80 / 122
第四章 極寒山脈の凶龍編
第72話 凄腕鍛冶師と希少魔晶石
しおりを挟むボルグさんのお気に召したようでその後はトントン拍子で話が進んでいった。気に入られる前と後ではボルグさんの態度が全く違い過ぎるのにちょっと戸惑ったが事前にマリアさんから癖がある人だと聞いていたこともあって、まあこういう人なんだと何とか納得することにした。
「ところでお前さんはどういったものが欲しいんだ?」
「そうですね...防具に関しては軽くて動きやすいのがいいですね。ある程度の防御力や各種耐性系が付与されているとなお嬉しいって感じです。武器は片手直剣で耐久力が高くて魔力との親和性があればいいなと」
俺が要望を伝えきるとボルグさんはひげを触りながら少し考え込んだ。
そうして俺の姿をじっくりと上から下へと観察し始めた。
「お前さん、要望通りの武器や防具を作れんことはないが...ちょいと、いやかなり値段が張るぞ」
「ちなみにどのくらい必要そうですか?」
「少し素材の質を落とせばもっと安くは出来ると思うが、一番いいものを使って作るとなるとざっと...金貨120枚といったところか。もちろん性能は最高クラスになることを約束できるレベルだ」
うわっ、めちゃくちゃ値段高いなっ!でも王都で一二を争う鍛冶師が最高クラスのものを作ってくれるというのは非常に魅力的だ。武器や防具は品質が高ければ高いほどいいのだから。
「では金貨120枚お支払いしますのでボルグさんが作れる最高の装備をぜひお願いします!」
「お、お前さんそんな大金払えるのか?!」
まあ驚くのも無理もない、普通そんな金額をほいほい出せる一般人なんかいないからな。しかし俺は運よく以前アルバート様から誘拐事件の謝礼として大金を貰っていたからな。
俺は証拠として手元から王金貨一枚と金貨20枚を机の上に置いて見せる。
それを見たボルグさんは目を丸くして仰天し、視線を俺とお金の間で何度も往復させていた。
「...こうも簡単にこんな大金が出せるとは恐れ入ったぜ。よしっ、任せて置け!お望みの最高の装備を作ってやる!!!」
「ぜひよろしくお願いします!!」
そうして装備の制作依頼は無事にボルグさんが了承してくれることとなった。しかし出来上がり時期の話になって少し雲行きが怪しくなてしまった。
「作るのに必要な素材がある程度は入手出来る見込みがあるんだが、ただ一つ武器に使う魔晶石なんだが、良い品質のものがいつ手に入るかが今の段階では分からないんだ。だから少しばかり時間がかかってしまうがいいか?」
「えっ...ちなみにその魔晶石が手に入ればどれくらいで完成できそうですか?」
「そうだな、急げば二週間もかからず出来ると思うが...」
俺はマリアさんと視線を合わせてどうしたものかと考え込んだ。今すぐに魔晶石を用意出来れば俺が依頼に出発するまでに完成する可能性があるが、その肝心の魔晶石がいつ入手できるかが分からないとなるとほぼ間に合わないということだろう。
良い品質の魔晶石が用意出来れば...
「あっ、そういえば!」
俺はふと手持ちにある例の魔晶石が使えるのではないかと気づき、それをボルグさんに確認してもらうことにした。そして俺はすぐさまバッグの中からゴブリン・イクシードの魔晶石を取り出す。
「なっ?!そ、それは?!?!?!」
「ゆ、ユウトさん?!それは一体...?!」
俺がバッグから魔晶石を取り出すと、それを見ていた二人が俺から少し遠ざかるかのように後ろへとたじろいだ。二人ともこの魔晶石の質がどれほど高いのか一目で見抜いたようだ。
「お、お前さんそんな魔晶石一体どこで?!」
「詳しくはお話しできませんが、これは以前倒した魔物からゲットした魔晶石です。これなら素材の魔晶石として使えますか?」
俺はボルグさんにゴブリン・イクシードの魔晶石を手渡して素材として使えるかどうかを尋ねてみた。するとボルグさんは困惑した表情で魔晶石を見つめて答える。
「いやいや、使えるも何も使おうと思っていた魔晶石の質をはるかに超えとるわ!これを使っていいなら想定以上の質の装備が作れるだろうよ...」
「こんな魔晶石見たことないですよ、ユウト様。一体どんな魔物を狩ればこんなものを取れるんですか...」
二人とも魔晶石に圧倒されて視線をその魔晶石から離せずにいた。まあ今のままじゃインベントリの肥やしになっていたわけだしせっかく使う機会があるなら使っておくべきだろう。
「ぜひこの魔晶石を使って最高の装備をよろしくお願いします。ただこの魔晶石の件は他言無用でお願いします。ギルドマスターとグランドマスターがこの魔晶石の存在が知れ渡ると最悪王都で内乱が起こるとまで言っていたので...どうかご内密に」
「おいおい、そんな危ねぇ代物を簡単に渡すんじゃねえよ...!」
そんな言葉とは裏腹に、ボルグさんはこの魔晶石を目の前にワクワク感を隠しれておらず自然と笑みがこぼれていた。根っからの鍛冶師としての血がうずうずしてもう抑えきれていないのだろう。
「ったく、まあ...俺は鍛冶師だしな。最高の依頼に最高の素材が目の前にあるんじゃ最高の装備を作らないわけにはいかないってもんよな!」
「楽しみにしてます!」
そうして俺はゴブリン・イクシードの魔晶石をボルグさんに預ける。すると今すぐにでも作り始めたいと言わんばかりにボルグさんは急いで店の奥へと行ってしまった。
その貴重さゆえに扱いに困っていたあの魔晶石だったが、マリアさんが太鼓判を押す鍛冶師なのだから彼にあの魔晶石を託すのが一番いいと思う。インベントリの肥やしから新たに俺の相棒へと頼もしい存在になってくれることを祈る。
そうして俺たちは必要なものを全て買い揃えることが出来たので公爵邸へと帰ることにした。鍛冶屋から出ると外はすっかりとオレンジ色に染まっており、意外と話し込んでしまっていたのだと実感した。
マリアさんと屋敷へと帰ってくるとお嬢様とレイナさん、そしてセラピィの三人が帰ってきた俺たちを出迎えてくれた。しかしセラピィはいつもと変りないのだがお嬢様とレイナさん、特にレイナさんの態度が何だか少しいつもと違うような気がした。
避けられたりしているわけではないのだが何だか少し目が合いにくいような...気のせいかもしれないがそんな気がする。一体女子会で何があったのか気になったが、流石に女子会の内容を俺が聞くわけにもいかないのでとりあえず気にしないことにしよう。
さあ、あの魔晶石を使ったボルグさんの装備が一体どのようになるのか今からとても楽しみで楽しみで仕方がない。早く見てみたいとワクワクする気持ちを抑えられずに少しいつもより夜更かししてしまったのは内緒だ。
30
お気に入りに追加
3,268
あなたにおすすめの小説
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる