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第三章

第47話 戦姫の剣舞

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ルナをパーティに誘いたいと申請してきた3つのパーティの内、まず一組目のパーティとの面談が始まった。

彼らはBランク冒険者パーティ『疾風の翼』という冒険者4人で構成されたパーティだった。


リーダーの男は何だかとてもチャラそうな感じではあったが、話を始めていくとそこまで外見の印象ほどチャラくはなさそうだと分かった。

彼らの話を聞いて分かったのだが、どうやらルナを勧誘した理由は先日の魔物襲撃の実績を見たのは予想通りでそれに加えて俺の存在があるのだそうだ。

もちろんルナの冒険者としての履歴には俺と臨時パーティを組んでいるということも記載されており、そのことでルナがSSランク冒険者に認められている冒険者だと考えたのだそうだ。


俺はもちろんのことルナもまさかそこを理由として挙げられるとは思っていなかったので少し驚いていたようだ。彼女は彼らに対して必死にそんな大層なことではないと弁明していたが、どうやら周りからはそのように見られていたようだ。

まあ俺はルナの可能性と実力は認めているから強ち間違ってはいない。



そんなこんなで最初のパーティとの面談は何事もなく終了した。

面談が終わった後、ルナと話して疾風の翼はどうだったか聞いてみたが今のところはまだよく分からないとのことだそうだ。

まあまだ1組目だから何とも言えないのは仕方ないだろう。



ちなみに俺の印象は「良くも悪くもパッとしない」だ。
別に悪くはないんだけどね。

個人的にはもっと良いパーティがルナにはあるんじゃないかなとは思う。





=====================





そうして1組目のパーティとの面談から4日後、2組目のパーティとの面談の日になった。

再び俺はルナたちとは別室で魔道具を通じて見させてもらうことになり、面談はルナとミーシャさんで進められることとなった。


2組目のパーティは『未踏の道』という名のBランク冒険者パーティだ。1組目のパーティとは打って変わって物凄くきっちりとした感じのパーティだった。

そしてリーダーの男の話が始まったのだが、それが何とも台本でも書いてきたのかというぐらいに真面目で話が長くとてもつまらなかった。

本当に淡々と一方的に話をし続け、会話というよりもアピール会のような感じとなった面談は時間切れで終了となった。

長かった話を簡単に要約すると、戦術の幅を広げるために優秀な魔法使いを探しているときにルナの先日の実績と俺との関係を知ってすぐに勧誘をしてきたのだそうだ。


まあ俺の独断と偏見で現段階の順位をつけるなら暫定1位が『疾風の翼』で次いで『未踏の道』だ。

ちなみにルナにも話を聞いてみたが、さすがに1組目のパーティの方が印象はよかったようだ。彼らの話が長く単調だったせいで、ルナは眠気を我慢するのに必死だったそうだ。

おそらく俺も本体でルナと一緒の場に居たら強烈な眠気に襲われていたに違いない。今のゴーレムの身体では眠気を感じないから本当に良かった。





=====================





そしてついに最後のパーティとの面談の日がやってきた。

今回も今までと同様に俺は別室で見ており、未だに緊張しているルナの様子を離れたところから観察していた。

今回で3回目なのに毎回初めてなような感じで緊張しているルナ。そろそろ慣れてもいいのではないかと思ってしまう。


そうしてついに応接室のドアがノックされて最後のパーティがギルド職員に案内されてやってきた。


「初めまして、ルナさん。今回はお時間いただき感謝します」

「い、いえ!こちらこそありがとうございます!!」


今までになく礼儀正しく挨拶をしたのは今回面談をするAランク冒険者パーティ『戦姫の剣舞』のリーダーだ。

今回のパーティは女性冒険者だけで組まれた珍しいパーティで、噂ではランクに近いという実力のあるパーティなのだそうだ。


戦姫の剣舞のメンバーが全員ソファに座り、ついに最後のパーティとの面談が始まった。


「ではまず私たちの自己紹介を。私は戦姫の剣舞リーダーのリサと申します。隣から順にライザ、ロア、レミアです」

「「「よろしくお願いします」」」

「は、初めまして!ルナと申します」


互いに自己紹介が終わったところでミーシャさんがルナの元に戦姫の剣舞の資料を、リサの元にルナの資料を渡して面談の進行する。


「では戦姫の剣舞さん側からルナさんにお伝えしたい事やお聞きしたいことなどありますか?」

「そうですね...」


するとリサさんは部屋をぐるっと見渡して何かを探しているようなそぶりを見せてからルナやミーシャさんの間にある宙へと視線を向ける。


「...どこの誰かは存じ上げませんが、覗きとは感心しませんね」

「「?!」」


ほう、隠ぺいはほとんど完璧にしていたはずなのだけどな。俺の監視に気づいたリサさんの指摘にルナとミーシャが慌ててフォローを入れる。


「そ、そんなはずはないですけどね~!ねぇ、ルナさん!!」

「はっ、はい!覗きなんてないと思います...!」


焦っている感じが丸見えの二人のフォローは完全に逆効果でリサさんに指摘が当たっているという確信を持たせてしまった。


「...お二人とも嘘がお下手ですね。まあご存じなのなら不審者という訳でもないのでしょう。良かったらお話しいただけませんか?」

「それは...あの...」

『すまない、俺がミーシャに頼んだんだ。彼女をあまり責めないでやってくれ』


俺は監視用の魔道具に付けていたマイク機能を通して応接室にいるみんなに声を届ける。いきなり知らない声が聞こえ始めたことに戦姫の剣舞の面々は驚いて無意識に戦闘態勢に入ろうとしていた。


「だ、誰ですか?!」

『俺はSSランク冒険者のオルタナ。そこにいるルナのことが心配で二人に了承を得てこうやって別室から見させてもらっていた。君たちに許可を得なかったことは大変申し訳ない』

「「「「お、オルタナさん?!」」」」


俺が名乗ったところ、再び戦姫の剣舞の面々は驚いて少しの間呆然としていた。


「す、すみません!私がいろんなパーティの方から勧誘を受けるのが初めてで心配なのでオルタナさんにも同席して欲しいとお願いしたんです。最終的にこういう形でこっそり話を聞いてもらうことになったのですが、そのことでご不快な思いをさせてしまい大変申し訳ありません!!」

「い、いや別に不快にはなってないですよ!少し驚きはしましたが、あのオルタナさんなら大丈夫です!!むしろこの場に同席していただいても全然問題ないです!!!」


なんだか先ほどまでとは少し様子の違ってとても早口で少し声量も大きくなっているような感じのリサさん。他のメンバーが少し興奮気味のリサさんを宥めて落ち着かせている。


そうして彼女たちの了承の元、俺も応接室でルナの面談に同席させてもらうことになった。

それから数分後、俺が応接室に到着してノックをして部屋の中に入る。入ってきた俺の姿を見てリサさんは何故か驚いて手で口元を覆っている。


「ほ、本物だ~!!」

「ほ、本物...?」

「あっ、すみません。うちのリーダーが...」


子供のようにテンションのあがっているリサさんを他のメンバーが何とか落ち着かせることに成功した。冷静になった彼女は再び最初の時のように落ち着いた口調で話し始める。


「お、お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。実は私、オルタナさんの大ファンでして...こうして直接お話しできるのが嬉しくはしゃいでしまいました」

「そうなのか、それは嬉しい話だな」


まさか自分にファンがいるだなんて思ってもみなかったから少し俺も嬉しくてテンションが上がりそうになる。だがオルタナとしてのイメージを守るために我慢して冷静に話を続ける。


「改めて、先ほどは大変失礼した。その上で図々しいお願いにはなるが、ルナとの面談はそのことを考慮しないで進めて欲しい。この通りだ」

「あ、頭を上げてください!オルタナさん!!」


俺が戦姫の剣舞に頭を下げると慌てて彼女たち全員が立ち上がった。誰も不機嫌になるどころか、俺のことを気遣ってくれている人格者たちばかりなようだ。


「私たちは全く気にしていませんので謝らなくて大丈夫です!それより不思議なのはオルタナさんならもっと完璧に監視の目を分からなくすることは出来たのではないですか?と言っても私もギリギリ勘で微かに見られているような気がした程度なので当てずっぽうみたいな感じではありますが...」

「...その通り、先ほどの偽装は大体8割ほどの精度だ。それでもSランク冒険者でも気付ける者はほぼいないレベルの偽装だった。試すような形になって申し訳ないが、もし今回の面談の中にあの偽装に気づく者がいるのか...つまりどれほどの実力なのかを実際に確かめて見たくてな」


実は監視の偽装を通じてそのようなことを考えていたということを話していると、横からミーシャさんのそんなことをしていたんですかとでも言いたげな視線がこちらへと突き刺さってくる。


「そ、それでは私は...」

「ああ、正直かなり見込みがある。君たちならSランクに余裕で辿り着けるだろう」


俺がそのように言うと彼女たちは互いに嬉しそうに顔を見合していた。そんな彼女たちの雰囲気からパーティの空気感も何となく掴めてきていた。


「それではミーシャ、面談の続きをしてくれ」

「分かりました。では改めまして戦姫の剣舞の皆さんからルナさんへ聞きたいことや伝えたいことなどありますか?」


そうして再びルナと戦姫の剣舞との面談が再開した。互いにかなり積極的に話し合うことができ、それに話もとても弾んでおり空気が良くて好印象であった。

ルナもかなり笑顔で楽しそうに彼女たちと話をしており、おそらく俺の見た感じでは今までのパーティの中でも一番ルナとの相性がよさそうなところだと思う。


そうして予定よりも少し長くなってしまった最後の面談も終了し、戦姫の剣舞がギルドの職員に連れられて応接室から退出していった。


「ルナ、彼女たちはどうだった?」

「はい、とてもいい人たちでパーティの雰囲気もとても素敵でした」


どうやらルナも彼女たちには好印象を抱いており、どこか安心したような表情をしていた。こうなったらほとんど決まったも同然だろう。


「これで全ての面談が終わったわけだが、まだすぐに決める必要はない。加入の是非を申請する猶予はまだまだあるからな。今まで面談で話してきたことを思い出しながらじっくりと考えるといい」

「...はい、そうします」


俺の言葉を聞いたルナは何やら少し言葉に詰まりながら返事を返した。俺は特に気に留めることもなく、今日のところは解散することにした。

そんな俺の後ろ姿を曇った表情で見つめているルナのことは露も知らず...

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