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第5章 長い夏季休暇中に巻き起こる冒険と新たな事件 第3節 遭難と海に棲む巨大な魔物の討伐
第56話 アリス達の再会とリノワール王国の王子
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遭難者達の反乱騒動から一夜が明け、レンはファングの体から出ていた。
はぁ、やっぱり、海の近くは落ちつくな。
周りは太陽の日差しが降り注ぎ、海の波音が辺り一面に響いていた。
「レン、おはよう、勝手に出るなよ、ちゃんと眠れたか」
ファングは人間の姿に変えて、レンの所に来ていた。
「ファング、凝縮して言わないで、もしかして寝ていたの?」
ファングの体から勝手に出た時、反応がなかったので確認している。
「うん、ちょっとだけね。アクトに言われたからお言葉に甘えたよ」
「そう、アクトに気遣いされたんだね。ごめんね、勝手に出て、確認してから出るべきだったよ」
ファングが慌てた表情をしていたので反省していた。
「良いよ別に、お前が無事なら、だけど出る時は、声をかけるか、俺の体に刺激を与えるかして、俺を一度呼べよ。急に消えると俺は‥‥‥」
「そうだね、今後は気を付けるよ」
ファングはレンの事になると、自分で感情が押さえられないで、かなり危険だとレンは知っていた。
「それよりも遭難者達は大丈夫なの? 何か寝不足気味だけど」
遭難者達を見ると顔色が悪かった。
「さぁなぁ、彼奴らずっと俺の姿を見て怯えているんだぜ」
「人間の姿に戻らなかったんだね、どおりで楽に体から出られた分けだよ。人間の姿なら確か、出られないはずだから」
人間の姿なら、ファングの口から出ることになるので、事実上出ることは不可能だった。
「当たり前だ、その方が抑止力になるだろう?」
「そうだね、ならトイレとかどうしたの? まさか!」
「レンが想像している状態にはしてないから安心しろ」
「そう、ならよかったよ、臭いのが充満したら船に乗せられないから」
遭難者達は一人一人、アクトとアルトニスが付いていき、トイレする中でも、逃げないように見張っていた。
【レン、やっと見つけた】
【エレナ、どうしてここに】
【エレナがいるって事は】
【レン様、あれを!】
「えっ、エレナ、それじゃ‥‥‥あれは」
「レン、あの遠くにある船がそうじゃないか」
ファングと話していると、突然エレナが現れたので驚いていたが、エレントが指す方を見ると、船が見えたので喜んでいた。
「レン君、会いたかったよ!」
「レン師匠!」
「レンお兄ちゃん!」
船が座礁しない位置に止めると、アリス、レオス、レイスが一斉に飛び出して、レン目掛けて抱きしめていた。
「ごめんね、心配かけて」
三人に謝っていた。
「ううん、大丈夫だよ。ファングがしっかり護ったんでしょう」
「当たり前だ、アリス、俺は約束を破らないぜ」
「そうね、破っていたら殺しているわよ」
「相変わらず、恐い事を言うよな」
いつものアリスだったのでファングはホッとしていた。
「アハハッ、でも元気そうでよかったですよ」
「そうね、だけどあんまり栄養取れてないんでしょう? ファング!」
「あぁ、そうだな」
ファングはアリス達に説明していた。
「そう、レン君の魔力がまだ回復してないんだ」
「多分、あんまり栄養が摂れてないんだよ」
「仕方ないわ、ここじゃろくな食事も出来ないでしょう。船の中に行ったら、美味しい料理を食べましょう」
「そうだね、早くまともな食事をしたいよ」
やっと地獄のような食事から解放されるので、胸を撫で下ろしていた。
「レン君、ファング君、無事だったんだね。ところでこの人達は何で縛られているんだ」
自衛団本部のアルベルトが声を掛けていた。
「それは‥‥‥アハハッ」
レンとファングは事情を説明すると、何故かアリス、レオス、レイスが怒っていた。
「へぇ、彼奴らレン君に何て事をしたのかな」
「許せませんね、あの人達」
「マスター、弟に変わって僕が消してあげるよ」
「ちょっとストップ、何でアリス達がキレるの、それにレオスの兄、何で弟と入れ替わっているの?」
三人が今にも殺しそうな目をしていたので、止めていた。
「本当、君たちは仲間に恵まれているね、彼らは自衛団本部に連れて帰ったら何らかの処罰をさせるよ。お前ら、彼奴らを拘束して船に乗せろ」
「はっ、畏まりましたアルベルトさん」
アルベルトが指示をすると、部下達が遭難した仲間を船に乗せる準備を始めていた。
「それにしても立派な船だね、どうしたのこれ?」
レンがアリス達に聞くとレイン王国から船を借りられた事を知って驚いていた。
「へぇ、凄いよ。国の所有している船なんだね」
「そうよ、それに‥‥‥」
「どうしたのアリス?」
アリスが何か言いにくそうな表情をしていたので、顔を傾げていた。
「それが、ごにょごにょごにょごって感じなの」
「えっ、それ本当なの」
アリスに耳打ちされて驚いていた。
「本当よ船に行けば分かるわ」
「レン、アリスから何を言われたんだ」
「大声を出さなければ教えるよ」
「出さないから教えろよ」
「はぁ分かったよ。ごにょごにょごにょだよ」
「えっマジかよ。何で彼奴が船に居るんだよ」
ファングもレンから耳打ちされて驚いていた。
「知らないよ、僕に聞かれても、それ以上アリスが教えてくれないから」
レンとファングは疑問に感じながらも、迎えの船に乗ると、話していた人が現れた。
「やぁ君達がレン・フォワードとファング・ドレッド君だね。私はリノワール王国第二王子のカイト・リノワールだよ。宜しくね」
「はぁ、お初に掛かります」
「何で、俺らの事を知っているんだよ」
「知らないよ、そんなこと」
カイトはアリスの記憶を覗いているので、彼らの名前と顔は把握されていた。
「あのう、僕に何か用でもあるんですか、カイト王子の事は学園で知っていますけど、面識は無いんですけど」
学園ではちらほら見かける程度で、正式に向き合うのはこれが初めてだった。
「えっ、あぁ確かにそうだね。実は二人に相談したいことがあるんだよ。君達が食事などを終えたら、二人だけで私の部屋に来てくれないかな」
「はぁ、分かりました」
「それじゃ、またあとで」
カイトはレンとファングに挨拶すると、部屋の方に歩いて行った。
「俺らに用事ってなんだ?」
「さぁ、知らないよ。アリス達が含んでないのが気になるけど」
二人は疑問に思いながらも、アリス達が待っている食堂に向かっていた。
「レン君、話は終わったの?」
「それが‥‥‥」
レンとファングが食事の席に座ると、アリス達に説明していた。
「そう、カイト王子がそんな事を」
「一体、カイトさんは二人に何の相談をするんでしょうね」
「さぁ、知らないわ。二人だけって事はこの島について聞きたいとかじゃないの? この辺はまだ未開発だから」
「その可能もあるかもね。この辺の開拓をして、リノワール王国のリゾート施設を作ってもおかしくないし」
「あぁ確かにその可能は充分あるな」
カイトの相談ごとを色々考えていると、たくさんの料理がやって来て、レンとファングが目を光らせていた。
「うぁ、やっとまともな食事だよ。頂きます。うーん美味しいよ、僕感激だよ」
「うめー、やっぱり食事はこれじゃないと」
「レン君、ファング、慌てなくても料理はなくらないよ。でも二人が元気そうでよかったわ、すみません料理追加と飲み物を下さい」
二人が勢いよい食べているので、三人はホッとしていた。
「レンお兄ちゃん、これ食べてよ」
「ありがとうレオス、うーん美味しいよ。ごめんね、今まで心配かけて」
「ううん、大丈夫だったよ。アリスお姉さんとレイスお兄ちゃんが付いていたから」
レオスを一人にさせてしまったので謝っていた。
「そうなんだ、ありがとうアリス、レイス」
「そんな事はないよ。レオス君は一人で頑張っていたから、それに寝る時はお兄さんに替わってもらったから大丈夫よ」
「そうなんだ。あのバカ兄がちゃんとねぇ、レオス、変な事はされなかったよね」
レオスの兄と入れ替わっているので、何か問題を起こさなかったか心配していた。
「うん、大丈夫だよ。レンお兄ちゃん」
「レオス、強くなったね。僕がいない間に少し成長したね」
「うん、エヘヘッ」
レンがいない間にレオスが一回り大きくなったので、レンは少し嬉しかった。五人が食事を終えるて窓を見ると船がレイン王国に向けて出発していた。アリス達はレンとファングの部屋に案内していた。
「二人はここの部屋を使ってよ。本当ならファングは私達といるべきだけど、一応レン君の事を考えるとファングを傍に置いた方が良いでしょう?」
「アリス、お前、グフ、何するんだよ」
「勘違いしないでファング、今回は特別だから」
「アハハッ、ありがとうアリス」
アリス、レオス、レイスは部屋に入ると、助けに来るまでの出来事を聞いていた。
「へぇ、意外と大変だったのね」
「僕はモンスターの遭遇があまりなかった事に驚きですよ」
「そうだね、僕もモンスターにあまり遭わなくてよかったよ」
島は広く、多くのモンスターに出くわすと危惧していが、あまり遭わなかったので、レンはよかったと思っていた。
「それよりも、私が気になるのは、ファングよね。もう人間でないよね」
「うるさい、俺だって分かっているんだよ。何でレンはこいつらに教えるんだよ」
レンはアリス達にファングの能力をバラしていた。
「えっ、ファング、あの時、言ったよね」
「うっ、確かに言ったけど」
「なら、良いよねファング」
「分かったよレン」
「なら、レン君、早く見せてよ。ファングのあれを」
「うん、分かったよ。じゃあ扉など、周りを見えないようにしたらやろうか、ファング宜しくね」
「はぁ、分かったよやれば良いんでしょう」
部屋の扉に鍵を掛けたり、窓をカーテンで隠して周りから見えないようにすると、ファングは姿を変えていた。
「うぁ、相変わらず、気持ち悪い体よね、体の中に入ったらグロテスクなんでしょうね」
ファングの姿を見て色々と言っている。
「だから嫌なんだよ。アリスに色々と罵声をするから」
ファングがアリスに対して不快感を示している。
「まぁまぁ、落ち着いてファング」
「ファングさんの体はあの時に見ましたけど、やっぱり凄いですね」
レイスはファングの体を見て、色々と考え込む仕草をしている。
「ファングお兄ちゃん気持ち悪い」
「レオスまで、言うな。お前らを入れて、さっさともとの姿に戻るぜ」
ファングの事を色々と言うので、四人をさっさと黒い触手で包み込むと体内に入れていた。ファングは人間の姿に戻ると、ベッドの上に寝て、四人がいる体内に精神を移動させていた。
「へぇ、ここがファングの体内なのね。本当に気持ち悪いわ」
アリスが周りを見渡して色々と言っている。
「凄いですね、あっちこっちで細胞が動いていますよ」
レイスは活発に動いている細胞を見て驚いている。
「見て、あそこ、さっき食べていた物があるよ」
レオスが指差す方を見ると、ファングが食べた物がまだ消化されずに残っていた。
「うぁ、なんてグロテスク、吐きそうだわ」
「見て下さい、ファングさんが食べた物が黒い液状に包み込まれていますよ」
「あれで、食べ物などを消化して、マナを取り出しているんだわ」
アリス、レオス、レイスはファングの消化器官をマジマジと見せられて気分を悪くしていた。
「お前ら、俺の中で言いたい放題、言いやがって」
「ファング!」
「ファング、やっと来たね」
突如ファングが目の前に現れたので、アリス、レオス、レイスが驚いていた。
「何なのその姿は、かなり気持ち悪いわ」
「俺の中なんだぞ、俺の体の一部で形成しているんだから当たり前だろう。てか何回も気持ち悪い言うな」
「凄い、真っ黒のファングさんだよ」
「ファングお兄ちゃん凄い」
三人は黒いファングをマジマジと見ていた。
「ねぇ、触っても大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だよ。お前らを吸収したりしないから」
「うぁ、気持ち悪いわ、中は液状で変な感じだわ」
「本当ですね、中はスライムみたいですね」
「だけど、何か気持ち良いよ」
「お前ら、言いたい事だけ言って、いつまで俺の体を触るんだ」
アリス、レオス、レイスがずっと黒いファングの体に手を突っ込んでいるので困っていた。
「まぁ、ファングの体は興味深いから仕方ないよ」
「そうね、かなり興味深いはこれで精霊なんだから凄いわね」
「えっ、そうかな」
「褒めてないわよファング」
「酷いアリス」
「アハハッ、それじゃ行こうか、僕が作った秘密基地に」
ファングはうな垂れていたが、レンが秘密基地に案内すると三人は驚いていた。
「凄いわね、ここだけ別空間だわ」
レンに案内されると三人は置いてある家具を確認していた。
「へぇ、立派な木の家具です、レン師匠の説明通りですね」
「これなら、誰かに聞かれずに会議などで使えそうね」
アリスはファングの体内の利便性を考えていた。
「そうでしょう。軽く会議や休むには良いと思うんだよ」
「流石レン君ね。なら今後は私達の快適空間に替えましょう。ここの改装は私に任せなさい」
「お前が改装するのか」
「何か文句あるのファング? ファングはセンスがないから私がやるのよ」
「お前、ここは俺の体なんだぞ、何でアリスに改造されるんだよ」
アリスが新しく作り直すと言ったので、ファングが嫌がっていた。
「レン君、私に一任で良いよね」
「レン、俺だよな」
どっちが改装するか聞いていた。
「アハハッ、アリスに任せるよ。こう言うの得意だから」
「レン、お前は鬼だよ。そんな事をされたら俺の体はボロボロだよ」
「ファング、嘘をつかないの、どう見てもファングの体内は広すぎだよね、一体どのくらいの距離があるのかしら?」
「うっ、さぁなぁ、俺は知らないぜ。そんな目をするなアリス、分かったから、アリスに任せるから」
ファングは嫌がっていたが、結局アリスに指摘されて許可していた。
相変わらずアリスはファングにガツンと言うよね。ファングもアリスに敵わないんだから、素直に従えば良いに。
木で作ったフローリングの床に座って、二人を眺めていた。
「でも本当に、家の中にいるみたいですね。ちゃんと木で作った床もあるし、家具もあるから」
「そうね、だけど、ここから一歩外に出ると、気持ち悪い細胞がうじゃうじゃとあるから、あそこには流石に座れないわね」
木で作ったフローリングは気持ち悪い細胞を隠すために覆っているので、捲ると気持ち悪い細胞がうじゃうじゃと動いている。
「アハハッ、まぁそうだけど、ここなら周りから見られないからゆっくり出来るよね」
「そうね、周りを気にしなければ、普通の家の中だから、過ごしやすいわね」
アリスは周りを見渡しながら、色々と考えていた。
「それにしても、レン君はよく見付けたわね」
「まぁね、最初は自信なかったけど、上手く行ったからよかったよ。これもファングのおかげだよ」
「よせよレン、恥ずかしいだろう」
レンはファングを褒めると恥ずかしい仕草をしていた。
「そんな事はないわファング、この能力があったからレン君を安全に護れたんでしょう」
「あぁ、そうだな。この力がなかったらレンを護り抜けたか分からないぜ」
ファングは自分の体を見つめて、自分の力に感謝していた。
「ねぇ、ファングさん、この机だけ、周りに木で覆ってあるんですけど、これ何ですか」
レイスは無数の目で投影する机を指差していた。
「えっ、それは‥‥‥」
「それは、ファングが見ている映像を投影して見るテーブルだよ」
「へぇ、ファングそんな事も出来るのね。なら、この中に入れば楽に移動出来るかしら」
「お前、レンと同じ事を考えるなよ。自分で歩け」
アリスがレンと同じ事を考えているので、頭を押さえていた。
「これファングさんを投影するんですね。ど言う仕組み何ですか?」
「えっ、それは‥‥‥取り外して見れば分かるよ」
レイスは首を傾げていたが、とりあえず言われた通りに取り外すと、後ろに退いていた。
「うぁ、何ですかこれは」
大量の目がレイスの方を向いていた。
「うぁ、何て生々しい、目なの」
「凄い、気持ち悪い」
アリスとレオスも覗き込むと、大量の目が見ているので若干退いていた。
「アハハッ、最初は驚くよね。僕も驚いたから、だけど凄いんだよ。ちゃんとファングが見ている物が映るから」
「へぇ、そうなんだ。だけどこれもファングの目なんだよね。もしかしてこれも私達を見ることは可能なの?」
「当たり前だアリス。そこにあるのは俺の目なんだから、お前の姿ははっきり分かるぜ」
「へぇ、やっぱり凄いわねファングの能力わ」
三人はファングの能力に驚きつつ、板を戻すと床で寛いでいた。
「それでアリス達はここに来るまでに、あの生物に出くわさなかったの?」
クラーケンに遭遇しなかったか確認していた。
「ここに来るまでに一度も遭わなかったわ。おそらくクラーケンの通りに道から外れているのかしら?」
「さぁなぁ、いずれにしも、出くわさなかったのは奇跡だと俺は思うぜ」
「そうだよね、また船の移動中に現れたら対処するの大変だよ」
「確かに、あの状態だと確実に僕達は不利だから、出くわさなくてよかったよ」
アリス達がここに来るまでに一度もクラーケンに遭わなくてホッとしていた。
「だけどまだ油断出来ないわよ。まずは無事にレイン王国に着く事が大事なんだから、なんせあの生徒会長以前に王子が入るんだから」
「そうだよ、何でリノワール王国の王子がいるの?」
わざわざレン達の助けに、カイト王子が来ているのか疑問だった。
「それがたまたま、レイン王国に遠征で訪ねていて、この船もカイト王子が言って出したみたいなんだよ。どこで話しを聞いたんだろうね」
アリスが二人に説明している。
「そうなんだ、だけど僕とファングに相談って何なんだろうね?」
「さぁなぁ、そんなの分かれば苦労しないよ」
「なら、そろそろ行って来たら、私達は部屋で過ごしているから、終わったら話しを聞かせてよ」
四人はファングの体内から出ると、三人は部屋に戻って行った。レンとファングは疑問に思いながら、カイト王子がいる部屋に向かって歩いているのだった。
はぁ、やっぱり、海の近くは落ちつくな。
周りは太陽の日差しが降り注ぎ、海の波音が辺り一面に響いていた。
「レン、おはよう、勝手に出るなよ、ちゃんと眠れたか」
ファングは人間の姿に変えて、レンの所に来ていた。
「ファング、凝縮して言わないで、もしかして寝ていたの?」
ファングの体から勝手に出た時、反応がなかったので確認している。
「うん、ちょっとだけね。アクトに言われたからお言葉に甘えたよ」
「そう、アクトに気遣いされたんだね。ごめんね、勝手に出て、確認してから出るべきだったよ」
ファングが慌てた表情をしていたので反省していた。
「良いよ別に、お前が無事なら、だけど出る時は、声をかけるか、俺の体に刺激を与えるかして、俺を一度呼べよ。急に消えると俺は‥‥‥」
「そうだね、今後は気を付けるよ」
ファングはレンの事になると、自分で感情が押さえられないで、かなり危険だとレンは知っていた。
「それよりも遭難者達は大丈夫なの? 何か寝不足気味だけど」
遭難者達を見ると顔色が悪かった。
「さぁなぁ、彼奴らずっと俺の姿を見て怯えているんだぜ」
「人間の姿に戻らなかったんだね、どおりで楽に体から出られた分けだよ。人間の姿なら確か、出られないはずだから」
人間の姿なら、ファングの口から出ることになるので、事実上出ることは不可能だった。
「当たり前だ、その方が抑止力になるだろう?」
「そうだね、ならトイレとかどうしたの? まさか!」
「レンが想像している状態にはしてないから安心しろ」
「そう、ならよかったよ、臭いのが充満したら船に乗せられないから」
遭難者達は一人一人、アクトとアルトニスが付いていき、トイレする中でも、逃げないように見張っていた。
【レン、やっと見つけた】
【エレナ、どうしてここに】
【エレナがいるって事は】
【レン様、あれを!】
「えっ、エレナ、それじゃ‥‥‥あれは」
「レン、あの遠くにある船がそうじゃないか」
ファングと話していると、突然エレナが現れたので驚いていたが、エレントが指す方を見ると、船が見えたので喜んでいた。
「レン君、会いたかったよ!」
「レン師匠!」
「レンお兄ちゃん!」
船が座礁しない位置に止めると、アリス、レオス、レイスが一斉に飛び出して、レン目掛けて抱きしめていた。
「ごめんね、心配かけて」
三人に謝っていた。
「ううん、大丈夫だよ。ファングがしっかり護ったんでしょう」
「当たり前だ、アリス、俺は約束を破らないぜ」
「そうね、破っていたら殺しているわよ」
「相変わらず、恐い事を言うよな」
いつものアリスだったのでファングはホッとしていた。
「アハハッ、でも元気そうでよかったですよ」
「そうね、だけどあんまり栄養取れてないんでしょう? ファング!」
「あぁ、そうだな」
ファングはアリス達に説明していた。
「そう、レン君の魔力がまだ回復してないんだ」
「多分、あんまり栄養が摂れてないんだよ」
「仕方ないわ、ここじゃろくな食事も出来ないでしょう。船の中に行ったら、美味しい料理を食べましょう」
「そうだね、早くまともな食事をしたいよ」
やっと地獄のような食事から解放されるので、胸を撫で下ろしていた。
「レン君、ファング君、無事だったんだね。ところでこの人達は何で縛られているんだ」
自衛団本部のアルベルトが声を掛けていた。
「それは‥‥‥アハハッ」
レンとファングは事情を説明すると、何故かアリス、レオス、レイスが怒っていた。
「へぇ、彼奴らレン君に何て事をしたのかな」
「許せませんね、あの人達」
「マスター、弟に変わって僕が消してあげるよ」
「ちょっとストップ、何でアリス達がキレるの、それにレオスの兄、何で弟と入れ替わっているの?」
三人が今にも殺しそうな目をしていたので、止めていた。
「本当、君たちは仲間に恵まれているね、彼らは自衛団本部に連れて帰ったら何らかの処罰をさせるよ。お前ら、彼奴らを拘束して船に乗せろ」
「はっ、畏まりましたアルベルトさん」
アルベルトが指示をすると、部下達が遭難した仲間を船に乗せる準備を始めていた。
「それにしても立派な船だね、どうしたのこれ?」
レンがアリス達に聞くとレイン王国から船を借りられた事を知って驚いていた。
「へぇ、凄いよ。国の所有している船なんだね」
「そうよ、それに‥‥‥」
「どうしたのアリス?」
アリスが何か言いにくそうな表情をしていたので、顔を傾げていた。
「それが、ごにょごにょごにょごって感じなの」
「えっ、それ本当なの」
アリスに耳打ちされて驚いていた。
「本当よ船に行けば分かるわ」
「レン、アリスから何を言われたんだ」
「大声を出さなければ教えるよ」
「出さないから教えろよ」
「はぁ分かったよ。ごにょごにょごにょだよ」
「えっマジかよ。何で彼奴が船に居るんだよ」
ファングもレンから耳打ちされて驚いていた。
「知らないよ、僕に聞かれても、それ以上アリスが教えてくれないから」
レンとファングは疑問に感じながらも、迎えの船に乗ると、話していた人が現れた。
「やぁ君達がレン・フォワードとファング・ドレッド君だね。私はリノワール王国第二王子のカイト・リノワールだよ。宜しくね」
「はぁ、お初に掛かります」
「何で、俺らの事を知っているんだよ」
「知らないよ、そんなこと」
カイトはアリスの記憶を覗いているので、彼らの名前と顔は把握されていた。
「あのう、僕に何か用でもあるんですか、カイト王子の事は学園で知っていますけど、面識は無いんですけど」
学園ではちらほら見かける程度で、正式に向き合うのはこれが初めてだった。
「えっ、あぁ確かにそうだね。実は二人に相談したいことがあるんだよ。君達が食事などを終えたら、二人だけで私の部屋に来てくれないかな」
「はぁ、分かりました」
「それじゃ、またあとで」
カイトはレンとファングに挨拶すると、部屋の方に歩いて行った。
「俺らに用事ってなんだ?」
「さぁ、知らないよ。アリス達が含んでないのが気になるけど」
二人は疑問に思いながらも、アリス達が待っている食堂に向かっていた。
「レン君、話は終わったの?」
「それが‥‥‥」
レンとファングが食事の席に座ると、アリス達に説明していた。
「そう、カイト王子がそんな事を」
「一体、カイトさんは二人に何の相談をするんでしょうね」
「さぁ、知らないわ。二人だけって事はこの島について聞きたいとかじゃないの? この辺はまだ未開発だから」
「その可能もあるかもね。この辺の開拓をして、リノワール王国のリゾート施設を作ってもおかしくないし」
「あぁ確かにその可能は充分あるな」
カイトの相談ごとを色々考えていると、たくさんの料理がやって来て、レンとファングが目を光らせていた。
「うぁ、やっとまともな食事だよ。頂きます。うーん美味しいよ、僕感激だよ」
「うめー、やっぱり食事はこれじゃないと」
「レン君、ファング、慌てなくても料理はなくらないよ。でも二人が元気そうでよかったわ、すみません料理追加と飲み物を下さい」
二人が勢いよい食べているので、三人はホッとしていた。
「レンお兄ちゃん、これ食べてよ」
「ありがとうレオス、うーん美味しいよ。ごめんね、今まで心配かけて」
「ううん、大丈夫だったよ。アリスお姉さんとレイスお兄ちゃんが付いていたから」
レオスを一人にさせてしまったので謝っていた。
「そうなんだ、ありがとうアリス、レイス」
「そんな事はないよ。レオス君は一人で頑張っていたから、それに寝る時はお兄さんに替わってもらったから大丈夫よ」
「そうなんだ。あのバカ兄がちゃんとねぇ、レオス、変な事はされなかったよね」
レオスの兄と入れ替わっているので、何か問題を起こさなかったか心配していた。
「うん、大丈夫だよ。レンお兄ちゃん」
「レオス、強くなったね。僕がいない間に少し成長したね」
「うん、エヘヘッ」
レンがいない間にレオスが一回り大きくなったので、レンは少し嬉しかった。五人が食事を終えるて窓を見ると船がレイン王国に向けて出発していた。アリス達はレンとファングの部屋に案内していた。
「二人はここの部屋を使ってよ。本当ならファングは私達といるべきだけど、一応レン君の事を考えるとファングを傍に置いた方が良いでしょう?」
「アリス、お前、グフ、何するんだよ」
「勘違いしないでファング、今回は特別だから」
「アハハッ、ありがとうアリス」
アリス、レオス、レイスは部屋に入ると、助けに来るまでの出来事を聞いていた。
「へぇ、意外と大変だったのね」
「僕はモンスターの遭遇があまりなかった事に驚きですよ」
「そうだね、僕もモンスターにあまり遭わなくてよかったよ」
島は広く、多くのモンスターに出くわすと危惧していが、あまり遭わなかったので、レンはよかったと思っていた。
「それよりも、私が気になるのは、ファングよね。もう人間でないよね」
「うるさい、俺だって分かっているんだよ。何でレンはこいつらに教えるんだよ」
レンはアリス達にファングの能力をバラしていた。
「えっ、ファング、あの時、言ったよね」
「うっ、確かに言ったけど」
「なら、良いよねファング」
「分かったよレン」
「なら、レン君、早く見せてよ。ファングのあれを」
「うん、分かったよ。じゃあ扉など、周りを見えないようにしたらやろうか、ファング宜しくね」
「はぁ、分かったよやれば良いんでしょう」
部屋の扉に鍵を掛けたり、窓をカーテンで隠して周りから見えないようにすると、ファングは姿を変えていた。
「うぁ、相変わらず、気持ち悪い体よね、体の中に入ったらグロテスクなんでしょうね」
ファングの姿を見て色々と言っている。
「だから嫌なんだよ。アリスに色々と罵声をするから」
ファングがアリスに対して不快感を示している。
「まぁまぁ、落ち着いてファング」
「ファングさんの体はあの時に見ましたけど、やっぱり凄いですね」
レイスはファングの体を見て、色々と考え込む仕草をしている。
「ファングお兄ちゃん気持ち悪い」
「レオスまで、言うな。お前らを入れて、さっさともとの姿に戻るぜ」
ファングの事を色々と言うので、四人をさっさと黒い触手で包み込むと体内に入れていた。ファングは人間の姿に戻ると、ベッドの上に寝て、四人がいる体内に精神を移動させていた。
「へぇ、ここがファングの体内なのね。本当に気持ち悪いわ」
アリスが周りを見渡して色々と言っている。
「凄いですね、あっちこっちで細胞が動いていますよ」
レイスは活発に動いている細胞を見て驚いている。
「見て、あそこ、さっき食べていた物があるよ」
レオスが指差す方を見ると、ファングが食べた物がまだ消化されずに残っていた。
「うぁ、なんてグロテスク、吐きそうだわ」
「見て下さい、ファングさんが食べた物が黒い液状に包み込まれていますよ」
「あれで、食べ物などを消化して、マナを取り出しているんだわ」
アリス、レオス、レイスはファングの消化器官をマジマジと見せられて気分を悪くしていた。
「お前ら、俺の中で言いたい放題、言いやがって」
「ファング!」
「ファング、やっと来たね」
突如ファングが目の前に現れたので、アリス、レオス、レイスが驚いていた。
「何なのその姿は、かなり気持ち悪いわ」
「俺の中なんだぞ、俺の体の一部で形成しているんだから当たり前だろう。てか何回も気持ち悪い言うな」
「凄い、真っ黒のファングさんだよ」
「ファングお兄ちゃん凄い」
三人は黒いファングをマジマジと見ていた。
「ねぇ、触っても大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だよ。お前らを吸収したりしないから」
「うぁ、気持ち悪いわ、中は液状で変な感じだわ」
「本当ですね、中はスライムみたいですね」
「だけど、何か気持ち良いよ」
「お前ら、言いたい事だけ言って、いつまで俺の体を触るんだ」
アリス、レオス、レイスがずっと黒いファングの体に手を突っ込んでいるので困っていた。
「まぁ、ファングの体は興味深いから仕方ないよ」
「そうね、かなり興味深いはこれで精霊なんだから凄いわね」
「えっ、そうかな」
「褒めてないわよファング」
「酷いアリス」
「アハハッ、それじゃ行こうか、僕が作った秘密基地に」
ファングはうな垂れていたが、レンが秘密基地に案内すると三人は驚いていた。
「凄いわね、ここだけ別空間だわ」
レンに案内されると三人は置いてある家具を確認していた。
「へぇ、立派な木の家具です、レン師匠の説明通りですね」
「これなら、誰かに聞かれずに会議などで使えそうね」
アリスはファングの体内の利便性を考えていた。
「そうでしょう。軽く会議や休むには良いと思うんだよ」
「流石レン君ね。なら今後は私達の快適空間に替えましょう。ここの改装は私に任せなさい」
「お前が改装するのか」
「何か文句あるのファング? ファングはセンスがないから私がやるのよ」
「お前、ここは俺の体なんだぞ、何でアリスに改造されるんだよ」
アリスが新しく作り直すと言ったので、ファングが嫌がっていた。
「レン君、私に一任で良いよね」
「レン、俺だよな」
どっちが改装するか聞いていた。
「アハハッ、アリスに任せるよ。こう言うの得意だから」
「レン、お前は鬼だよ。そんな事をされたら俺の体はボロボロだよ」
「ファング、嘘をつかないの、どう見てもファングの体内は広すぎだよね、一体どのくらいの距離があるのかしら?」
「うっ、さぁなぁ、俺は知らないぜ。そんな目をするなアリス、分かったから、アリスに任せるから」
ファングは嫌がっていたが、結局アリスに指摘されて許可していた。
相変わらずアリスはファングにガツンと言うよね。ファングもアリスに敵わないんだから、素直に従えば良いに。
木で作ったフローリングの床に座って、二人を眺めていた。
「でも本当に、家の中にいるみたいですね。ちゃんと木で作った床もあるし、家具もあるから」
「そうね、だけど、ここから一歩外に出ると、気持ち悪い細胞がうじゃうじゃとあるから、あそこには流石に座れないわね」
木で作ったフローリングは気持ち悪い細胞を隠すために覆っているので、捲ると気持ち悪い細胞がうじゃうじゃと動いている。
「アハハッ、まぁそうだけど、ここなら周りから見られないからゆっくり出来るよね」
「そうね、周りを気にしなければ、普通の家の中だから、過ごしやすいわね」
アリスは周りを見渡しながら、色々と考えていた。
「それにしても、レン君はよく見付けたわね」
「まぁね、最初は自信なかったけど、上手く行ったからよかったよ。これもファングのおかげだよ」
「よせよレン、恥ずかしいだろう」
レンはファングを褒めると恥ずかしい仕草をしていた。
「そんな事はないわファング、この能力があったからレン君を安全に護れたんでしょう」
「あぁ、そうだな。この力がなかったらレンを護り抜けたか分からないぜ」
ファングは自分の体を見つめて、自分の力に感謝していた。
「ねぇ、ファングさん、この机だけ、周りに木で覆ってあるんですけど、これ何ですか」
レイスは無数の目で投影する机を指差していた。
「えっ、それは‥‥‥」
「それは、ファングが見ている映像を投影して見るテーブルだよ」
「へぇ、ファングそんな事も出来るのね。なら、この中に入れば楽に移動出来るかしら」
「お前、レンと同じ事を考えるなよ。自分で歩け」
アリスがレンと同じ事を考えているので、頭を押さえていた。
「これファングさんを投影するんですね。ど言う仕組み何ですか?」
「えっ、それは‥‥‥取り外して見れば分かるよ」
レイスは首を傾げていたが、とりあえず言われた通りに取り外すと、後ろに退いていた。
「うぁ、何ですかこれは」
大量の目がレイスの方を向いていた。
「うぁ、何て生々しい、目なの」
「凄い、気持ち悪い」
アリスとレオスも覗き込むと、大量の目が見ているので若干退いていた。
「アハハッ、最初は驚くよね。僕も驚いたから、だけど凄いんだよ。ちゃんとファングが見ている物が映るから」
「へぇ、そうなんだ。だけどこれもファングの目なんだよね。もしかしてこれも私達を見ることは可能なの?」
「当たり前だアリス。そこにあるのは俺の目なんだから、お前の姿ははっきり分かるぜ」
「へぇ、やっぱり凄いわねファングの能力わ」
三人はファングの能力に驚きつつ、板を戻すと床で寛いでいた。
「それでアリス達はここに来るまでに、あの生物に出くわさなかったの?」
クラーケンに遭遇しなかったか確認していた。
「ここに来るまでに一度も遭わなかったわ。おそらくクラーケンの通りに道から外れているのかしら?」
「さぁなぁ、いずれにしも、出くわさなかったのは奇跡だと俺は思うぜ」
「そうだよね、また船の移動中に現れたら対処するの大変だよ」
「確かに、あの状態だと確実に僕達は不利だから、出くわさなくてよかったよ」
アリス達がここに来るまでに一度もクラーケンに遭わなくてホッとしていた。
「だけどまだ油断出来ないわよ。まずは無事にレイン王国に着く事が大事なんだから、なんせあの生徒会長以前に王子が入るんだから」
「そうだよ、何でリノワール王国の王子がいるの?」
わざわざレン達の助けに、カイト王子が来ているのか疑問だった。
「それがたまたま、レイン王国に遠征で訪ねていて、この船もカイト王子が言って出したみたいなんだよ。どこで話しを聞いたんだろうね」
アリスが二人に説明している。
「そうなんだ、だけど僕とファングに相談って何なんだろうね?」
「さぁなぁ、そんなの分かれば苦労しないよ」
「なら、そろそろ行って来たら、私達は部屋で過ごしているから、終わったら話しを聞かせてよ」
四人はファングの体内から出ると、三人は部屋に戻って行った。レンとファングは疑問に思いながら、カイト王子がいる部屋に向かって歩いているのだった。
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