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第一章
王太子と罪
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瑛斗王子は少し微笑み、それは心なしか余裕の表情にも見えた。
「もし監視がなければ、このまま小春ちゃんを連れ去りたいくらいだよ。」
「王子、私を王宮から逃がしてくれた事はほんとに感謝しています。でも私、また王宮に戻らないと…」
「じゃあ、王宮でまた話そう。兄にはもう一度僕から話をしてみるから。」
瑛斗王子はそう言うと、私の前から去っていった。
瑛斗王子の後ろ姿を見送った後、部屋の鍵を開けようとすると、王室の担当官が私に話しかけた。
「嬉野様、本日王宮に戻る飛行機を手配しております。1時間後にお迎えに参りますので、ご準備をお願いいたします。」
「部屋の片付けを少ししたいので、もう少し時間をいただけませんか?」
「お部屋の整理については、全てこちらで手配いたしますので、ご安心ください。珀斗王太子がお持ちですのでどうかを早めのご準備を。」
私の望みはどうやら叶えられないようだ。
珀斗王太子が待つという事は、宮殿に戻ってすぐ王太子に接見すると言うことだろうか。
それだけでも億劫なのに、もう二度とこの部屋には戻って来れないかもしれない。
そして、もう二度と孤児院の子供たちや花屋の社長たちにも会えないかもしれない。
「…わかりました。では1時間後によろしくお願いします」
力なくそう答えると、部屋に入り大切なものを選んで、集めた。
小さな宝箱に入れていたものや、必死に貯めた100万円だ。
宝箱の中には、幼馴染の恭平からもらったキーホルダーや、子供達とつくった押し花のしおり、写真などが入っている。
そして、100万円は、もしもの時に使おうと節約して現金を貯めていたものだ。もう使い道がないかも知らないが、自分の頑張ってきた証として持っていたい。
そして、花屋と孤児院には、しばらく友人の手伝いのために、長期でお休みをもらいたいと電話した。
突然の連絡に、何かあったのかと言われたが、うまく話を終わらせて、電話を切った。
泣きそうになるのを必死に堪え、玄関から出て王室の担当官とともに車に乗り込んだ。
「嬉野様、出発いたします。」
「…」
私は、返事すらできず、車はゆっくりと出発した。
「もし監視がなければ、このまま小春ちゃんを連れ去りたいくらいだよ。」
「王子、私を王宮から逃がしてくれた事はほんとに感謝しています。でも私、また王宮に戻らないと…」
「じゃあ、王宮でまた話そう。兄にはもう一度僕から話をしてみるから。」
瑛斗王子はそう言うと、私の前から去っていった。
瑛斗王子の後ろ姿を見送った後、部屋の鍵を開けようとすると、王室の担当官が私に話しかけた。
「嬉野様、本日王宮に戻る飛行機を手配しております。1時間後にお迎えに参りますので、ご準備をお願いいたします。」
「部屋の片付けを少ししたいので、もう少し時間をいただけませんか?」
「お部屋の整理については、全てこちらで手配いたしますので、ご安心ください。珀斗王太子がお持ちですのでどうかを早めのご準備を。」
私の望みはどうやら叶えられないようだ。
珀斗王太子が待つという事は、宮殿に戻ってすぐ王太子に接見すると言うことだろうか。
それだけでも億劫なのに、もう二度とこの部屋には戻って来れないかもしれない。
そして、もう二度と孤児院の子供たちや花屋の社長たちにも会えないかもしれない。
「…わかりました。では1時間後によろしくお願いします」
力なくそう答えると、部屋に入り大切なものを選んで、集めた。
小さな宝箱に入れていたものや、必死に貯めた100万円だ。
宝箱の中には、幼馴染の恭平からもらったキーホルダーや、子供達とつくった押し花のしおり、写真などが入っている。
そして、100万円は、もしもの時に使おうと節約して現金を貯めていたものだ。もう使い道がないかも知らないが、自分の頑張ってきた証として持っていたい。
そして、花屋と孤児院には、しばらく友人の手伝いのために、長期でお休みをもらいたいと電話した。
突然の連絡に、何かあったのかと言われたが、うまく話を終わらせて、電話を切った。
泣きそうになるのを必死に堪え、玄関から出て王室の担当官とともに車に乗り込んだ。
「嬉野様、出発いたします。」
「…」
私は、返事すらできず、車はゆっくりと出発した。
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