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第一章
国王と王妃
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「午後の進講が終わったら俺の部屋に来い」
「はい、殿下…」
国王と王妃の前で、うまく立ち振る舞うことができなかったことに対して、怒られるのだろう。
憂鬱なままその日の進講を受け、あっという間に時が過ぎ、今、珀斗王太子の部屋の前に立っている。
意を決してノックし入室すると、王太子は奥のデスクに座っていた。
私を一目見ると、すぐに立ち上がり、ソファに座るよう指示した。
「殿下…、今日の国王と王妃の拝謁のとき、うまくできなくて申し訳ありませんでした」
「気にするな。国王と王妃を前にすれば緊張するのは当たり前だ」
てっきり怒られると思っていたが、声も表情もいつものままだった。
「それより、これからのことで小春に言っておきたいことがある」
「は、はい、なんでしょうか…」
また小春と名前で呼ばれたことで、一気に緊張感が高まったが、王太子はそのまま話を続けた。
「お前も知っているだろうが、日本と深国との関係が悪化している。深国は、日本の本土を攻撃する計画を一年以内に決行すると言われている。つまり、いつ戦争が起こってもおかしくない」
「はい…」
「俺は陸軍の大将だ。いつでも指揮できるよう、九州にある軍事基地に長期で滞在することになっている」
「九州に…」
話を聞いていると、私がもともと住んでいた地域にあった軍事施設だったことがわかった。
「小春を連れて行くことも考えたが、王太子の妻だと知られれば巻き込まれる可能性もある。まだこの宮殿の方が保安上のリスクは少ない」
「…」
「だが、俺にもしものことがあるかも知れないから、世継ぎは必要だ。国王もそれがあって結婚を急いでいた」
戦争で死ぬかもしれない王太子の子供を産むために、私はここに呼ばれたのかと思うと、複雑な心境になった。
子を授かることも、出産することも、男児を産むことも、思い通りになるものではない。
そもそも、世継ぎのためだけなら、私でなくてもいいのだから。
「殿下…。お言葉ですが、私である必要性が全く分かりません…。他にも相応しい女性はたくさんいると思います。」
「俺が小春を選んだ。それだけだ」
答えた王太子の目がまっすぐに私を捉え、思わず引き込まれてしまった。
「はい、殿下…」
国王と王妃の前で、うまく立ち振る舞うことができなかったことに対して、怒られるのだろう。
憂鬱なままその日の進講を受け、あっという間に時が過ぎ、今、珀斗王太子の部屋の前に立っている。
意を決してノックし入室すると、王太子は奥のデスクに座っていた。
私を一目見ると、すぐに立ち上がり、ソファに座るよう指示した。
「殿下…、今日の国王と王妃の拝謁のとき、うまくできなくて申し訳ありませんでした」
「気にするな。国王と王妃を前にすれば緊張するのは当たり前だ」
てっきり怒られると思っていたが、声も表情もいつものままだった。
「それより、これからのことで小春に言っておきたいことがある」
「は、はい、なんでしょうか…」
また小春と名前で呼ばれたことで、一気に緊張感が高まったが、王太子はそのまま話を続けた。
「お前も知っているだろうが、日本と深国との関係が悪化している。深国は、日本の本土を攻撃する計画を一年以内に決行すると言われている。つまり、いつ戦争が起こってもおかしくない」
「はい…」
「俺は陸軍の大将だ。いつでも指揮できるよう、九州にある軍事基地に長期で滞在することになっている」
「九州に…」
話を聞いていると、私がもともと住んでいた地域にあった軍事施設だったことがわかった。
「小春を連れて行くことも考えたが、王太子の妻だと知られれば巻き込まれる可能性もある。まだこの宮殿の方が保安上のリスクは少ない」
「…」
「だが、俺にもしものことがあるかも知れないから、世継ぎは必要だ。国王もそれがあって結婚を急いでいた」
戦争で死ぬかもしれない王太子の子供を産むために、私はここに呼ばれたのかと思うと、複雑な心境になった。
子を授かることも、出産することも、男児を産むことも、思い通りになるものではない。
そもそも、世継ぎのためだけなら、私でなくてもいいのだから。
「殿下…。お言葉ですが、私である必要性が全く分かりません…。他にも相応しい女性はたくさんいると思います。」
「俺が小春を選んだ。それだけだ」
答えた王太子の目がまっすぐに私を捉え、思わず引き込まれてしまった。
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