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第二章 幼少期~領地編
50.南東の森の調査
しおりを挟むお爺様への報告を終えて部屋に戻ってきた私は、現在、特大クッションの上で、ルカのお腹に抱き着いて癒されているところだ。モフモフに頬ずりして堪能している。
今日一日の出来事は、いくら前世が大人でも精神的にきつかったし、肉体的には身体強化が使えても、本来の五歳児の身体にはかなり堪えたようで、部屋に戻ってきたら力が抜けて座り込んでしまった。
先生が一緒に部屋に入ってきたので、へたり込んだ私を抱っこしたままソファーに座った。
これには驚いて、アワアワして手を振り回してしまう。
先生にポンポンと背中をたたかれて落ち着いたところで、明日の調査をどうやろうか考えだした。
(明日やることは、まずは温泉の試掘調査でしょ? でも、試掘したら入りたくなるから、これは午後にしよう。そうすると、朝一番は森の調査をすることになるなぁ。エルフの痕跡と魔素の調査をどうやるかだね…?)
(……そうだっ!)
「ねえ、ルカ。ルカは魔素の濃いところってわかるの?」
自分専用のクッションで、でろーんと寝そべっているルカに聞いてみる。
《ウニュ? ニャニ? ……マソ?》
「うん。ルカは、魔素の濃いところがわかるのかなって聞いたの。どう?」
《ンー? ワカリュヨ?》
「わぁ~! ルカ、すごいねー! じゃあさ、なんで南東の森が魔素が濃いかもわかるかなぁ?」
《ンー……。アニョニェ、ニシニョモリニイッテミナシャイッテッ!》
「えーっと…。聞いたの…?」
《ウン。ママニチイタ!》
ルカは、誇らしそうに嬉しそうに答えた。今回はシルトさんじゃなくてお母さんでしたか…。たまに聖界とお話ししているふうではあったけれど、ルカの口からお母さんの話がでたのは初めてかもしれない。早くに離れてしまったので心配だったが、母子仲は良いようで安心した。
でも、良いヒントを貰った。これで森の魔素濃度が高い原因がわかるかもしれない。
それと、エルフか…。
「ねぇ、ルカ。ルカは、エルフとか獣人族とかの種族は、見た目以外で何か違いを感じるの?」
《ンー…。ニオイガチガウ…》
「えっ? におい?」
《ン!》
「それって、魔素濃度の高い中でもたどれる?」
《ウン。タブンデキリュ!》
ルカはまだまだ子虎なのに、いろいろ能力が凄いと思う。聖獣の特性なんだろうか…。
思わぬところで、二つの手掛かりにたどり着けそうな情報を得た。
明日は、ルカも一緒に行ってもらうことになった。
明日の行動の目処がついてホッとしたところで、先生は、寝そべっているルカの横に私をおろして、お茶を淹れてくれている。冒頭のモフモフ癒しタイムはココ!
先生は、意外に手慣れていてすぐにお茶がはいった。
(あら、意外とおいしい…。先生の淹れたお茶、初めて飲んだぁ。はぁ~…。癒される…)
話をするでもなく、ただお茶を飲み、まったりとした時間を過ごす。そうして、ゆっくりと心と身体と頭をほぐしていった。
お茶を一杯飲んで、先生は部屋に戻った。
その後、お風呂に入ってルカをモフモフしている間に、いつの間にか寝てしまっていた。
翌早朝、スッキリとした目覚め。昨夜の癒しの時間のおかげだろうか?
今日も冒険者の装備で部屋を出る。
ルカは一緒に行くから嬉しいんだろう。尻尾をユサユサ振って歩いている。
レオンが寂しそうだが、南東の森には連れて行くことはできない。まだレオンの実力では、一人であの森の魔獣を倒すことは無理だろう。私や先生がいれば、かすり傷くらいで行ってこられるだろうが、一人で倒せるレベルにならなければ、連れて行くつもりはないんだ。
先生とルカと一緒に、南東の森の中で、フォルツに一番近い森の端に飛んだ。
昨日よりも、結界も気配遮断も強化してかけた。これからエルフの痕跡を探すんだ。用心するに越したことはない。ルカにはエルフのにおいを探してもらう。
今朝、先生に、森に着いたら念話で話すように言われている。
(ルカ。エルフのにおいを探してくれる?)
《ン。ワカッタ!》
森の中に、私達の他に人の気配やにおいがするかどうか? もしかしたら、フォルツの冒険者が今日森に入っているかもしれない。その中で、エルフのにおいだけを辿ることができるだろうか?
私も気配はある程度探せるし、ましてやリヒト先生がいる。
二人とも<気配察知>で調べたが、人の気配は感じられなかった。近くには誰もいないようだ。
今回は、<探索>もそうだが、魔力を遠くに伸ばすことはしない。相手がエルフの追手だから、逆に私達の魔力を覚えられて辿られる危険性があるんだ。
相手は、追手に選ばれるだけの実力があるはずだ。お婆様やユーリさんに危険が及ぶ可能性は、たとえ僅かでも排除したいと思っている。
でも、追手の魔力量が普通のエルフより多いなら、気配を消して森に溶け込むとかしてそうなんだ。私達が調べていることがわかったら、尚更やるだろう。
だから、ルカの能力に期待してしまう。
フンフン。フンフンフン。
ルカがにおいを探している。
エルフ特有のにおいってどんなにおいなんだろうか?
においがわかったら嗅ぎたいか考えて、嗅ぎたいとは思わないから、自分はわからなくていいという結論に達した。
今後も、においの分野はルカに任せよう。
ルカは、人の住む場所にいるときには嗅覚の能力をかなり絞っているらしい。獣人族はみんな嗅覚が鋭いから、それで苦労することも多いと聞いたことがある。ルカの嗅覚は獣人族の比ではないようだから、能力を絞らないと暮らせないだろうね。
今、ルカはその嗅覚の能力を開放している。
《ミチュケタ……》
(ルカ。辿れる?)
《ン。ツイチェキチェ?》
ルカは、気配を完全に消して歩いている。ルカの進む先の草木が音もなく分かたれ道ができる。聖獣の能力を一部開放しているからだろう。前を進むルカの存在感が全く感じられなくて、少し不安を覚えたが、その後ろを先生と二人ついていった。
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