称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう

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第五章 王都魔物侵攻編

第101話 グランドマスター vs マグマウルフ・イクシード

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「グルルルゥ...」


グランドマスターとマグマウルフ・イクシードは互いに互いの出方を窺っており、緊張感が漂う中睨み合いを続けていた。

グランドマスターはかつて対峙した魔王のことを思い出し、目の前の魔物を同等の脅威であると想定していた。過大評価をしすぎているかもしれないが、あの勇者でさえ完全勝利することは叶わなかった存在であるが故に彼はどうしても魔王の面影がチラついてしまっていた。

一方、マグマウルフの方は相手が自身を脅かしかねない強者であることを野生の本能で察していた。そのため力押しではなく、相手の隙をつく巧妙さを用いた頭脳戦をしていかなければいけないと考えていた。


元々ウルフ種は群れで行動する社会性を持った種族であるために基礎知力が高い。そのため一対一では全く歯が立たない魔物相手でもウルフ種は集団で器用に戦略立てて狩りを行う。

特にマグマウルフは過酷な火山地帯で生き抜くために一般的なウルフ種よりも知力を含めたほぼ全てのステータスの数値がウルフ種の中で最高クラスと言われている。そんなマグマウルフが超越種となった今、人族や魔族などの平均知力が高い種族の中でも最高峰の知力を持っているのである。


「ボアアアアアァァ!!!!!!!」


長い膠着状態から一変してマグマウルフ・イクシードはグランドマスターに向かって口から超高温の炎の弾を放ってきた。その攻撃は瞬きの間にグランドマスターの目の前にまで迫り、通り道である直接触れていない地面すらも溶解させてしまっていた。


「はああっ!」


グランドマスターはすぐさま正面に向かってきている火炎に対して高圧力で放たれる破壊力の高い水魔法で応戦した。すると互いの攻撃がぶつかり合い、熱で気化した水が爆風と共に辺り一帯に霧のように立ち込めていった。

広範囲に広がった水蒸気によって視界が奪われる。
霧の濃度は視覚では相手の居場所を把握するのが困難なレベルであった。


「ガアアアァァァ!!!」


すると突然、グランドマスターの背後の霧の中から勢いよくマグマウルフ・イクシードが迷いなく飛び出してきた。その狙いはこの濃い霧の中なのにもかかわらずまるで見えているかのように正確にグランドマスターの頭に向かって鋭利な爪を持つ前足での攻撃が放たれていた。


「ふんっ!」


しかしグランドマスターは背後を振り返ることもなくマグマウルフ・イクシードが霧から出てきたタイミングで魔法を発動させた。その直後、あと少しで彼の頭部を吹き飛ばそうとしていた前足がピタリと動きを止めてしまった。

グランドマスターがゆっくりと振り返るとそこには霧の中では見えにくいほどの細い土の棘が何本も地面からマグマウルフ・イクシードの胴体、および頭部と攻撃をしようとしていた前足を貫いていたのである。


「...君はおそらくこの霧の中でも匂いで私の位置が分かるのだろう。だがしかし、私だって視界を奪われたところで周囲の魔力の些細な変化や空気の流れで君の位置は特定できる」


多くの棘に貫かれているマグマウルフ・イクシードは苛立ちの表情を浮かべながらグランドマスターの方をじっと睨んでいた。頭や胸などに明らかな致命傷を受けているのにも関わらず、未だに眼光がギラギラと輝いている。


「グルルルルアアアァァァァ!!!!!!!」


するとマグマウルフ・イクシードは全身からとてつもない熱量の炎を噴き上げ始めた。次第に体に刺さっていた土の棘がドロドロと溶け出していき、吹き荒れる炎が貫かれた箇所を補っていった。

ものの数秒でマグマウルフ・イクシードは致命傷の傷を含むすべての傷を修復させて完全回復を果たした。というよりかは体が炎...むしろマグマのように燃え滾り、体自体がマグマ化していた。

それに加えて先ほどまでよりも放つ魔力の濃度やプレッシャーが桁違いになっており、今までが様子見だったことを物語っていた。


「なるほど、それが君の本来の戦闘態勢ということかな。その体...普通の攻撃はさっきみたいに無効化されてしまいそうだね。ならばこちらも本気で行かせてもらおうかな」


そう呟くとグランドマスターは何もない空間から突然一本の剣を取り出してきた。ユウトのインベントリに似ているが、彼のはユニークスキル『異空間収納(ストレージ)』というもので対象の物に応じた魔力を代償として払うことで別空間に収納することが出来るというスキルである。


取り出された剣は神々しい光を放っていて、装飾もシンプルだがどこか神聖さを感じさせるような素晴らしいものであった。そしてグランドマスターがその剣を握り締めると彼の魔力に呼応してか凄まじいプレッシャーを放ち始めた。

その強烈なプレッシャーに驚いたマグマウルフ・イクシードは思わず足を少し後ろへと下げてしまった。無意識だったその行動に気づいたマグマウルフ・イクシードは今までよりもさらに強いプレッシャーを放ち始めた。


「この剣はね、私が勇者様との旅で勇者様から頂いた魔剣なんだ。魔王を倒して世界を危機から守るために、そして少しでも勇者様たちの力になるために振るったこの剣...再び使うことになるとはね...」


互いの強烈なプレッシャーがぶつかり合い、実際に肌を刺すようなピリピリとした感覚が周囲を包み込む。

そして次の瞬間、強烈な衝撃波を放ちながら二人の攻撃がぶつかり合う。魔剣と鉤爪が互いに譲らずに熱い火花を散らしている。

しかし流石にグランドマスターといえど現在の超高温状態のマグマウルフ・イクシードの近くに長時間いることができずに一度距離を取る。


だがそれを見計らったかのようにマグマウルフ・イクシードは超破壊力の炎ブレスを口から放射した。

直撃すれば灰も残らず溶け去るほどのブレスに対してグランドマスターは魔力によって強化された魔剣を一振りした。

するとまるで固形物のように炎ブレスが真っ二つに切り裂かれ、その一振りの衝撃波がマグマウルフ・イクシードへと襲いかかる。


まさかの出来事に対応が遅れたマグマウルフ・イクシードはその斬撃をその身に受けてしまった。だがこのマグマ状態のマグマウルフ・イクシードには物理攻撃によるダメージは効くはずもない。


「グルアァァ...!?」


そのように思われたが、何故か斬撃を受けたマグマウルフ・イクシードは強烈な痛みに襲われていた。体の傷はすでに治っているのにも関わらずだ。


「どう、痛いだろう?この魔剣はどんなものでも対象にダメージを蓄積させることが可能なんだ。君の体がマグマになろうともどれだけ物理攻撃に耐性があろうとも関係ない。耐性や無効化すら意味をなさない、斬れば斬るほど傷が回復しようともダメージは蓄積するからね」

「グアアアア!!!!!!!!」


マグマウルフ・イクシードはグランドマスターの言っていることが分かるのか分からないのか定かではないが、再び距離を取って大きな遠吠えをし始めた。


するとマグマウルフ・イクシードの頭上遥か上空に巨大な魔法陣が出現した。その魔法陣からは見た目はほとんど流星に近しい巨大な火球を何個も出現させ、グランドマスターに向かってそれらを放出し始めた。


まさしく一国をも消し去りかねないマグマウルフ・イクシードのこの大技に対して取ることが出来るグランドマスターの行動は限られていた。だがしかし彼はどんな状況であろうともこの行動が当たり前だと言わんばかりに一瞬にして行動に移す。


「背後に守るものがあるからね!逃げるわけにはいかないんだよ!!!」


グランドマスターは自身に身体強化などの補助効果を出来る限り付与すると降ってくる流星群に向かって大きくジャンプした。風魔法も駆使して空中での軌道を上手くコントロールし最初の火球に迫っていく。


「口伝剣技:無限連斬!!!!!」


すると目にも止まらぬ速さの斬撃が巨大火球を幾重にも斬り刻む。原型を保つことが出来なくなった巨大火球は空中で爆発を起こして花火のように辺りに散っていった。

そのままグランドマスターの勢いは止まらずに次々と降り注ぐ流星群を斬り刻んでは魔法陣のところまで飛び上がっていく。


そうして出てきたすべての火球を斬り刻み、魔法の発生源である魔法陣に辿り着いた。彼は火球を斬り刻んだ時と同じように魔法陣にも無数の斬撃を繰り出した。すると巨大な魔法陣はその機能を停止して空中に砕け散っていった。

剣で魔法陣を斬り刻むなんて前代未聞の出来事であるが、彼の持つ魔剣であればどんなものにでもダメージを蓄積させることが出来る。だからこそこのような芸当が可能であったのだ。


マグマウルフ・イクシードは自身の最大級の魔法を斬り刻まれるとは思わず呆気に取られていた。だがすぐさまグランドマスターを仕留めるべく大きく飛び上がる。

まるでロケットのように炎の噴出による推進力を加えてジャンプしてきたマグマウルフ・イクシードは瞬く間に空中にいるグランドマスターの付近まで接近していた。


空中なら避けられないと判断したマグマウルフ・イクシードは超高温のその体をさらに燃え滾らせてグランドマスターめがけて突っ込んできていた。

それに気づいたグランドマスターは器用に空中で方向転換をして同じように炎魔法の推進力を得て高速でマグマウルフ・イクシードを迎え撃つ。


「はああああああああああああ!!!」

「グルルルルアアアァァァァ!!!!!!」


二つの光がぶつかり合い空中で巨大な爆発が発生した。
その爆風と共に両者ともに地上へと落ちてくる。


グランドマスターは風魔法で上手く減速して着地を成功させる。
しかしながらマグマウルフ・イクシードは何もすることなく地面へと叩きつけられた。

持ち前の再生力で体の形状は元に戻っていったのだが全く立ち上がる気配がない。
よく見てみると息も絶え絶えの状態であった。


「よくそこまでのダメージを蓄積させて辛うじてでも生きていられるな。さすがは種の壁を超えたものだ。だがこれで終わりだ」


グランドマスターは再び魔剣をマグマウルフ・イクシードに振るう。
目にも止まらない10連撃がとどめの一撃となった。

体のマグマが元の毛皮に戻っていき、目から光が消えた。そして辺りには先ほどまでとは違って少しひんやりとした涼しい風が吹き始めてきた。



グランドマスターはマグマウルフ・イクシードの最後を見届けると魔剣を異空間収納へとしまうと黒幕のいる最奥の方へと視線を向ける。少し迷う素振りを見せたが、彼は最奥から視線を外して他の超越種討伐の援護へと向かっていった。

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