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第一章 幼少期
10.のう、越後屋…
しおりを挟むあの後は大変だった。(遠い目…)
「大丈夫かい?フリードリッヒ。護衛と一緒にお母様の部屋に行っていなさい。
マリア頼んだよ」
「はい。畏まりました。さぁ、殿下、王妃様のところへ参りましょう」
「テオドール、四名つけろ!」
「お前達、落ち着いて話を聞きたいから執務室へ行くぞ」
「護衛が離れた理由を確認しろ!」
「はっ!」
王様と総団長さんが指示を出している。
「シルト、魔法陣の残滓は?」
「ある? 描いた人物は読み取れるかい?」
「うん…。そうか…」
お父様が、かm…玄武のシルト様から話を聞いている。
それから、シルト様には帰ってもらって、私達は王様の執務室に場所を移した。
魔獣が城の中に出現したこと。そして王子が襲われたこと。
これは、魔獣の出現場所に魔法陣の残滓が確認されたため、誰かが意図的に王子を狙った犯行だと思われた。
あの、魔力が膨れ上がるのを感じた瞬間に、即座にお父様がシルト様を召喚してくれたから助かったが、間に合わなかったらどうなっていたかと思うと、改めて身体が震えてしまう。
お茶を入れてもらいカップを両手で包んでいると、やっと少し落ち着くことができた。
順を追って確認するうちに、あの時侍女が呼びにきて、両親が待っているからと言ったが、実際は両親は呼んでいなかったことがわかった。
「ディルク、その侍女を探せ!」
「はっ!」
「この一週間に登城した者で、召喚の魔法陣が描ける者をチェックしろ!」
「はっ!」
総団長さんから騎士に次々指示が飛ぶ。
それらが終わると、執務室は人払いがなされた。
王様がお父様に囁いた。
「お前の『目』はどう言っている?」
「ツヴァイが行方を追ってみたようだが…。西の塀際で侍女の死体を発見したそうだ。絞殺のようだ。証拠は残っていなかった」
「そうか…」
「魔法陣の方は?」
「シルトによると、魔法陣はごく一般的なもので魔力の特質性もないそうだ」
「これで、手掛かりが途絶えたか……」
「クソッ!」
総団長さんが悔しそうにソファーのひじ掛けを叩いた。
この後、お母様と私達は先に帰されたが、お父様はその日は帰ってこなかった。
◇◇◇◇◇
―王の執務室―
みんなを帰した後には、王とゲルハルト、ハインリッヒの三人がいた。
「ハンナ達には護衛はつけたか?」
「六名つけたし、屋敷からもパウロが迎えにきた」
「おぅ、パウロがいれば大丈夫だな」
「しかし、どう思う?」
「臭うよな…」
「西の砦に向かう途中で、ちょっときな臭いから帰ってきたんだが…」
「シュモルケか?」
「ああ。関所を越えてくる人数がこの二週間で急増した」
「こっちもおかしな数字があるな」
「外務省の数字か?」
「ああ。それと、シュモルケ向けの塩や麦などの輸出量の急増。鉄の価格の高騰。他にも」
「あちらの内乱ならばまだマシだが…」
「『耳』は何と?」
「連絡が途絶えた」
「むぅーっ」
「来るか?」
「ああ。可能性は大きいな」
「ヴォルフ、リーザ達はうちに連れて行こうか?」
「んーっ。いや、まだだ」
「だが、次は何を仕掛けてくるか?」
「うん。だが確証が得られぬからな…」
「それなら、護衛を増やし王の『影』もつけろよ」
「ああ」
「こっちは、兵站を万全に準備しておく」
「おう。任せた」
話し合いは深夜まで続いた。
◇◇◇◇◇
―その夜、王都の某屋敷―
シガールームで葉巻を燻らせながら、ヒソヒソと話をしている二人の男がいた。
白髪を撫でつけた白眼のドロリと濁った太めの男と、痩せぎすで鷲鼻の神経質そうな小柄な男。
そこに、闇に紛れるように、黒尽くめの男がスルリと部屋に入ってきた。
「失敗したようだな」
「………」
「アレを使え。次はないぞ」
「………」
太めの男の言葉に、黒尽くめの男は音もなくいなくなった。
「大丈夫なんでしょうか?」
「なに、奥の手を使うから、次は失敗せんだろうさ」
「そうしたら、いよいよ天下は…ですな。フフフ」
「うむ。そのときはな…。フハハハ」
夜の闇に密かな笑い声が消えていった…。
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