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第7章 冒険者の日々是々
068 平原の風
しおりを挟む門番の衛兵にギルドカードを提示し、俺達は平原に出た。昨日の事もあり訝しがられたが、何か指示があったらしく無言で対応して来る。キャシィが依頼内容を説明すると滞り無く外へ──平原へと出る事が出来た。
周囲には畑を耕す農夫の一団や冒険者と思しき集団が大勢移動をしているが、ちらちらと此方を伺って来る。流石に今日は情報を探りにくる輩は居ないようだが結構ウザい。まあ、これも有名税って事にしておくしか無いだろう。
街道を離れ、俺達は周囲にオシリィを放ち索敵をしながら森へと向かう事にした。
この辺りは緩やかな草原であり彼方此方に灌木は散見するが森は遥か遠くにしか見えない。所々に繁みの様な場所もあり、取り敢えず生き物が住むのに問題は無さそうだ。川も流れており豊かな植生がこの土地を支えているのだろう。ダルシアの人口を養うだけの力とは相当なものなのは間違いない。
俺達は先ず森を目指して草原を突っ切る事にした。その過程で見つけた獲物を狩るのが適当だろうとキャシィは言う。
「草原は基本的に奇襲を掛けられる心配が無いからね」
道中、キャシィとシルビアと打ち合わせをしながら戦法の打ち合わせをする事にした。
「俺が盾役か」
一応不死身だし。
「私がその後ろで打撃役を受け持ちましょう」
エレンにはダブルアタックで猛威を振るって貰おうか。
破砕の鉄球は無しで。
どう考えてもあれは目立ち過ぎる。俺のドラッケン共々暫し封印だ。ある程度慣れて来てから、迷宮や魔鏡攻略の時に役立ってくれれば良い。
一応は火魔法特化だから臨機応変にやれるだろう。
俺が魔法つかえないのが恨めしい。普通は主人公が火魔法だよな。神様に与えられて忍術と仙術は使えそうなんだけどな~
「私は遊撃って事で構わないかい? 弓術はそこそこだけど、双剣と鞭で一応は近距離、中距離、遠距離のどれでも対応できるからね」
キャシィは飛剣、投擲術も使える。たがここは短弓術でも伸ばして貰うのが一番じゃなかろうか。
元々、女盗賊/ローグは器用なジョブだから、その辺は手慣れたものだろう。
弓術士程の遠距離攻撃は必要無いと思うんだよな。
サポートスキルとして迷宮で必要な罠や開錠などのスキルも持ってるしな。
方針としてはやはり暫くはオールラウンダーで、スニークアタックやサプライズアタック、バックスタブなどの攻撃系を伸ばすのが面白いんじゃないかな。毒薬関連の適正スキルも持てたら面白いけど。それに弓術を絡める。
「私が火力担当で宜しいんでしょうか?」
「うん、風魔法、雷撃系と風斬系、烈風系で殲滅を頼むよ」
風魔法は火魔法より使い勝手の良い魔法が多い。
少し護身術が心配だ。
何か武具でも工夫して貰うのが良いだろう。
俺達は少人数のパーティだし、これからもさほど増える事は無い。護衛任務に就くなら全周防御も考える必要があるだろうしな。
しかし、二人共かなりの軽装なんだよ。キャシィなんか胸当て以外はほぼ肌まで露出してるんだよ。一応バックラーと籠手はつけてるけどな~艶かしすぎる。
シルビアも一応はローブは着てるけど、身体の線がかなり出てるんだよ。
まあ、二人を嫉妬したり邪な考えを持つ奴等が後を絶たないのも当然なんだよな。それだけの価値がある二人だ。ジャムル達が後ろ盾になってなかったらかなり危険な事になってそうな気がするわ。
あの男もそれなりに役には立ってたのか。
マジマジと二人を見ると視線があった。そして露骨に顔を背けられる。
やべ、欲望が顔から出てたか。
「ゆ、ゆう帝、活動中はだ、だめだからな!」
「そ、そうなんです! そういった行為は夜営か、街に帰ってからに…その…するべきです!」
「しない!まだしないから!そこまで酷く無いからね!」
やはり隠し切れないか
俺もまだまだ若いな。
実年齢は十六歳らしいけど。
少し自重が必要だな。
仕事は仕事だからな~
「さ、さあ、森に向かおうぜ!」
微妙に甘酸っぱい雰囲気
何故だろう、この過去の人生には一度たりとも無かったこの感覚は。
このバビロニア製の身体には感謝しなくではな。
「あ、そうだ。忘れてたよ」
そうだ大切な事を忘れてた。俺の身体の秘密を教えておかねば。
俺は周囲に人の気配が無い事をオシリィとコシリィ部隊に調べさせ、森への道中でそっと聖骸布を外して見せた。
二人は食い入る様に見ている。
「そのマジックアイテムはソフィと同じ物だね」
そうか、やはり見てたのか。キャシィとシルビアもかなり見込まれてたんだな。
アルマンドの馴れ初めも気になるけど。
二人にはこの聖骸布の意味が分かっている筈だ。
俺はそっと右手から捕食触手を剥き出しにした。二人は驚いたのか「ひっ」と声を上げた。
「こんな能力を持った奴を聞いた事は?」
二人はブンブンと首を振った。そうか、やはり居ないか。妖術だと言い張りたいが、そのスキルを持つ者すら稀なのだろう。誤魔化すには適当では無いな。
「これは俺が秘匿するスキルだ。決して誰にも喋るなよ。結構レアなスキルだし、何かあったら俺が討伐対象に指定される冤罪を掛けられる可能性がかなり高い」
そう、これは魔法では分類出来ない、人族の保有するスキルでは無いのだ。
「……わ、分かった。決して喋ら無いよ」
「予め見せて貰って良かったです。いきなり見たら流石に動揺したかもしれませんから」
「因みにこれは俺のユニークスキルの一つで、これからも増えるので宜しく頼むよ。あと俺は魔法は一切使えないからね」
「ま、まだユニークスキルが増えるのかい!?」
「複数のユニークスキル持ちでまだ増える!? その方が異常ですよ! 秘密にするなら其処ですよ!」
「……そうなの?」
「そうだよ! 普通、複数のスキルを持つ者はいるけど、ユニークスキルは極端に少ないし、先天的で後からなんて珍しいんだよ。一つのユニークスキルが進化したり変化したりする事はあるけど、全く新しいユニークスキルを獲得するなんて聞いた事も無いよ」
「過去に異世界から召喚された勇者がそうだったと聞いた事は有りますけど……」
あれ? そうなんだ。
う~む、今更っぽいけど、バビロニア製の身体ってチートスキルの塊なんだな。
振動発火や生体電流、気化冷却なんて確かに普通に使えるスキルじゃ無いよな。俺は息をするみたいに使えるって事がユニークスキルなんだか。
いや、人では無いって事が一番のユニークスキルなのかもしれん。
人造人間だから。
「バレたら捕まりそうだから其処のところ宜しくね」
「軽いね」
「軽すぎます」
呆れる二人だけど、本人にとってはこれが普通なんだよな。
「凄い奴とパーティを組む事になったね」
「ええ、危険な香りがプンプンします」
呆れる二人たが、全く後悔している素振りが無い。その辺の判断力がDランクの冒険者ってやつなのだろうか。
「もともとゆう帝に助けられなければジャムル達と一緒に全滅してたんだからね」
「そうです。この幸運に感謝するだけです」
二人はニコリと笑う。
「宜しく頼むよリーダー」
「私達の命運はリーダーの双肩に掛かってますからね」
「えぅ! お、俺がリーダーか!」
「「当然でしょう!」」
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