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第一章 幼少期
7.魔法の授業
しおりを挟む次の日から、私の新たな修行の道が始まったんだが、すんなりとはいかなかった。
私の能力は、家庭教師達にも秘密だったため、一歳児に教えることを厭う空気ができてしまった。
教師達の段々ギスギスしていく空気に、兄姉達も気づき始めお母様に相談した。
私だけが教師を替えるというだけで良かったのだが、ブラコンの兄姉達がそれを許さなかった。
頑張ろうとしている弟に教えることを忌避する人たちを、先生と呼ぶことはできないと。
そうして前の教師達は去り、カネッティ家に新たに二人の教師が来た。
白い髭をたっぷり蓄えた小柄なサンタみたいな老人と、藍色の髪に黒い瞳の綺麗な顔をした若い男の人だ。
お爺さんと孫だそうで、二人ともお母様の知り合いとのこと。
どちらも、魔法士団に席を置いているらしく魔法の知識と腕は確かで、他の教科もすべて教えることができるらしい。
何よりも、私の秘密を話すことができ、一人の教え子として教え導いていくことができる人柄と考え方をしているという。
あのお母様が全幅の信頼を置く二人。
これからの授業がとっても楽しみになった。
新しい先生になって、お兄様達も最初から習いたいと言ったのでみんな一緒だ。
魔法の授業は、まず魔法理論の基礎から始まった。これが面白いんだ。
いままでの、一般的な魔法の初歩の説明ではなく、魔力の考察から掘り下げていく。
次に、魔法陣の基礎に入っていく。
そして、魔法の発動理論に。
この世界には魔力が満ちているが、濃い場所と薄い場所ができるのはなぜか?
世界中で魔力を使い続けているのに、どうして枯渇しないのか?
魔力の流れが見えるのはなぜか?
魔法陣に魔力を注ぐとどう動くのか?
魔法陣の活用方法は?
どうして魔法を使えるのか?
そして、魔法の発動と魔力の関係は?
楽しい!とにかく楽しい!!
すべての言葉を聞き漏らさないように、脳みそに染み込ませ知識を深めていく。だって、読める文字をまだ書けないし…。
同時に考察していき、自らの考えをまとめ議論する。
教養や歴史もなぜそう思うのか、その場合どう動くことが最善なのか等の考察を深めていく。
二人の先生とも、どんな変化球を投げてもきちんと答えが返ってくる。
お兄様達もお姉様も、今までの教師の進め方とは全く異なるため、初めは戸惑っていた。
だが、徐々に慣れてきて、考察を深め己の考えを導き出し、きちんと理論立てて説明できるようになった。
今では、四人でいろんなテーマを決めて討論することも多い。
まぁ、私の発言はちょっとないくらい凄いよ?
『ちょれはじょちてしょうなりゅにょ?
ちょのばぁいは、まほぅじんをこうちてこちたほぅが
こういぅふにでちるとおもー!』
どうだい!!
これできちんと聞き取って理解してくれるお兄様お姉様達の愛を感じるし、先生達もホントにスゴいと思うんだ。
白い髭のお爺さんはシュテファン先生といい、孫の男性はリヒト先生という。
ルー兄様が初めて名前を聞いたときに、挙動が不審だったのが気になるけれど…。
そうそう、私の滑舌は相変わらずの調子だが、授業で頑張っているからか、お兄様お姉様達の呼びかたはだいぶマシになったと思う。
まあ、名前が長いから短縮型だけども…。
お母様にはきちんと呼びなさいって言われてるんだけど…。一歳児にはまだ…ムリ。
るーにいさま。まてぃにいさま。りあねえさま。〈ドヤッ!〉
どうよ!かなり頑張ったと思うよね~?ムフフン!
今日は、授業で中級魔法の発動を練習する。
魔法の練習を大手を振ってできるようになって、初級は全部マスターしていた。
確認のため、使える魔法を見せるときに無詠唱でやったら驚かれた。
中級でも、私は詠唱をしたくない旨を伝えたが、授業では一回は詠唱しなさいと言われた。うへ~…。
詠唱したほうが、無詠唱より強力な魔法が発動する。ましてや魔力量が多いんだ。
どのくらい違うのかを理解していないと、実際に使用する時に困るからだそうだ。
その原理も授業でやって理解はしている。してはいるんだが……やりたくないんだ。
詠唱文って、『俳優』になりきって言わないと、ものすご――――っく恥ずかしいんだ!!!
中二なセリフ…。一歳児の目が死んでいく。背景に木枯らしが吹いて…。ピュ~~~。
よっし!!乗り切った!!!
最初の風魔法の時、中級魔法の<エアスラッシュ>を詠唱付きで発動したら、強力すぎて騎士団の訓練場の壁が壊れてしまった。
まあ、壁が壊れただけで良かったよ。ほほほのほぉ~…。
初級魔法は確認しないで大丈夫?…だよね?
今後は、無詠唱で、さらに魔力量を減らして発動していくことになった。
注入する魔力量の増減で威力がどう変わるのかも、これから実験していくんだ。
こっそり修行でやったのと一緒だね。
私の場合、同じ魔法でも、普通より威力が強いのは、魔力量が多いだけじゃない。
理論をしっかり理解した上で、ジャパンカルチャーの影響で、その魔法がおこす現象を完璧に想像できるから強力なんだと思う。
ジャパンカルチャーのことは言えないが、他の部分は自分の考えとして伝えておいた。もちろん滑舌悪いあれで…。
そうしたら、シュテファン先生は、白い髭を撫でながら、『ウムウム』と頷いて自分の思考の海に潜って行ってしまった。
リヒト先生は、それを見ながらも全く表情が動かない。
そう!リヒト先生は、どんな時でも表情の変化がないんだ。
最初は兄弟で戸惑ったけれど、お母様に話をしたときに『よく観察してごらんなさ~い♪』って言われて、ずーーーっと観察していた。
そうしたら違いがわかってきたんだ。
リヒト先生は、眼で語る人だった。
それがわかってからは、リヒト先生の眼は表情がとても豊かなことに気づいた。
今もシュテファン先生をシラーっとした眼で見ている。
呆れて、『ハイハイ。後は私がやるんですね?』って言いそうな眼だ。
思わず、四人で声を上げて笑ってしまった。
そうした日々を過ごしながら、私は全属性の中級魔法を習得していった。魔力の使用量の調節も完璧だ。水・風と光の上級魔法も使えるようになった。
隠蔽スキルも手に入れた。
そして、今、一番力を入れているのが無限収納と空間転移のスキルの習得。これはまだ習得できていない。
どちらも、冒険者になって楽をする…〈コッソリ〉には必須だと思っている。
だから必ず習得すると決めている。王立魔法学院に入学するまでにはものにしてみせる…キリ。
お兄様達も、今の魔力量とレベルで習得しうる最高難度の魔法を使えるようになった。
私がおねだりした薬草園は、庭の温室と日向と日陰の三か所に造ってもらって、様々な薬草を取り寄せてもらい、庭師のクルトに教えてもらいながら育てている。
薬草学や調合もシュテファン先生に教えてもらい、無事、調合スキルを習得できた。
スキルを習得したことによって、効率もよくなり薬の効能も上がった。
この世界では、病気もケガも魔法で治せるので、医学と呼べるものがない。
それなのに、回復魔法の使い手が少ないんだ。光属性はあっても、なぜだか回復魔法を使える人が少ない。
薬師はいるが、街で売れるのは、腹下し、熱冷まし、傷薬、湿布薬がほとんどだ。
重い病やケガは、どうせ高いお金を払うのなら回復魔法で治すという考えなんだ。
それで、薬草学もあまり研究が進まなかったんだと思う。
でも、私も回復魔法が使えるけれど、いつでも、何人でも治せるわけじゃない。
だから、薬草学の修学と調合スキルの習得を急いだんだ。
だって、この世界はやっぱり命の重さが軽いと感じるもん。
何かあってからじゃ遅いんだから。
調合スキルを習得できた時は万歳しちゃったよ。先生は万歳を知らないからビックリしてた。
前世、心配性で大きなカバンをパンパンにして持ち歩いたおばちゃんにとっては、それでも安心感は少しだけだけど……良かった。ちょっぴりホッとした。
そうしている間に二年が過ぎ、私達家族には妹が増え、ルー兄様が十歳に、マティ兄様が九歳、リア姉様が七歳、私が三歳になった。
そして、ひと月後、ルー兄様が家を離れ王立魔法学院に入学する。
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