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序章

えっ、転生?

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 うーん。ここはどこだろう?
 フカフカの布団がポカポカで、気持ち良く目覚めたら、知らない部屋で眠っていたようだ。
 
 さっきまで、痛くて辛くて悲しかったはずだけど…。
 確か、病気で入院していて、朦朧としている中で、息子とその家族が手を握って話しかけてくれていたのは覚えている。


 ピッピッピッピッピッピーーーーー・・・。


 そっかー…。死んじゃったんだなぁ…。
 最後の心電図の音が聞こえた気がした。
 
 でも、生きているよね…?
 暖かさを感じるし、柔らかく吹く風も感じるし、霊体じゃないよね? 
 まわりを見回してっと…。

 私が寝ていた部屋の天井は高く、大きな窓には白いレースのカーテンが揺れている。壁は淡いクリーム色の壁紙で、若草色のトリムボーダーが良いアクセントになっている。
 赤茶の飴色のしっかりとしたテーブルとアンティーク調のソファー。社長室にあるような机と椅子。
 うん。柔らかな雰囲気の落ち着く部屋だ。
 そして、私が寝ているベッドはというと…!

 「ばぶーーっ!(柵ーー!)」

 えーーーーーーーーーっ?
 
 少し落ち着き、現状の確認ができたよ。

 なんと、私は赤ちゃんになっていたんだ。
 驚いたよ!
 叫んだら、ばぶーっだし、柵に手を伸ばそうとしても手足がバタバタするだけだし…。
 見ると手が小っちゃくてプクプクしているんだ。

 柵があるのは、ベビーベッドだからだった。
 う~ん…。転生したのかな?
 実家はお寺の檀家だったけれど、私自身は、正月は神社に詣でバレンタインにチョコを配り、お盆には寺と墓に参りクリスマスを祝う多くの日本人と同じだった。
 輪廻転生というものは、知っていても信じてはいなかった。
 信じちゃいなかったが…。マジか?

 うん。おててが小っちゃ…。
 間違いなさそうだね。

 なんか、手足をジタバタと動かしてキョロキョロしていたらお腹がすいてきた。
 お腹がすいたと思ったら泣きたくなってきて…、我慢できずに泣いてしまった。
 いい年をしたおばちゃんが、お腹がすいて泣くなんて…。
 恥ずかしいが、本能に勝てないのか泣き止むことができない。

 ドアの向こうからパタパタと足音が近づいてきた。
 そぉっとドアを開けて入ってきたのは、十二歳くらいの女の子だけど…!!!

 「ほぎゃーっっっ???(猫耳ーっっっ???)」

 女の子の頭の上には猫と同じような耳があって、人間の耳の位置には何もなかった…。
 驚いて泣き止んでしまった。

 えっ?えっ?えっ…?
 頭の上にクエスチョンマークが無数に浮かんでいる気がする…。

 よく見ると尻尾がある…。
 ……? 獣人…?
 ……………えっ?
 えっ?異世界?ってこと…っ???


 うーん。地球ではなさそうだね…。だって地球に獣人いないはずだし…?
 目の前の耳と尻尾は人工物には見えないし、何より動いている。耳はピピっと。尻尾はユラユラと。

 前世では、母一人子一人で質素に慎ましく暮らしていたので、唯一の楽しみが読書だった。ラノベメインだったけど。
 だから、割とすんなり飲み込めて落ち着けたような気がする。
 私の状況は、ラノベでよくある異世界転生ってことのようだ。

 続いて部屋に入ってきたのは二人の女の人で、三十歳くらいのふっくらした体つきの女性が乳母でサラという名前らしい。やさしそうで良かったよ。
 そして、私の母親らしいめちゃくちゃ美人の女性は、ふわっふわの銀髪でクリっとした大きな翠眼、スッとした鼻筋に艶やかな唇。細めの体つきだけど、お胸は堂々のメロンがポヨヨン。
 
 「あら~♪ アルちゃん。お腹すいたのね~♪」

 母親がそう言って服をくつろがせ、メロンがポヨヨ~ンと目の前に…。わっほい♪
 小っちゃいおててで押しつつ、おいしくいただきました。ご馳走様でした。うまうま♪

 赤ちゃんなので、飲んだらすぐ出る…。
 精神年齢的に恥ずかしすぎる下のお世話もしてもらってスッキリしたところで、もう一度確認してみよう。

 現状はっと…。
 赤ちゃんの発育状況からみると、生まれてから三ヶ月くらいな感じ。
 人間と獣人がいる。
 顔立ちは割と彫りが深く西洋人のよう。
 父親や兄姉はまだ会っていないからいるかわからない。
 部屋や服装、使用人がいる状況から、裕福な家に生まれたことがわかった。

 これからを考えようと思っていたが、お腹がいっぱいでお尻もスッキリしたからか、眠くなっ……zzz。


 さて、飲んで寝てを繰り返して一ヶ月がたった。
 すくすく育って、転生後四ヶ月となった。
 新たに分かったことを確認してみよう。

 まずは家族のこと。
 父親と兄二人姉一人がいるんだよ。
 父親は、ゲルハルト・フォン・カネッティ侯爵。サラサラの金髪で少し垂れ目ぎみな綺麗な二重の菫眼、スッとした鼻筋に薄めの唇。背が高くしなやかな筋肉がついた細マッチョで二十七歳の色男。ものすっごいイケメン!
 母親は、ハンナ・ルーセント・フォン・カネッティ。十代でも通用する見た目だけれど二十四歳で四人の子持ち。
 長男は、ルートヴィッヒ・フォン・カネッティ。色彩からパーツまでお父様のミニチュアのような容姿の七歳。
 次男は、マティアス・フォン・カネッティ。ほわほわの金髪で切れ長の翠眼で、お父様似の六歳。
 長女は、コルネリア・フォン・カネッティ。サラサラの銀髪で垂れ目気味の菫眼。こちらもお父様寄りの顔立ちの四歳。
 お父様の遺伝子めちゃ強いぇ…。
 なんて美形家族なのか。これは、私も期待してしまうというもんだ。
 前世は平凡な容姿で、可もなく不可もなくだったから、やっぱ夢見ちゃうよね~♪

 そして、そして、なんと! なんと!! 私に男の子がチョコンとついていた。チョンだ!!!
 もう~、驚いたなんてもんじゃない!!!
 いやー、ビックリしたよ!

 私の名前もわかった。
 アルフォンス・フォン・カネッティ。侯爵家の三男坊に転生したんだ。
 
 せっかく異世界に生まれ変わったんだもん。
 前世は馬車馬の如く働いていたから、今生はのんびりゆったり暮らしたいなあ。
 世界中を旅してもみたいなあ。
 やりたいことは、どんどん挑戦したいしなあ。
 優しそうな家族とは笑顔でいられるようにもしたいなあ。
 そして、それから……あっ、あれ~?

 私のんびりゆったり暮らしていける……のか???





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