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 わたしたちの母は、平民上がりの娼婦でした。まず妻子ある男性の愛人となり、妻子を追い出し妻となり貴族の地位を得たのです。母はそれだけは飽き足らず、より位の高い男へ夫を変え続け、ついに侯爵夫人にまでなりました。 
 そして母は常々、「女とはどんな男を虜にできるかで価値が決まる」と私たちに言い聞かせていました。そして妹はそれをはなから信じ込んでいましたが、私はそれに反発したのです。女の価値がそれだけであるはずはない、きっとほかにも道はあるはずだ。

そう思って必死に勉強しました。幸いにも私は努力家だったらしく、メキメキ頭がよくなって、そのおかげで王都にある学園に入学することもできたのでした。ただ、そこに妹のジャンヌも入学してきたのは驚きました。彼女はあまり賢いほうではない。おそらく父母が献金を相当に積んだのでしょう。
入学してからは男性とお付き合いすることもなく、勉学に打ち込んでいたのですが、ある日突然婚約を申し込まれてしまったのです。学問で主席を担ったわたしを、侯爵家の方が気に入ったようなのです。相手は侯爵家のご子息だったので、身分的には問題なく、父母も大いに喜んだのでわたしはそのお話を受けました。それが始まりでした。
妹がわたしに辛く当たるようになったのは。
「お姉さま、あまり調子に乗らないで。お姉さまは器量がよくないんだから」
妹はいつも私のことを馬鹿にしてきました。彼女が気に入ったものはドレスからアクセサリーからなんでも奪われました。それでも私は我慢していたのです。いつかきっとわかってくれると信じていたから。でもダメでした。
 父母もわたしより妹に甘いものですから、彼女はどんどん増長しました。

「まったく! いい加減にしなさいジャンヌ!! あなたのしている行動は目に余るものですよ!」
「あら? 何のことかしら? 」

妹はわたしから奪うことにためらいも恥じらいも、良心の呵責すらない。父母に訴えても、聞き入れても貰えない。そしてついに今日、婚約者まで奪われることとなったのです。
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