称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう

文字の大きさ
上 下
83 / 122
第四章 極寒山脈の凶龍編

第75話 父親の願い

しおりを挟む

覚悟の告白を経て三人の気持ちを打ち明け合った翌日。
俺はなんとアルバート公爵様から呼び出された。


セレナお嬢様も同じく呼ばれているということは十中八九、昨日の事だろう。俺はマリアさんから呼び出されたことを聞いた時、一瞬にして顔が青ざめた。昨日は完全に忘れていたのだがお嬢様と恋愛をするということは、本人の同意だけではなく公爵様から直々に許しを得ないといけないという訳だ。

ああ、怒鳴られてボコボコに殴られるだろうな...

俺はこれから起こるであろうことを全て受け入れる覚悟を決めて公爵様のいらっしゃる部屋へとマリアさんの案内で向かう。昨日とはまた違った覚悟が必要になるんだろうなと少しばかりの疲労感を感じながらも背筋を伸ばす。


コンコンコンコンッ...


「マリアです、ユウト様をお連れしました」

「うむ、入れ」


部屋の前へと到着するとマリアさんはすぐに扉をノックした。
もう少し心の準備をする時間が欲しかったがそんなことを言える余裕はなかった。


俺は「失礼します」と綺麗なお辞儀を決めて部屋へと入る。
少しでも公爵様の怒りを鎮められればと誠意ある言動を心がけていこう。


「やあ、よく来てくれた。そこにかけてくれ」

「は、はい!」


何故だか分からないが公爵は予想よりもかなり穏やかな様子であった。俺はその穏やかさが逆に妙な不気味さを醸し出しているように感じ、より一層気を引き締めることにした。

俺がソファに腰かけるとそこにはすでにセレナお嬢様も公爵様の隣で座っていた。彼女もこれから起こることに緊張しているのかもしれないと思ってチラッと顔を見てみてみると意外にもその表情は緩んでおり、やる事をやり切った満足感のようなものを醸し出していた。


俺はもう状況がよく分からなくなったため思考を停止して流れに身を任せることにした。とりあえず怒られたら謝って誠意を見せて覚悟を示そう。ただそれだけを心に決めてあとは受け身で待つことにした。


「さて、今日来てもらったのは他でもない...セレナのことについてだ」

「...はい」


ついに来てしまった、愛する娘に寄ってくる悪い虫を追い払う父親の怒りが炸裂する時が。俺は怒鳴られるのと同時に殴られても仕方がないと歯を食いしばって瞼をぎゅっと力強く閉じる。





「...ユウト君、セレナをよろしく頼む」

「はい、すみませんでした!!!.............えっ?」


公爵様の口から出てきたまさかの言葉に俺は固く閉じていた瞼を開いて公爵様の方へと視線を向ける。すると公爵様も俺のおかしな返事に不思議そうな表情を浮かべてこちらを見ていた。


「...ん?どうして君が謝るんだ?」

「あっ、いや、てっきり『よくも大切な娘を!』と怒られるものかとばかり...」


俺がそのように率直に伝えると少し間をおいて公爵が大きな声で笑い出した。その様子を見ていたセレナお嬢様も必死に笑いをこらえる素振りを見せていた。俺、何か変なことでも言ったのだろうか...?


「あー、いやすまない。まずは誤解の無いように先に伝えておこう。私は君たち二人の関係については何も怒ってなどいないし、むしろ積極的に応援している立場なのだよ」

「えっ?!」


俺は思いもしなかった公爵の反応に驚きを隠せなかった。
許すどころか応援されていたなんて...


「ユウトさん、実は私がユウトさんに告白する前からお父様にはこのことを伝えていたんですよ」

「えっ、そうだったんですか?!」


じゃあ俺が心配する理由なんて全くなかったっていうのか...
そのことに気づいた俺はどっと疲れが押し寄せてくる感覚に襲われた。

するとアルバート様はしみじみと自らの感情を噛み締めるように話し出した。


「あれはちょうど君が王都を出発した後だったかな。セレナから君のことが好きになったという話を聞いたんだ。私も妻もこの子の話を聞いたときにはかなり驚いたものだよ。この子が誰かを好きになるということもそうだが、それ以上に私たちに何かをお願いするということ自体が初めてだったからな」


アルバート様は話ながら昔を思い出しているのかどこか遠くを見つめていた。そんな彼は時々言葉を詰まらせながらもゆっくりと語っていく。俺もそんなアルバート様の気持ちを真剣に受け止めようと襟を正す気持ちで向き合う。


「私たちは今までこの子に苦労を掛けた上に、君も知っていると思うがその魔眼の持つ能力のせいで他の貴族たちからは気味悪がられて避けられてしまっている始末だ。どうにかこの子の能力をいい方向に活かせないか試行錯誤してみたが結局何も変えることは出来なかった。そうして結果的にセレナは家族以外に対して心を閉ざしてしまった。そんな様子を見ていると私は...とても辛くて仕方がなかった。何もこの子にしてやれない親としての無力さと申し訳ない気持ちで、本当に申し訳なかった...」


すると話しているアルバート様の目から一筋の涙が流れ落ちる。
しかし横に座っているセレナお嬢様の頭をなでながら笑顔で話を続ける。


「けれどもあの事件を経て、セレナは君と出会いどうしてだかまた心を開くようになってくれた。そして以前よりも明るく前向きになったようにも感じるのだ。それもこれも君という存在がセレナを誘拐犯からも、そして心の闇からも救ってくれたからに他ならないと私は思っている。そしてそんな君にセレナが恋をしたというんだ、親としては応援こそすれこのことに反対する理由なんてないだろう?」

「あ、ありがとうございます」


俺もアルバート様につられたのか目頭が熱くなっていた。
それと同時に心の中から暖かい感情が湧き出しているのも感じる。


「それにだ、貴族として娘を嫁がせる相手が君であることは非常にありがたいのだよ。今や君は仮とはいえエストピーク殿に認められたSランク冒険者だ。そんな実力のある者に私の娘を嫁がせられるのだから貴族としても鼻が高い。親としても貴族としてもこの子の幸せを願うのならば、君との結婚を認める以上のことなどないと私は思っている」


アルバート様は真剣な眼差しでこちらを見つめる。
その目には親として真に子供を想う気持ちが込められていることをひしひしと感じた。


「セレナお嬢様、いやセレナさんのことは必ず幸せにします!今までの辛かったことや悲しかったことがかき消せるぐらい楽しいことや嬉しいことを積み上げていきたいと思います!!」


俺はアルバート様を、いや目の前にいる大切な娘をもつ一人の父親を安心させるため自身の覚悟をことばでぶつけた。その言葉をアルバート様の横で聞いていたセレナさんは口に手を当てて目から大粒の涙をボロボロと流していた。


「ああ、君になら任せられると信じている。どうかセレナを幸せにしてやってくれ」

「はい、もちろんです」


俺とアルバート様は互いに深く深く頭を下げる。
その長い間、部屋には静寂とセレナさんの控えめの泣き声だけが響いていた。






「...あの、アルバート様。大変恐縮なのですが、実は...」


セレナさんの件がひと段落ついて談笑モードになっていたところで俺はもう一つ切り出しにくい話題をアルバート様に伝えることにした。それはもちろんレイナさんのことだ。いくら貴族にとって一夫多妻制が一般的であるとはいえ、こんなにも幸せを願っている娘のほかに愛している人がいるというのはどう思うのか正直俺には未知数だ。

そうして俺はレイナさんのことを伝え終わるとこれもまた意外な反応が返ってきた。


「ああ、もちろんその件についてもセレナから聞いている。それについてはセレナが問題ないと言っているから私からは特に何もない。ただセレナのことを大切に、幸せにしてくれさえすれば構わない。私たち貴族にとって何人も妻がいるのは特に変なことでもないからね。逆に私のように一人の妻しかいないほうが珍しいと言ってもいいぐらいだ」


思った以上に寛容な返事で何だか少し気が抜けるような感じがした。まあただ公爵様のお許しを得たということで大きな問題は乗り越えたって感じかな。あとはレイナさんの両親に挨拶か、それもそれで緊張するな...



そうして俺たちはアルバート様と少し話をし、セレナさんとともに部屋を後にした。その帰りにセレナさんが近寄ってきたかと思ったら少し小さな声でこちらへと話しかけてきた。


「そういえば、ユウトさん。先ほど私のことを『セレナさん』って呼んでくれましたよね?」

「あっ、すみません。その場の勢いで呼んでしまいました。もし嫌ならもとに戻しますが...」

「いえ、そうじゃなくて...もしよかったら『セレナ』って呼び捨てで呼んでもらえませんか?」


そうお願いしてきたセレナさんは少し顔を赤らめて上目遣いという何ともドキッとするシチュエーションであった。そんな彼女を見て俺は胸の高鳴りが抑えられなくなり心拍数が急上昇してしまった。


「あっ、えーっと...せ、セレナ」

「はい!ありがとうございます、ユウトさん!!」


すると俺の呼び捨てがそんなにも嬉しかったのか満面の笑みで微笑んだ。
その笑顔は反則だろ...

だがしかし俺はお金や地位なんかよりもよっぽど価値のあるものが近くにあるということが本当に嬉しく、幸せな感情がずっと湧き出続けてきていた。これが自分の幸せの形なんだとそう思った。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...