異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎

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第一章 幼少期

19.魔力測定(二)

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 私は、五歳の誕生日の朝、ステータスの隠蔽を行った。
 魔力測定で私のステータスを隠蔽することは、王様も了承済みなんだ。
 今回は、普段かけている、ただ隠すだけの隠蔽ではなくて、水晶球でも読み取れないように“偽装”をかけた。

 朝食の後、両親と教会に向かう。今日はルカはお留守番だ。
 前後左右を騎士団の騎馬に護衛され、馬車は大通りを街の中心に向かって進んでいる。
 すごっ…。今度こそ、私は窓に張り付いて覗いている。お城へ向かう以外は初めての光景に、興味が尽きない。石畳の道に石と木の街並み、人族やいろいろな種族の獣人が歩いている。ほわぁ~!モフモフだぁ~♪
 でも、あんまり窓にベッタリはり付いていたら、お母様に笑顔で注意されてしまった。

 因みに、我が家は、お父様もお母様も兄様達も、みんな笑顔が黒いな~って思うときがある。
 私も、貴族家に生まれたから、会得しないといけない技なんだけど……無理っぽいなぁ。
 一応、練習しとかないとだね。
 黒い笑顔。黒い笑顔っと……変顔になった…できない。
 その様子をお父様が見ていて、こっそり悶えていたことに、幸せなことに気づかなかった。

 王都は、幾重かの城壁に囲まれており東西南に門がある。北には広大な湖を背にして王城があり、城から南門までと東西の門をつなぐように、十字に大通りが走っている。
 南北の大通りは、片側を馬車が二台通れる幅があり、道の両側には街路樹が植えられ、広い歩道も整備されている。
 城から順に貴族街、商人街、庶民街、職人街、農地がある。
 貴族街と商人街は城壁で区別されており、騎士団の警備門がある。貴族街に入るには、警備門の検問を受けて通らなければならない。職人街と農地の間にも城壁はある。こちらも警備門はあるが検問はしない。
 大通りの交差する場所に、サッカー場ほどの大きさの広場がある。その周りには、ギルド本部の冒険者・商人・生産の各部門の巨大な建物があり、その対面に大聖堂がある。

 広場では市場が開かれ、様々な露店が出ているようだ。
 教会の馬車泊まりで馬車を降りた時、いろんな食べ物の匂いや香辛料の香りが混ざり合い、来たことがない場所にいることを改めて感じた。
 広場の対面にギルドの看板を見つけた時には、中二的な興奮でワクワクして、いつか、あそこで登録をするんだと密かに決意もした。
 両親と一緒なので、あまりキョロキョロするわけにもいかず、今度はゆっくり来てみたいと思った。

 教会の大きな扉を開くと、先触れが出ていたためか、大司教が待っていた。優しそうなお爺さんだ。セバスが用件を伝え挨拶している。

 「ようこそ、いらっしゃいました。今日は、宰相様のお子様の魔力測定ですね」
 「はい。カネッティ侯爵家の第四子でいらっしゃいますアルフォンス様の魔力測定に伺いました。宜しくお願いいたします」
 「はい。畏まりました。それでは、皆様こちらへお越しください」

 大司教のお爺さんは、自ら先導して魔力測定の部屋に案内してくれた。
 セバスと護衛は、部屋の外にいてもらう。

 小さめの部屋の扉を開くと、正面の祭壇に創造神シャッフェンの彫像があり、天井近くの明り取りの窓からは、柔らかい日の光が差し込んでいる。
 両親は扉近くの椅子に座って待っている。私は彫像の前に跪き、大司教から祝福の御言葉をいただく。
 それから、祭壇の前にある水晶球に手を載せると、眩い光に包まれた。
 光が消えると……神様はいなかった…。
 残念!!!ラノベ愛読者としては、白い部屋をすっごーく期待しちゃったよ。

 どういう仕組みなのか、水晶球が載っている読み取り機の魔道具から、個人カードがぺって感じで吐き出された。
 この魔道具、解析してみたい…。思わずじーっっと見つめてしまった。

 これで国民登録が終わったね。読み取ると自動で内務省にデータが流れるらしい。どうなっているんだろう。ホントに解析してみたいよ。
 こうして、晴れて身分証明書を手に入れた。当たり前だけれど、なんか嬉しい♪
 個人カードには、名前・家・住所・誕生日・魔力量・属性等の基本情報が書き込まれる。
 魔力量、属性等は、普段は非表示にもできるんだ。両親に見せたら早速非表示にしよう。

 私がニマニマしていると、読み取り機の情報表示を見て、驚いたまま停止していた大司教が動き出した。

 「なんと!素晴らしい!!大変な逸材ですぞ!!!早急に本部に連絡せねば!!!!」

 (えっ?えっ?えーーーーっ?)

 なにかマズったかな?かなりの項目を隠して、数値も下げたんだけど…。
 ヤバッ、ヤバッ、ヤバい???
 私がオロオロしていると、お父様が大司教の肩をしっかりと掴んで、こっそり“お話”しだした。
 そう!“おはなし”!!
 大司教は、「あー。うー。しかし……。んー」とか言って悩んでいたが……終わったようだ。
 お父様とお母様の冷気漂う黒い笑顔には勝てなかったらしい。
 うえーっ。屋敷に帰ってからが怖いよぉ……。
 そうして、セバスがお布施を払っている間に、お母様にガシっと手をつかまれて馬車に乗せられた。
 
 馬車に乗ってから、お父様は、なんとシルトさんに内務省に送られた私の個人データの改ざんを依頼したんだ。
 私がこんなかな?って決めたステータスでも、とんでもない騒ぎになる内容だったらしい。
 あーっ、……うん。兄様達のステータスを参考にするの忘れてたわ…。
 お父様が、もっと数値を引き下げて、項目を削ってと指示していた。
 シルトさん、面倒かけます。
 大司教のお爺さん、自分の身が可愛かったら黙っていてね。
 ごめんなさい。私の認識が甘かったんだね。

 後で、自分のステータスの偽装も手直ししとかなくっちゃ。
 誰かが見ちゃって騒ぎになって、自由に動けなくなるのは勘弁してほしいもんね。
 
 帰りの馬車では、お母様の笑顔の説教が待っていた。
 屋敷に着くまで生きた心地がしなかった……。




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