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第一章

結婚と契約

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翌朝になっても、相変わらず警護は続いていた。


私は、警護中の警察官に会釈だけして、自転車に跨り花屋に向かった。


「小春ちゃん、おかえりなさい。ゆっくり休めたかしら?」


私は丸四日間のお休みをもらっていたが、花屋の奥さまには、私が東京に行っていたことは知らせていなかった。


ましてや、王室からの招聘だとも言えないため、苦しい言い訳のように聞こえたかもしれない。


いつものように、仕事を始めたが、外を見ると、黒塗りの車が止まって、SPが見張っていることがわかる。


結婚を断り、正式に受け入れられらば、この警備もなくなるだろうと思う。





しかし、一週間経っても、相変わらず警備が終わることはなかった。


むしろ、私の外出時のSPの人数が増えて、セキュリティ性の高いマンションへの引越しまで迫られるようになっていた。


「すみません、結婚はお断りさせていただきましたが、なぜ警備が続くのでしょうか」


「旧王族ということで、今後も継続して警備の対象となりますので、どうかご理解ください」


「私は、無戸籍のままですし、旧王族であったとしても、今の私には何の関係ありませんから」


「少し警備担当と協議しますので、しばらくお待ちください」


何度か担当官と電話をしてはいるものの、なかなか話が進まなかった。


そんなある日、また、王宮への呼び出しがかかった。


私はそれを拒否したが、今後の私の生活を立て直すため、戸籍の獲得について話したいと言われ、仕方なく王宮に向かうこととなった。


「嬉野様、ご足労おかけしました。大変恐縮ではございますが、嬉野様に再度お願いがございます。王太子とのご結婚については、王太子の命により決定することとなりました」


「そんな…。お断りしたはずです。結婚はできないと…」


「王太子の命令は、如何なる場合も断ることができません。こちらは、今後の生活に関する誓約書です。どうか、こちらにサインをお願いします」



以前にも渡されていた膨大な資料を目の前に出され、私は拒否するしかなかった。


数時間にわたって、説得が続いたが、私は断固としてペンを持たなかった。


そして、痺れを切らした私は、部屋から出ようと試みたが、数人の大人に制止され、部屋の外に出ることさえも許されないという事実を突きつけられた。



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