪いと話を変えますね。それじゃあ、何から話しましょうか?」

 ゼロはレンを見て、軽いため息を吐いた後、王国側に色々と経緯を説明していた。

「成る程な、ゼロは用済みとされた後、偶然彼らに発見されたのか」
「そうです。今はこうしてレン様に尽くしています」
「お前、レンの事になると何でそんなに笑顔なんだよ」
「何でってファングと一緒ですよ。レン様のおかげで自由を手にしましたから」
「確かにゼロ君は自由だけど、リオス君とテオ君の玩具にされているわよね」
「アリスさん、リオスとテオの事は言わないで下さい。俺っちは拒否したのに、勝手に弟にされたんですよ」
「はいはい、その話は戻ってからにしてよ。ゼロ、今は国王側の質問に専念して」
「はい、すみませんレン様」

 話がまた脱線し欠けていたので、レンが注意すると、ゼロは再び王国側の質問に丁寧に答えていた。

「話はだいたい分かった。ならゼロ・フォード・ナツに対する罰則は無しで良いのではないか父上?」

 ゼロの話を聞く限り、特に悪い点が見当たらないので、ロータス王子が罰則に関する意見を提言していた。

「確かに、ゼロはレーザに体を乗っ取られて、我々に反旗を上げたに過ぎないからな。他の者も異存はないな」

 フォックス国王が王族達に異議があるか確認すると、一人の男性が意見を述べていた。

「私は異存がありますな。確かに今は、彼らに仕えていますが、いつ裏切るか分かりませんぞ? ここは慎重に考えた方が良いのではフォックス国王陛下」
「ふむ、其方の意見も一理あるな。レン・フォワード殿、一つ聞いて構わないか?」
「えっ、構わないですけど、僕で答えられるのであれば」
「なら、ゼロ・フォード・ナツは君達を裏切る事はあるのか?」

 フォックス国王が素朴な疑問を投げかけて来たので、レンは特に深く考える事なく、さらっと答えていた。

「裏切りはないと思いますよ。ゼロのドラゴン石にはリオスとテオの施術が仕込まれていて、ゼロが裏切れば強制的にドラゴン石に施術した命令が発動するので、そうだよねリオス、テオ?」
〈そうだね、レン君。ゼロ君が裏切れば、ドラゴン石を通して自殺する命令が発動すると思うよ〉
〈ゼロは俺達を絶対に裏切らないから安心しな。俺と兄さんが保証するぜ〉 
「あのう、レン様。リオスとテオに何て恐ろしい命令をしているんですか!」

 ゼロは何も知らなかったみたいで、顔を強張らせながら、必死にレン達を裏切らないと言っていた。

「とまぁ、こんな感じなので、ゼロは絶対に裏切る事はないです」
「レン様、俺っちの話は無視ですか、ドラゴン石に仕込んだ命令解いて下さい。俺っちは絶対に裏切りません」
〈ゼロ君、少し黙ってくれないからな。それにレン君は命令の事知らないし〉
〈そうだぜ。俺と兄さんに預けている以上、俺と兄さんが何しようと文句言えないよな、ゼロ?〉
「うっ、分かりましたよ。君達は鬼ですよ」

 ゼロはうな垂れながらも、国王に向かって大丈夫だと言っていた。

「レン・フォワード殿がこう言っている以上、彼が裏切る事はないみたいだな。ならば彼の罰則は無しで良いか?」
「はい、それならば、特に大丈夫かと」

 男性は納得してない様子だったが、決議の結果、全会一致でゼロの罰則は帳消しになっていた。

「ゼロ・フォード・ナツ殿、其方はレン・フォワード殿に助けられたのだから、助けられた恩を忘れずに自分の罪を償いなさい」
「はい、それは大丈夫です。俺っちは死ぬまでレン様に尽くしますので」

 ゼロが爆弾発言をするので、レンは嫌な表情を浮かべながらゼロに言っていた。

「ゼロ、死ぬまで一緒に居ないからね。と言うか君は何処に住むつもりなの?」

 一緒に居るみたいな発言をしているので、何処で将来生活するのか疑問だった。

「えっ、何処ってレン様の家に住むけど? 俺っちはレン様のドラゴンだから」
「いや、君はドラゴンじゃないし。どう見ても人間だよね?」
「じゃあ、リオスとテオはどうなんですか、レン様?」
「うっ、それは‥‥‥」

 ゼロがリオスとテオを取り上げるので、レンが困った表情を見せていた。

「ゼロ、お前はレンに助けられたんだから、我が儘言うなよ。駄目なら、外で野宿しろ。ドラゴンなら出来るだろう?」
「何でファングが口を挟むんですか?」

 ファングが割り込んで来た為、話がおかしくなり始めていた。

「お前ら、国王陛下の前で何をしているんだ。そう言う話は後にしなさい」
「いや、これは俺っちの将来に関わる事何ですよ」
「そんなの私に言われても知りませんわ、レン・フォワード君、何とかしなさい」
「うっ、分かりました。ゼロ、その話は後でゆっくり決めるから、ここは本来の話に戻そうね」
「分かりました。レン様が言うなら、やめますけど、戻ったら真剣に考えて下さいね」

 レンに新たな悩みがまた出来たので、頭が非常に痛かった。レン達は一通り自己紹介が済むと、食事をしながらベリット先生が本題に入っていた。

「それで、カルド王国は現状どう言った状況にあるんですか? 我々も状況を把握したいので、そちらの情報の提示をお願いしたいんですけど?」

 レン達はカルド王国がどのような状況にあるのか知らないので、ベリット先生はフォックス国王に頼み込んでいた。

「ベリット殿、情報を提供するつもりだったから安心しない。ゲリーゴート将軍、彼らにカルド王国の現状を説明してくれんか?」
「はっ、畏まりました、フォックス国王陛下。ではベリット殿、何から説明をすれば良いかのう?」
「では、カルド王国の軍について説明をお願いしたいんだが」

 ベリット先生は魔道列車の騒動で、カルド王国の騎士達を確認しているので、カルド王国の部隊の現状を知りたかった。

「我が国の部隊ですか‥‥‥実は言いにくいのですが、我が軍の一部がレーザ派に流れているみたいなのです」
「やはり、そうですか?」
「やはりとはどう言う事なのだ、ベリット殿?」

 ベリット先生の一言で王国側の人達がざわつき始めていた。

「実は我々がここに来るまでに、色々と襲撃がありまして、その中にカルド王国の騎士達がいたんです」
「何と、それはまこなのか?」
「はい、魔道列車で移動中にカルド王国の勲章を付けた騎士達がいたので間違いありません」
「何と言う事だ、まさか我が軍の一部が君達を襲撃させるなんて」

 フォックス国王とロータス王子は、ベリット先生の説明を聞いて、憤りを隠せない様子でかなり険しい表情をしていた。

「我々は一応、カルド王国の騎士達を捉えて、ユース村のギルド支部に引き渡しているので、一部の騎士達は無事だと思いますが、魔道列車の件で事情を聞かれているかと?」
「ふむ、そうか、ゲリーゴート将軍、兵士の一部をユース村のギルド支部に行かせて、我々の兵士達の身柄を引き渡す手続きをしなさい」
「はっ、畏まりました。ですが、裏切り者を再び仲間として受け入れるのですか?」
「ゲリーゴート将軍、彼らは金で躍らされたに過ぎない。なので、罪を償わす形で我々に協力して貰うのです。今は少しでも戦力が必要ですからね」 
「畏まりました、ロータス王子。この会議が終わったら早急にユース村に向かわせます」

 フォックス国王、ロータス王子、ゲリーゴート将軍が話していると、一人の男性が立ち上がっていた。

「あのう、フォックス国王陛下。私は次の客人と会う約束があるので、ここで失礼させて頂きたいのですが?」
「うん、エリクソン。貴様、今日客人と会う予定でもあるのか?」

 重要な会議のさなか退出しようとしているので、ゲリーゴート将軍が確認していた。

「ゲリーゴート将軍、私は貴族ですぞ! 他の人と会う約束など山ほどあります」
「ゲリーゴート将軍、宵ではないか。エリクソンよ、客人を待たせるのは良くないから、早く行ってやりなさい」
「はい、フォックス国王陛下の心広い温かさで感謝しますぞ」

 エリクソンは足早に席から立ち上がると、会議の議場を後にしていた。

「彼奴怪しいな?」
「えっ、あれの何処が怪しいの? 僕には普通のやり取りに見えたけど?」
「お前には彼奴の不審な行動が目に入らなかったのか? まぁ良いけど‥‥‥アクト、聞こえるか?」

 エリクソンの行動が気に食わないのか、ファングは何かを考えながら、アクトを呼び出していた。

【ファング、どうかしたのか?】
「アクト、さっきこの議場から出た奴を追ってくれないか? ゼロの自己紹介辺りから不審な行動をしていたから」
【さっきって、ここから出た奴かぁ? 特に変な感じはしなかったけど?】

 アクトはレン達の頭上で見ていたが、特に変わった部分は見当たらなかった。

「良いから、俺の直感が言っているから、彼奴の尾行をしてこい」
「はぁ、アクト。ファングの直感は当たるから、一応見てきてくれない?」

 ファングがまたガミガミ言いそうなので、アクトの会話をこっそり聞いていたレンが命令していた。

【レンが言うなら仕方ないな。ファング、アルトニス達が戻って来たら、お前から説明しろよ】
「あぁ、分かったぜ。すまないなアクト、俺の我が儘に付き合わせて、それとレン、ごめん。また迷惑掛けて」

 アクトは頭を掻きながら、ファングの謝っている姿を見てから、エリクソンの後を追い掛けていった。

「ファング、直感が外れたら、アクトに色々と言われるよ」
「あぁ、分かっているよ、レン。でも俺の見間違えじゃなければ、彼奴は何かあるぜ」
「はぁ、何かあるね。とりあえずアリス達に合図するかぁ」

 レンは手を横に出して指先を動かすと、アリス達はコソコソと話していた。

「また、ファングが勝手にやっているわね」
「そうですね、レン師匠のあのジェスチャーだと、多分ファングがまたアクト達を使って何かしたんじゃないんですか?」
「ファングお兄ちゃん、レンお兄ちゃんに迷惑掛けすぎ、とりあえず周囲に警戒だね」
「そうね。私はクラック先生に状況を伝えるわ」

 アリスは隣に座っているクラック先生に声をかけると小さい声で耳打ちで状況を伝えていた。

「はぁ、また勝手にやったんですか?」
「いや、私じゃなくてファングなんですけど」
「誰でも同じです。まぁ、レン・フォワード君が動いたなら、私達も動く必要がありますね?」
「えっ、動くって何ですか? まさか、変な事を考えてないですよね?」

 突然、クラック先生が立ち上がったので、アリスや遠くで座って見ているレン達が嫌な予感を悟り、なるべく見ないように目線を逸らしていた。

「フォックス国王陛下、少し宜しいでしょうか?」
「うん、クラック殿、どうかされましたか?」

 クラック先生が挙手をしているので、ロータス王子が首を傾げていた。

「実はベリット先生の話の中で、一つ確認したいことがあるんですけど?」
「確認とか、いったい何の事だ?」

 クラック先生の意図が分からない王国側達は、互いを見ながら何を言いたいのか全く分からない表情を見せていた。

「分からないのなら言いますけど、私達が襲われた騎士達を引き抜いた首謀者は誰だかそちら側は把握しているのですか?」

 フォックス国王陛下達の話では、一部がレーザ派に流れていると言っていたので、引き抜いた人物が誰なのかクラック先生は知りたかった。

「実は、その事なんだが、引き抜いた人物が分からないのだよ。気が付いた時には既に敵側の仲間として、ここにはいなかったからな」
「そうですか‥‥‥ならちょうど良かったわ。今、怪しい人物を追尾していますから、そうですよね? レン・フォワード君?」

 ロータス王子の回答を聞いた途端、クラック先生は何故かレンを指名して来たので、レンは何となく察知しながら暗い表情を見せていた。

「クラック先生、僕が何かをしたんですか?」

 レンはクラック先生から漂う、重たい空気から早く逃げたかった。

「レン・フォワード君、惚けないで下さい。お得意の精霊達を使ったのでしょう?」

 クラック先生に見透かされたように、ズバッと当てていたので、レンはファングを睨み付けていた。

「やだなぁ、クラック先生! 僕は精霊を使ってませんよ。ねぇ、ファング?」
「あらそうなの? ならファング・ドレイト君に聞いてみましょう? どうなんですか、ファング・ドレイト君?」

 レンとクラック先生がファングを睨み付けるように見ているので、ファングは額から汗が出るような感覚に襲われていた。

 何か俺、今スゲーやばいんじゃないの? てか、俺に如何しろと言うんだよ。

 レンとクラック先生が真剣な眼差しで睨み付けているので、ファングは今にも死にそうな表情に変わっていた。

 あぁ、これ、どっちを選んでも駄目なパターンだ。アハハハッハ、終わったな。

 レンとクラック先生、どちらかを肯定又は否定しても、結局は自分に跳ね返って来るのは、見え見えだった。

「クラック先生、その‥‥‥レンは精霊を使っていますよ」
「ファング!」

 ファングが正直に言うので、レンはファングの体を叩いていた。

「レン、悪かったから、何回も叩くなよ」
「あら、正直に言ってくれて嬉しいわ、ファング・ドレイト君」
「はぁ、そうですか‥‥‥どの道、否定したらクラック先生は嘘を付いた罰で俺の体を調べそうだから、レンの罰を選んだだけですよ」
「クラック殿、今、そこのレン殿が精霊を使ったと聞こえたのだが?」

 三人のやり取りを遠くで聞いていたロータス王子が、声を掛けながら何か真剣な眼差しでレンの方をジッと見ていた。

「えぇ、彼は精霊使いですから! しかも精霊を四人も従わせていますわよ」

 クラック先生は敢えて、ファングが精霊である事を伏せていた。

「何と、それは素晴らしい。まさか精霊に出逢えるなんて」

 クラック先生が精霊の事を話したので、ロータス王子が目を輝かせていた。

「ロータス王子、精霊とはあの精霊かぁ?」
「えぇ、そうです。我々に恩恵を与えてくれると言う精霊です」
「何と、それが本当なら凄い事ですぞ」

 国王側が何故か、精霊の事で話が盛り上がっているので、レンは険しい表情を見せていた。

 あれっ、これって、精霊を見せろ的な流れになりそう何だけど。これ以上、僕を有名にしないで!

 レンは何かに魘されるように、頭を抱えていると嫌な予感が的中していた。

「レン殿、その精霊を見せてくれませんか? 本当なら、貴方達の話を信用しましょう。フォックス国王陛下、ゲリーゴート将軍達もそれで良いですね?」
「フォフォフォ、やけに信用しているんだなロータスよ」
「えぇ、だって学園長から派遣したんですから、それは凄い人達だと信じています」
「確かに、こんな危険な場所に子供達を寄こす時点でおかしいと思っていたんだ。やはり、最強の学生を寄こしたんだな」

 フォックス国王陛下達はレン達をお膳立てをしていたが、実際はあまり知名度が無く、強いメンバーを派遣したに過ぎなかった。

「レン、何か俺達の事を最強とか言っているけど」

 フォックス国王陛下達の話を聞いて、ファングが小さい声でレンと話していた。

「ファング、それは言わないの? 上級生がいたにも関わらず、僕達を派遣した事がバレたら、学園の信頼が揺らぐよ」
「確かに、この事は伏せておくかな」
「そうして、それと精霊を見せる羽目になるから、アクト達に事情を伝えて」
「あぁ、分かったぜ。一応、全員に言うけど、アクトは引き続き尾行を続けて貰うからな」

 ファングがレンに伝言を伝えると、ファングはレンから少し距離を置いて、普通の仕草をしながらアクト達と通信を取っていた。

「レン・フォワード君、何をしているんですか? 早く精霊を見せてあげなさい」
「はい、分かりました、クラック先生。アクトは今、怪しい人物を尾行中なので、アルトニス、エレント、エレナが代わりに挨拶をします」

 レンはクラック先生に事情を説明してから、精霊三人を呼び出していた。

【レン君、ファングから事情を聞いたよ。アクトが怪しい人物を尾行しているんだってね。何で僕に頼まなかったの?】
【レン様、私を使って欲しかったですわ】
【私もアルトニス、エレントと同じ気持ち】

 アクトだけ美味しい部分を横取りしているので、精霊三人が怒っていた。

「アハハハッハ、それは僕に言われても困るんだけど? たまたまアクトが近くに居たから頼んだだけだよ。ほら、国王陛下達がいるから姿を見せて自己紹介して」

 レンが国王陛下達に自己紹介を促すと、精霊三人は軽くため息をしてから、全体に見えるように姿を晒していた。

【初めまして、水と氷の精霊アクトが別の事で不在なので、僕が代わりに紹介するね。僕の名前はアルトニス。火と炎の精霊だよ。こっちが風の精霊エレント。エレントの隣が土と雷の精霊エレナだよ】
【初めまして、アルトニスが紹介したエレントですわ】
【初めまして、私はエレナだよ】
「おぉ、素晴らしい。まさに本物の精霊です。しかも数体所持何て、レン殿は一体何者何ですか?」
「アハハハッハ、僕はごく普通の平民です」

 ロータス王子は声を荒げていたが、レンは暗い表情で精霊達を見ていた。

「まさしく、精霊じゃな。まさか、私が生きている間に目にする事になるなんて」
「おぉ、これは素晴らしい」
【ねぇ、レン君。この人達大丈夫なの?】
【何か頼りない。王族達ですわね】
【行き先が不安】
「三人とも精霊間の通信を使っても、そう言う事を言わないの! 確かに不安な部分はあるけど‥‥‥」

 国王側が頼りない部分がチラホラあるが、話は追尾している人物の話に入っていた。

「それで、クラック殿。レン殿が尾行している人物とは一体誰なんですか?」
「それはレン・フォワード君に言って貰いましょう。出来ますわね、レン・フォワード君?」
「はぁ、分かりましたよ。追跡している人物は先ほど、この部屋を出たエリクソンですよ」

 レンが言った途端、王国側がざわついていた。

「何とエリクソンが部隊の引き抜きをしているのか?」
「いや、まだ犯人とは断定出来ませんが、僕の精霊を送っているので、もし不審な行動が見つかれば報告が来る予定です」
「何と言う事だ。まさか、身内に犯人がいるなんて」
「父上、まだ犯人と確定はしてませんよ」
「その事で、さっきアクトから報告があって」
「うん、何かあったのかね、レン殿?」

 フォックス国王陛下達が落胆している中、レンは険しい表情で更なる事実を告げられる事で事態は急変するのだった。
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