「月が太陽と眠る夜」 〜出自が分からず無戸籍の孤児として育った小春の前に現れたのは、日本王国の王子の兄弟?!〜

みなみ

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第一章

支配者と札束

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デスクに置かれたおにぎりと味噌汁には手をつけず、本を読んでいた。



「王太子殿下がお呼びですので、殿下のお部屋にお願いいたします」


昨日の今日で、また何かされるのではないかと不安になりながらも、私は王太子の部屋に向かった。


昨日と同じように、ベッドルームに入ると、昨日と同じ行為を迫られた。


昨日より酷いことはされないだろうという予測ができて、昨日よりも冷静でいられた。


冷静さというより、諦めの感情の方が強いかもしれない。


逃げずにいればこの行為はすぐに終わるはずだと信じて、なされるがままに、ひたすらに時間の経過を待つ。



こんな夜が、2週間以上も続いた。














「明日から、公務で地方に行くから、ここには来なくていい」


いつものように行為が終わった後、私が立ち去ろうとしていた時だった。



「予定では一週間だ」


「はい、殿下」


平静を装って返事をした私だったが、内心はとても安堵していた。


2週間も毎日抱かれていては、心も体も持たないと思っていたので、やっと休めるのだと嬉しくなった。


「俺が戻るまでの間は、この宮殿からの外出は禁止する。建物の中では自由にしていい」


「お庭にも出てはいけませんか?」


「ダメだ。花が必要なら担当官に言って持ってこさせろ」


「殿下…なぜそのことを…」


普段ほとんどと言っていいほど会話がない私たちだが、私がいつも花を摘みに行っていたことを王太子が知っていたことに驚いた。


「…たまたま耳にしただけだ。深い意味はない」



王太子はバツが悪そうにそう答えると、私に背を向けた。


私は、失礼しますと一言いい、部屋から出た。


王太子は、これまで私に一切興味もなく、私の日中の過ごし方を知られていたのは、担当官から報告させている証拠でもある。


瑛斗王子が、言っていた内通者がいると言っていたのも、同じことなのかもしれない。


自分の行動が、知らないところで筒抜けになっていると思うと、警戒をする必要はある。


誰が敵で、誰が味方なのか、私に判断できるのだろうか。


そもそも、夫となる珀斗王太子は敵なのだろうか。


確かに、私をここに連れてきて、様々な勉強をさせられているが、今後結婚して妻になり表に出ることを考えると必要なものだ。


愛情もなく行為を強要されていて、嫌悪感はあるが、世継ぎを産むたに必要なものではある。


ほとんど王太子の考えを聞いていないので、想像の世界で彼を見ていたが、本心はどうなのだろうか。


いつか、王太子ときちんと話せる関係性になるのだろうか。




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