称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう

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第四章 極寒山脈の凶龍編

第71話 買い出し、そして鍛冶親父

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朝食を食べ終えた俺は少し休憩した後にマリアさんの案内で依頼に必要な物資の買い出しに行くことになった。屋敷を出発して二人で並んで歩いているときに思ったが、何気にマリアさんと落ち着いた場面で一対一で話すのは初めてかもしれない。


少し軽い世間話などを話しながら俺たちはまず王都最大級の商店というアソート商店にやってきた。そこは完全に俺の想像していた『商店』という感じではなく、どちらかといえば『百貨店』に近いようなお店だった。

建物も非常に大きくて広く、至る所に商品が並べられておりどこに何が置いてあるのかが初見では正直全く分かる気がしなかった。本当にマリアさんに案内してもらってよかったと思ったものだ。


「とりあえず冒険者に必要なものが売っているところに行きましょうか?」

「はい、お願いします!」


ただただマリアさんについていくことしか出来ない今の俺の状況は完全にお姉ちゃんの買い物に連れられてきた弟のような感じだろう。それに珍しいものがいっぱい置いてあるので自然とキョロキョロしてしまっていたこともその様子に拍車をかけたに違いない。


「ここならおそらく必要な道具類は全て手に入ると思われます。ただ武器や防具関係はここには売っていないので別のところに行かないといけませんけれど」

「ではまず道具系から揃えていくことにしますね」


マリアさんに冒険者用品コーナー的な場所に案内された俺は必要なものを手早く探して購入することにする。事前に必要なものはリストアップしてあったので考える時間を省いて買い物が出来ている。やはり事前準備というのは大切だな。


「とりあえず必要な道具はこんなものですかね」

「もういいんですか?もっといろんな道具を吟味されてはいかがですか?」


俺が一通り必要なものを集めてお金を払っているとマリアさんがそのようなことを言ってきた。俺が「いや、必要なものはもう買ったんで...」というとマリアさんは少し悩んだそぶりを見せたかと思うと次の瞬間、俺の手を掴んでどこかへと連れていかれた。


「マリアさん?!どうしたんですか?!」

「ユウト様、備えあれば憂いなしですよ。初のSランク依頼なんですから余分に買っておくぐらいがちょうどいいと思います。おせっかいかもしれませんがユウト様に何かあればお嬢様が悲しみますから」


そう言われてしまえば俺からは返す言葉がない。たしかに初めてのSランク依頼なんだから準備をしすぎなほど気をつけておくことに越したことはないだろう。自分では十分だと思っていてもマリアさんみたいな実力者のアドバイスは素直に聞き入れておいた方が自分のためだと思う。


そうして俺たちは二人でいろんな道具を吟味しながらあーでもないこーでもないと言いあっていろんな道具を買いそろえていった。こんな感じで買い物をするのは何だか新鮮だったのでちょっと楽しかった。

ふたを開けてみればかなりの買い物をし、金額もかなりの額になっていたが最近の収入を考えたらあまり痛いものでもなかった。俺も出世したもんだ。

マリアさんも金額を見て「少し買い過ぎましたかね...」とちょっと顔を曇らせていたがその直後に「ですが命よりかは全然安いですね」と自己解決していた。全くもってその通りだが、流石にこの金額は安くはないだろう...と心の中で少し突っ込んだのは内緒だ。

そして買った道具をマジックバッグに入れるふりをしながらインベントリの中へと入れ込む。一つずつバッグの中に入れるふりをしながらインベントリに収納していったので正直面倒だったが、インベントリというスキルは本当に信頼のおける人以外には知られるわけにはいかないので仕方がない。

まあマジックバッグも貴重な物なのには変わりないのだから面倒な輩からこのバッグが狙われてしまうという危険はあるのだけどね。まあ別にその時はバッグを取られても俺には全くの痛手がないのが少し面白いところではある。


そうして俺たちはアソート商店を後にして次の場所へと向かうことにした。次の場所はマリアさんも冒険者時代に利用したことがある王都の中でも一二を争う凄腕の鍛冶屋なのだという。

ただちょっと気がかりなのが、何でもそこの店の鍛冶師であり店主でもある人物が少し癖のある人物なのだという。マリアさんは「ユウト様なら問題ないと思います」と軽く流していたがどういうことなのだろうか...


「ここですユウト様」

「...ここですか?」


人気のない迷路のような裏路地を数分ほど進んでいったところに隠れ家的なお店がそこにはあった。お店の看板も大々的にあるわけではなく表札程度に『ボルグ鍛冶屋』と書かれているだけだ。見た目だけではお店があるということも営業しているのかどうかも分かりにくい。

困惑していた俺とは違い、マリアさんは何の迷いもなくお店のドアへと向かっていった。ドアを開けるとチリンチリンッと鈴の音がお店の中へと響く。俺もマリアさんと共にお店の中へと入っていく。


「こんにちは、ボルグさん」

「...誰だ?」


マリアさんの挨拶に少し遅れて薄暗いお店の奥から野太い声が聞こえてきた。すると床の木がきしむ音と共に小柄な男性がお店の奥から歩いてこちらへとやってきた。身長はおそらく140cmあるかないかぐらいで顔がひげで覆われたいわゆるドワーフの見た目そのままの男性がそこにいた。


「ん...?お前さんは...」


そう呟き長いひげを触りながらマリアさんをじっと見つめていた。
すると次の瞬間何か思い出したかのように目を大きく見開いてマリアさんを指差した。


「お、お前さん、あのマリアか?!」

「はい、マリアです。お久しぶりですね」


ボルグさんはようやくマリアさんのことを思い出したようで大きな声で笑いながら近くの机をたたいていた。声も行動もかなり豪快な気前のいいおやじっていう感じで癖があるようにはあまり感じないけど...


「本当に久しぶりだな!一体何してたんだ?それに冒険者の仕事はどうなんだ?」

「冒険者はすでに引退しました。今はロードウィズダム公爵様の元でメイドの仕事をしています」


マリアさんのその言葉を聞くや否やまるで時が止まったかのように先ほどまで豪快に笑っていたボルグさんが目を丸くして黙り込んでしまっていた。しばらく沈黙の時間が流れたあとゆっくりとボルグさんは口を開いた。


「お、お前さんが公爵家のメイド?!言われてみればメイド服なんか着てやがるし...気でも狂ったか?」

「失礼ですね、正気ですよ。いろいろ事情がありましてメイドをすることになったんです。ですが今は冒険者の時と同じくらい、いやそれ以上に充実した日々を過ごしていますよ」


そう幸せそうに話すマリアさんを見てボルグさんは何か不思議そうな顔をしながらマリアさんをじっと見つめている。冒険者時代のマリアさんってそこまで今とはギャップがあったのだろうか...?


「ふんっ、まあお前さんが良いっていうなら別に何も言うことはないさ。ところで今日は何の用だ?そこの坊主と何か関係あるのかい」


すると先ほどまでの表情とは打って変わって非常に鋭い目つきで俺の方を見て、いや睨んできた。この変わりように俺は少し背筋が伸びる。もしかして第一印象が悪かったのかな...?


「今日はこちらのユウト様にこちらの鍛冶屋を紹介しに来ました」

「初めまして、ユウトと申します。よろしくお願いします」


俺は冷静に落ち着いてボルグさんに挨拶をする。
正直内心はドキドキしまくっていたけれど悟られないように必死に平静を装う。


「もしかして貴族か、その男?金で物言わす連中に俺の作品は売らんぞ」


そう言うと先ほど以上にきつい目で俺のことを睨んできた。
物凄い敵意を向けられているんだが、俺何かしたかな...


「いえ、この方は貴族ではなく一般の冒険者です。それに実力ならご心配なく、確実に全盛期の私以上でグランドマスターもユウト様の実力は認めておられます」

「何?あのグランドマスターがだと?」


マリアさんの助け舟のおかげでボルグさんの俺を見る目が一気に変わった。敵意むき出しの視線から物珍しいものを興味津々に見つめているような目になっていた。


「おい、お前さん。少し俺の手を握れ」

「は、はい。分かりました」


俺は理由を聞くことなく言われた通りに差し出されたボルグさんの手を握った。すると次の瞬間、ボルグさんが一気に力を入れて俺の手を握りつぶそうとしてきた。一瞬びっくりしたけれど、俺も握り返した方が良いのかなと力を入れていく。俺が力を入れ返すにつれてボルグさんの力もどんどん増していき、正直ボルグさんの手が心配になるほどの力を入れるまでに発展していった。

しかしそれでもボルグさんも負けじとあり得ないほどの力で握り返してくる。俺の人並外れたステータスから考えて普通だったら手が複雑骨折していてもおかしくないのに、それに対抗しているということからボルグさんも普通ではないことがわかる。

結局そのあとも拮抗は続いていき、十数秒経った後に俺の力が徐々にボルグさんのを上回っていったところでボルグさんがようやく声を発した。


「もういい...」

「あっ、はい」


そう告げると俺は一気に力を抜いて手を離した。ボルグさんはしばらく俺と握手をした手を見つめていたが俺の方へと視線を移すと急に俺の方へと近寄ってきた。


「お前さん、ユウトって言ったっけか」

「はい、ユウトです」

「...想像以上だ!合格だ!!」


そう豪快に笑いながら告げると俺の腰辺りを強烈な力でバシバシと叩き始めた。
いや、痛いんですけど...


「お前さんにぴったりの物を作ってやる!このボルグに任せなっ!!」


何だか気に入ってもらえたようで良かった。
まさか力比べで気に入ってもらえなければ装備を作ってもらえないなんて...

マリアさんが癖があると言っていた理由が何となく分かった気がする。

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