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第四章 極寒山脈の凶龍編

第72話 凄腕鍛冶師と希少魔晶石

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ボルグさんのお気に召したようでその後はトントン拍子で話が進んでいった。気に入られる前と後ではボルグさんの態度が全く違い過ぎるのにちょっと戸惑ったが事前にマリアさんから癖がある人だと聞いていたこともあって、まあこういう人なんだと何とか納得することにした。


「ところでお前さんはどういったものが欲しいんだ?」

「そうですね...防具に関しては軽くて動きやすいのがいいですね。ある程度の防御力や各種耐性系が付与されているとなお嬉しいって感じです。武器は片手直剣で耐久力が高くて魔力との親和性があればいいなと」


俺が要望を伝えきるとボルグさんはひげを触りながら少し考え込んだ。
そうして俺の姿をじっくりと上から下へと観察し始めた。


「お前さん、要望通りの武器や防具を作れんことはないが...ちょいと、いやかなり値段が張るぞ」

「ちなみにどのくらい必要そうですか?」

「少し素材の質を落とせばもっと安くは出来ると思うが、一番いいものを使って作るとなるとざっと...金貨120枚といったところか。もちろん性能は最高クラスになることを約束できるレベルだ」


うわっ、めちゃくちゃ値段高いなっ!でも王都で一二を争う鍛冶師が最高クラスのものを作ってくれるというのは非常に魅力的だ。武器や防具は品質が高ければ高いほどいいのだから。


「では金貨120枚お支払いしますのでボルグさんが作れる最高の装備をぜひお願いします!」

「お、お前さんそんな大金払えるのか?!」


まあ驚くのも無理もない、普通そんな金額をほいほい出せる一般人なんかいないからな。しかし俺は運よく以前アルバート様から誘拐事件の謝礼として大金を貰っていたからな。

俺は証拠として手元から王金貨一枚と金貨20枚を机の上に置いて見せる。
それを見たボルグさんは目を丸くして仰天し、視線を俺とお金の間で何度も往復させていた。


「...こうも簡単にこんな大金が出せるとは恐れ入ったぜ。よしっ、任せて置け!お望みの最高の装備を作ってやる!!!」

「ぜひよろしくお願いします!!」


そうして装備の制作依頼は無事にボルグさんが了承してくれることとなった。しかし出来上がり時期の話になって少し雲行きが怪しくなてしまった。


「作るのに必要な素材がある程度は入手出来る見込みがあるんだが、ただ一つ武器に使う魔晶石なんだが、良い品質のものがいつ手に入るかが今の段階では分からないんだ。だから少しばかり時間がかかってしまうがいいか?」

「えっ...ちなみにその魔晶石が手に入ればどれくらいで完成できそうですか?」

「そうだな、急げば二週間もかからず出来ると思うが...」


俺はマリアさんと視線を合わせてどうしたものかと考え込んだ。今すぐに魔晶石を用意出来れば俺が依頼に出発するまでに完成する可能性があるが、その肝心の魔晶石がいつ入手できるかが分からないとなるとほぼ間に合わないということだろう。

良い品質の魔晶石が用意出来れば...


「あっ、そういえば!」


俺はふと手持ちにある例の魔晶石が使えるのではないかと気づき、それをボルグさんに確認してもらうことにした。そして俺はすぐさまバッグの中からゴブリン・イクシードの魔晶石を取り出す。


「なっ?!そ、それは?!?!?!」

「ゆ、ユウトさん?!それは一体...?!」


俺がバッグから魔晶石を取り出すと、それを見ていた二人が俺から少し遠ざかるかのように後ろへとたじろいだ。二人ともこの魔晶石の質がどれほど高いのか一目で見抜いたようだ。


「お、お前さんそんな魔晶石一体どこで?!」

「詳しくはお話しできませんが、これは以前倒した魔物からゲットした魔晶石です。これなら素材の魔晶石として使えますか?」


俺はボルグさんにゴブリン・イクシードの魔晶石を手渡して素材として使えるかどうかを尋ねてみた。するとボルグさんは困惑した表情で魔晶石を見つめて答える。


「いやいや、使えるも何も使おうと思っていた魔晶石の質をはるかに超えとるわ!これを使っていいなら想定以上の質の装備が作れるだろうよ...」

「こんな魔晶石見たことないですよ、ユウト様。一体どんな魔物を狩ればこんなものを取れるんですか...」


二人とも魔晶石に圧倒されて視線をその魔晶石から離せずにいた。まあ今のままじゃインベントリの肥やしになっていたわけだしせっかく使う機会があるなら使っておくべきだろう。


「ぜひこの魔晶石を使って最高の装備をよろしくお願いします。ただこの魔晶石の件は他言無用でお願いします。ギルドマスターとグランドマスターがこの魔晶石の存在が知れ渡ると最悪王都で内乱が起こるとまで言っていたので...どうかご内密に」

「おいおい、そんな危ねぇ代物を簡単に渡すんじゃねえよ...!」


そんな言葉とは裏腹に、ボルグさんはこの魔晶石を目の前にワクワク感を隠しれておらず自然と笑みがこぼれていた。根っからの鍛冶師としての血がうずうずしてもう抑えきれていないのだろう。


「ったく、まあ...俺は鍛冶師だしな。最高の依頼に最高の素材が目の前にあるんじゃ最高の装備を作らないわけにはいかないってもんよな!」

「楽しみにしてます!」


そうして俺はゴブリン・イクシードの魔晶石をボルグさんに預ける。すると今すぐにでも作り始めたいと言わんばかりにボルグさんは急いで店の奥へと行ってしまった。

その貴重さゆえに扱いに困っていたあの魔晶石だったが、マリアさんが太鼓判を押す鍛冶師なのだから彼にあの魔晶石を託すのが一番いいと思う。インベントリの肥やしから新たに俺の相棒へと頼もしい存在になってくれることを祈る。


そうして俺たちは必要なものを全て買い揃えることが出来たので公爵邸へと帰ることにした。鍛冶屋から出ると外はすっかりとオレンジ色に染まっており、意外と話し込んでしまっていたのだと実感した。


マリアさんと屋敷へと帰ってくるとお嬢様とレイナさん、そしてセラピィの三人が帰ってきた俺たちを出迎えてくれた。しかしセラピィはいつもと変りないのだがお嬢様とレイナさん、特にレイナさんの態度が何だか少しいつもと違うような気がした。

避けられたりしているわけではないのだが何だか少し目が合いにくいような...気のせいかもしれないがそんな気がする。一体女子会で何があったのか気になったが、流石に女子会の内容を俺が聞くわけにもいかないのでとりあえず気にしないことにしよう。



さあ、あの魔晶石を使ったボルグさんの装備が一体どのようになるのか今からとても楽しみで楽しみで仕方がない。早く見てみたいとワクワクする気持ちを抑えられずに少しいつもより夜更かししてしまったのは内緒だ。
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