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凱旋前夜
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異世界から現れた聖女によって、魔王は亡き者となった。世界の闇は晴れ、これから平和が訪れる。長い旅の目的がようやく果たされたのだ。
平和になった世で何をするか、仲間たちが話に花を咲かせている。修道士のサミュエルは故郷に孤児院を立てるという。傭兵のキースはようやくただの村の漁師に戻って、妻と二人の子と暮らせると喜んでいた。魔道士のアイシャは魔導を極めるためにさらなる旅に出るという。
「そういえば、カノンはどうするの?やっぱり元の世界に戻るの?」
カノン、と呼ばれた女はあいまいに微笑む。随分小柄なので少女にしか見えないが、故郷ではすでに成人して働いていたのだという。
「どうするかまだ決めてないの」
「えー、もったいない!せっかく元の世界に戻れるのに!」
「……アイシャ、やめないかカノンが困っているだろう」
「あらエルメスト、カノンと別れるのが悲しいからってあたしに当たらないでくれる?」
エルメスト、と呼ばれた男はぐっと言葉を飲み込む。このパーティの中で一番身分が高いのは彼だが、アイシャには頭が上がらない。
いや、エルメストたけでなくこのパーティーの全員、アイシャに口ではかなわなかった。
しかし同性の気安さもあるのか、カノンとアイシャは仲がよかった。正反対の性格なのに不思議なこともあるものだ。
「でもね、カノンにもやりたいことあるんじゃないかなぁと思ってさ」
「ううん、私は何も……」
「そんな事言わずに考えてみてよ。あっちに戻ったら何したいとか」
「…………」
アイシャの言葉に考えこむように黙り込んだカノンを見て、エルメストは胸がざわついた。
故郷に帰らないでほしいという言葉をぐっと呑み込む。
エルメストは大貴族の三男として生まれた。物心ついた頃には世界に魔物が蔓延っていて、エルメストは堅牢な屋敷で守られて育った。屋敷の外では必ず誰かが非業の死を遂げる。
エルメストだけではない、家族の誰しもが領民を哀れに思いつも自ら魔王を打倒そうなどとは思いもしなかったのだ。
しかしそこにカノンが現れた。聖女が召喚された場に居合わせたエルメストは愕然とした。
王の間に召喚された彼女は伝説にうたわれる女傑ではなかった。
知らない場所に放り込まれた小動物のように怯えた小柄な女。
ーーこの女に世界の命運を委ねるのか?
縁もゆかりもない小柄な少女にゆだねて、自分は堅牢な屋敷で口では領民を憐れみながら身を切ることなく、善良なフリをして生きていく。
ーーああ、それはイヤだな。
エルメストはカノンの出立の夜、家を出奔した。これ以上、自分を情けないと思いながら生きてゆくのは耐えられなかったのだ。
一行はあえて転移呪文を使わず、今までの旅路をなぞるように王都への旅を楽しんだ。ムードメーカーのキースとアイシャが仲良く喧嘩するのをカノンは穏やかな目で見て微笑んでいる。野営でサミュエルが作るシチューを皆で囲み食べる。そんな当たり前の光景は、あと少しで終わりなのだ。
まだ折り合いが悪かった頃、キースに貴族仕込の軟弱剣術と罵られて、殴り合いの喧嘩をしたことももはや懐かしい。あのときは珍しくカノンが本気で怒っていた。
どんなに名残惜しくても、別れのときは刻一刻と近づいていく。
そしてついに、明日は王都へとついてしまう。一行は近くの街に宿を取り、夜更けまで話し込んだ。
米米米
カノンは一人ベッドに体を預けていた。この辛くも楽しい旅も明日で終わりだ。
ーー結局、最後までエルメストに本当の気持ちをいえなかった。
そんなことを考えながら眠れないでいると、ふいにドアがノックされる。
「エルメスト?」
「最後かもしれないから、やはり伝えておかねばと思って」
「愛している」
突然の告白に目を丸くする。そして困惑げに視線を落とす。
カノンは何も言わずに目を伏せた。
「頼む、聞いてくれ。これはわがままだと分かっているが、どうしても言わせてくれ」
エルメストは故郷に婚約者がいるはずだ。顔も見たことがないと言っていたが、それは珍しいことではないという。
高位貴族のほとんどは政略結婚だ。いずれ他の人のものになるのに、どうしてこんなことを言うのだろう。せっかく忘れようとしていたのに。
「ごめんなさい、あなたの気持ちに応えることはできないわ」
そう言うしかない。それが今の自分の正直な気持ちなのだから。
カノンはエルメストを愛している。旅に出るまでに、カノンは王から選別として路銀と護衛を与えられた。しかしこともあろうに護衛の男二人はカノンに与えられた路銀を持ち逃げして姿を消したのである。
カノンは愕然とした。右も左も分からない世界で一人取り残されてどうすればよいのか。
そこに現れたのがエルメストだったのだ。彼がいなければカノンは旅を投げ出していただろう。それでどうして彼を愛さずにいられようか。
カノンは幼い頃に両親を事故で亡くし、引き取ってくれた親戚もカノンのことを実子とは明らかな差をつけて扱った。天涯孤独の身の上だ。確かに元いた世界はこちらに便利で快適だろうが、いつもどこか寒々しいかった。
しかしカノンはそれでも日本へと戻るつもりだった。この世界に残れはエルメストが他の女のものになるのを間近で見なければいけない。
「冗談はやめて、エルメスト。私は元いた世界に帰るのよ。そして、きっと二度と戻ってこない」
カノンはそう言い切ると、エルメストの顔が曇る。そして無言でカノンの肩を掴んだ。
「えっ?」
エルメストの顔が近づき唇を押し当てられる。
「んッ!?」
「好きだ、カノン」
二度目のキスは深くなった。舌が入り込み、歯列をなぞられ口腔内を犯してくる。あまりに激しく濃厚なそれに、思考が奪われていくようだった。
「い、いやっ……だめっ……」
こんなことは駄目なのに。触れられると嬉しいと思う自分がいる。心がかき乱されて涙がこぼれた。
抵抗する腕が取られ、ベッドに押し付けられてしまう。
「やめ、やめてエルメスト!」
「いやだ、カノンを離したくない」
エルメストはカノンの上に覆いかぶさり衣服に手をかけた。
「だめ!本当に、お願いだから……」
「カノン……」
エルメストは泣きそうな顔をする。そんな顔しないでほしい。
あなたがそんな風に苦しまなくていいように、私が帰るんだから。
「カノン、頼む」
「う……」
「抱かせてほしい」
その言葉にカノンは真っ赤になった。そして小さく震えながら、広い背中に腕を回す。エルメストはほっとしたように笑った。
「愛しているよ、カノン」
そう言ってもう一度深い口づけを交わした。
「こんな小さな体で魔王を倒したなど、嘘みたいだ」
エルメストによって一糸まとわぬ姿にされた
カノンは、恥ずかしさのあまり身をよじる。しかしエルメストはそれを許さない。節だった指で、胸の突起を抓まれる。
「あっ……、あ……」
「可愛い声だ」
「ふぁ……」
「カノン、ここが感じるのかい?」
「ひゃぅ……、あぁああん……」
もう片方を口に含まれ、ねっとりと舐めあげられてカノンは悶える。繊細な手つきで胸への愛撫を施されて、下腹部がじんと熱を持つ。
「いやぁ……」
「かわいい、カノン」
睦言を囁かれながら胸を優しく揉まれて先端を摘ままれる。
「あぁっ、そこ、らめぇ」
「もっと可愛く鳴いてごらん」
胸の先端が赤く腫れあがるまで苛められ、すっかり下腹部が熱を持った。カノンは切なさに足をすり合わせる。
「おねがい、もう」
カノンが強請ると、エルメストはゆっくりとカノンの太ももを開いた。
足の付け根をゆっくりと撫ぜられてカノンは羞恥に目を閉じる。
「すごい、びしょ濡れじゃないか」
「や、言わないで……」
エルメストは嬉しげに笑うと、そっと割れ目に指を差し入れる。そこはすでに蜜が溢れ、ぐちゃぐちゃになっていた。
「う、うあ……」
一本の指を抜き差しされ、花芽を親指で擦り上げられる。
「ひゃうっ、んんっあぁ……」
強い刺激に、カノンはビクビクと体を震わせた。
「は、はぁ、はぁ……」
「よくできたね、カノン」
エルメストはカノンを抱きしめた。そのまま顔中に優しいキスを落としてゆく。やがて、再び秘所に手を伸ばされる。
「ま、待って…、エルメスト、だ、だめ…」
今度は三本の指が抜き差しされる。バラバラに動かされ、入り口を広げられ、敏感な粘膜を執拗に責められる。
「あーーーー!!イっちゃ、またイッちゃうから、あーーーーーー!!!」
カノンは絶頂を迎える。腰を浮かせてガクガクと痙攣させながら果てた。
エルメストは満足げにカノンを眺める。
カノンは虚ろな瞳で天井を見つめていた。
「挿れてもいいか、カノン」
エルメストの問いを、カノンは拒めない。
これが最後というなら、全て奪ってほしかった。
「は、はぁ、ああ」
狭い肉壁を押し分けて、大きなものが侵入してくる。熱い楔を打ち込まれてカノンは頭がチカチカした。もはや恥らいはどこにもない。
カノンは快楽に身を任せるただの女だった。
「ああ、エルメスト、もっと……お願いよ……わたしを、あなたのものにして……」
「ーーっ、カノン」
エルメストはカノンの両足を高く持ち上げると、体重をかけてさらに奥深くを貫いた。
子宮口に突き刺すような衝撃に、カノンは悲鳴を上げる。
「やっ、ああっーー!」
「カノン……カノン………………愛している………………愛している………………」
カノンの中で、エルメストがはじける。熱いものが胎内を満たす。長い射精を終えた後、二人はきつく抱き合ったまま、どちらからともわからず口づけを交わした。
しばらくして身体の熱が引いたとき、エルメストが散歩に誘ってきた。
王都近くに面するこの森の湖は、静謐な美しさをたたえている。
「カノンは覚えているか、決戦前に月が浮かぶ湖で盃を交わしあったことを」
「ええ」
忘れるわけがない。
「……君は知らなかったかもしれないが、あれは求婚の儀なのだ。初代の聖女様は月から来たと信じられている。そして夫となるものに月を映す湖の水を飲ませ伴侶とした、と伝わっている」
その意味することを始めて知ったカノンは、頬が赤くなるのを感じる。
「でも、エルメストには婚約者が……」
「無論、正式に婚約は破棄する。それ以前に家を無断で飛び出したのだ。相手のご令嬢は顔も知らぬ会ったこともない、いつ死ぬとも知れぬ男を健気に待っていたりはしないだろうさ」
カレンは返事に窮した。もう自分がエルメストを諦めねばいけない理由がなくなってしまったからだ。
「返事をくれないものだからすっかりフラレたのかも思っていたが、キミはもともとこちらの人間ではないのだから知らなかったのだな」
エルメストから語られてカノンは恥じ入る。勝手に諦めて、元の世界に逃げ帰ろうとしていたなんて。
「……この世界に残って、俺の妻になってくれないか」
カノンは満面の笑みで微笑み、エルメストに抱きついた。
二人が連れ添って宿へと戻ると、仲間たちが囃し立ててくる。顔を赤くして怒るエルメストの隣で、カノンは笑った。きっとこれからは孤独を感じる暇もないに違いない。
平和になった世で何をするか、仲間たちが話に花を咲かせている。修道士のサミュエルは故郷に孤児院を立てるという。傭兵のキースはようやくただの村の漁師に戻って、妻と二人の子と暮らせると喜んでいた。魔道士のアイシャは魔導を極めるためにさらなる旅に出るという。
「そういえば、カノンはどうするの?やっぱり元の世界に戻るの?」
カノン、と呼ばれた女はあいまいに微笑む。随分小柄なので少女にしか見えないが、故郷ではすでに成人して働いていたのだという。
「どうするかまだ決めてないの」
「えー、もったいない!せっかく元の世界に戻れるのに!」
「……アイシャ、やめないかカノンが困っているだろう」
「あらエルメスト、カノンと別れるのが悲しいからってあたしに当たらないでくれる?」
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いや、エルメストたけでなくこのパーティーの全員、アイシャに口ではかなわなかった。
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「でもね、カノンにもやりたいことあるんじゃないかなぁと思ってさ」
「ううん、私は何も……」
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「…………」
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しかしそこにカノンが現れた。聖女が召喚された場に居合わせたエルメストは愕然とした。
王の間に召喚された彼女は伝説にうたわれる女傑ではなかった。
知らない場所に放り込まれた小動物のように怯えた小柄な女。
ーーこの女に世界の命運を委ねるのか?
縁もゆかりもない小柄な少女にゆだねて、自分は堅牢な屋敷で口では領民を憐れみながら身を切ることなく、善良なフリをして生きていく。
ーーああ、それはイヤだな。
エルメストはカノンの出立の夜、家を出奔した。これ以上、自分を情けないと思いながら生きてゆくのは耐えられなかったのだ。
一行はあえて転移呪文を使わず、今までの旅路をなぞるように王都への旅を楽しんだ。ムードメーカーのキースとアイシャが仲良く喧嘩するのをカノンは穏やかな目で見て微笑んでいる。野営でサミュエルが作るシチューを皆で囲み食べる。そんな当たり前の光景は、あと少しで終わりなのだ。
まだ折り合いが悪かった頃、キースに貴族仕込の軟弱剣術と罵られて、殴り合いの喧嘩をしたことももはや懐かしい。あのときは珍しくカノンが本気で怒っていた。
どんなに名残惜しくても、別れのときは刻一刻と近づいていく。
そしてついに、明日は王都へとついてしまう。一行は近くの街に宿を取り、夜更けまで話し込んだ。
米米米
カノンは一人ベッドに体を預けていた。この辛くも楽しい旅も明日で終わりだ。
ーー結局、最後までエルメストに本当の気持ちをいえなかった。
そんなことを考えながら眠れないでいると、ふいにドアがノックされる。
「エルメスト?」
「最後かもしれないから、やはり伝えておかねばと思って」
「愛している」
突然の告白に目を丸くする。そして困惑げに視線を落とす。
カノンは何も言わずに目を伏せた。
「頼む、聞いてくれ。これはわがままだと分かっているが、どうしても言わせてくれ」
エルメストは故郷に婚約者がいるはずだ。顔も見たことがないと言っていたが、それは珍しいことではないという。
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「ごめんなさい、あなたの気持ちに応えることはできないわ」
そう言うしかない。それが今の自分の正直な気持ちなのだから。
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カノンは愕然とした。右も左も分からない世界で一人取り残されてどうすればよいのか。
そこに現れたのがエルメストだったのだ。彼がいなければカノンは旅を投げ出していただろう。それでどうして彼を愛さずにいられようか。
カノンは幼い頃に両親を事故で亡くし、引き取ってくれた親戚もカノンのことを実子とは明らかな差をつけて扱った。天涯孤独の身の上だ。確かに元いた世界はこちらに便利で快適だろうが、いつもどこか寒々しいかった。
しかしカノンはそれでも日本へと戻るつもりだった。この世界に残れはエルメストが他の女のものになるのを間近で見なければいけない。
「冗談はやめて、エルメスト。私は元いた世界に帰るのよ。そして、きっと二度と戻ってこない」
カノンはそう言い切ると、エルメストの顔が曇る。そして無言でカノンの肩を掴んだ。
「えっ?」
エルメストの顔が近づき唇を押し当てられる。
「んッ!?」
「好きだ、カノン」
二度目のキスは深くなった。舌が入り込み、歯列をなぞられ口腔内を犯してくる。あまりに激しく濃厚なそれに、思考が奪われていくようだった。
「い、いやっ……だめっ……」
こんなことは駄目なのに。触れられると嬉しいと思う自分がいる。心がかき乱されて涙がこぼれた。
抵抗する腕が取られ、ベッドに押し付けられてしまう。
「やめ、やめてエルメスト!」
「いやだ、カノンを離したくない」
エルメストはカノンの上に覆いかぶさり衣服に手をかけた。
「だめ!本当に、お願いだから……」
「カノン……」
エルメストは泣きそうな顔をする。そんな顔しないでほしい。
あなたがそんな風に苦しまなくていいように、私が帰るんだから。
「カノン、頼む」
「う……」
「抱かせてほしい」
その言葉にカノンは真っ赤になった。そして小さく震えながら、広い背中に腕を回す。エルメストはほっとしたように笑った。
「愛しているよ、カノン」
そう言ってもう一度深い口づけを交わした。
「こんな小さな体で魔王を倒したなど、嘘みたいだ」
エルメストによって一糸まとわぬ姿にされた
カノンは、恥ずかしさのあまり身をよじる。しかしエルメストはそれを許さない。節だった指で、胸の突起を抓まれる。
「あっ……、あ……」
「可愛い声だ」
「ふぁ……」
「カノン、ここが感じるのかい?」
「ひゃぅ……、あぁああん……」
もう片方を口に含まれ、ねっとりと舐めあげられてカノンは悶える。繊細な手つきで胸への愛撫を施されて、下腹部がじんと熱を持つ。
「いやぁ……」
「かわいい、カノン」
睦言を囁かれながら胸を優しく揉まれて先端を摘ままれる。
「あぁっ、そこ、らめぇ」
「もっと可愛く鳴いてごらん」
胸の先端が赤く腫れあがるまで苛められ、すっかり下腹部が熱を持った。カノンは切なさに足をすり合わせる。
「おねがい、もう」
カノンが強請ると、エルメストはゆっくりとカノンの太ももを開いた。
足の付け根をゆっくりと撫ぜられてカノンは羞恥に目を閉じる。
「すごい、びしょ濡れじゃないか」
「や、言わないで……」
エルメストは嬉しげに笑うと、そっと割れ目に指を差し入れる。そこはすでに蜜が溢れ、ぐちゃぐちゃになっていた。
「う、うあ……」
一本の指を抜き差しされ、花芽を親指で擦り上げられる。
「ひゃうっ、んんっあぁ……」
強い刺激に、カノンはビクビクと体を震わせた。
「は、はぁ、はぁ……」
「よくできたね、カノン」
エルメストはカノンを抱きしめた。そのまま顔中に優しいキスを落としてゆく。やがて、再び秘所に手を伸ばされる。
「ま、待って…、エルメスト、だ、だめ…」
今度は三本の指が抜き差しされる。バラバラに動かされ、入り口を広げられ、敏感な粘膜を執拗に責められる。
「あーーーー!!イっちゃ、またイッちゃうから、あーーーーーー!!!」
カノンは絶頂を迎える。腰を浮かせてガクガクと痙攣させながら果てた。
エルメストは満足げにカノンを眺める。
カノンは虚ろな瞳で天井を見つめていた。
「挿れてもいいか、カノン」
エルメストの問いを、カノンは拒めない。
これが最後というなら、全て奪ってほしかった。
「は、はぁ、ああ」
狭い肉壁を押し分けて、大きなものが侵入してくる。熱い楔を打ち込まれてカノンは頭がチカチカした。もはや恥らいはどこにもない。
カノンは快楽に身を任せるただの女だった。
「ああ、エルメスト、もっと……お願いよ……わたしを、あなたのものにして……」
「ーーっ、カノン」
エルメストはカノンの両足を高く持ち上げると、体重をかけてさらに奥深くを貫いた。
子宮口に突き刺すような衝撃に、カノンは悲鳴を上げる。
「やっ、ああっーー!」
「カノン……カノン………………愛している………………愛している………………」
カノンの中で、エルメストがはじける。熱いものが胎内を満たす。長い射精を終えた後、二人はきつく抱き合ったまま、どちらからともわからず口づけを交わした。
しばらくして身体の熱が引いたとき、エルメストが散歩に誘ってきた。
王都近くに面するこの森の湖は、静謐な美しさをたたえている。
「カノンは覚えているか、決戦前に月が浮かぶ湖で盃を交わしあったことを」
「ええ」
忘れるわけがない。
「……君は知らなかったかもしれないが、あれは求婚の儀なのだ。初代の聖女様は月から来たと信じられている。そして夫となるものに月を映す湖の水を飲ませ伴侶とした、と伝わっている」
その意味することを始めて知ったカノンは、頬が赤くなるのを感じる。
「でも、エルメストには婚約者が……」
「無論、正式に婚約は破棄する。それ以前に家を無断で飛び出したのだ。相手のご令嬢は顔も知らぬ会ったこともない、いつ死ぬとも知れぬ男を健気に待っていたりはしないだろうさ」
カレンは返事に窮した。もう自分がエルメストを諦めねばいけない理由がなくなってしまったからだ。
「返事をくれないものだからすっかりフラレたのかも思っていたが、キミはもともとこちらの人間ではないのだから知らなかったのだな」
エルメストから語られてカノンは恥じ入る。勝手に諦めて、元の世界に逃げ帰ろうとしていたなんて。
「……この世界に残って、俺の妻になってくれないか」
カノンは満面の笑みで微笑み、エルメストに抱きついた。
二人が連れ添って宿へと戻ると、仲間たちが囃し立ててくる。顔を赤くして怒るエルメストの隣で、カノンは笑った。きっとこれからは孤独を感じる暇もないに違いない。
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