称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう

文字の大きさ
上 下
75 / 122
第四章 極寒山脈の凶龍編

第67話 vs 最強

しおりを挟む

「では...始め!!!」


マリアさんの合図と同時に大きな歓声が沸き起こる。
しかしそれとは裏腹に俺とグランドマスターは一歩も動くことはなかった。

さて、負けるわけにはいかないと言ったはいいがこの手合わせにどれほどの力を入れるべきか正直迷っている自分がいる。まさかこんな衆人環視の中で戦うことになるとは思ってもみなかったので、どの程度自分の実力を見せるかどうかが難しいところだ。


「...さて、そちらから来ないのであればこちらから行かせてもらうよ!」


痺れを切らしたのかグランドマスターが先にこの沈黙を破った。
すると次の瞬間...


「っ?!」


グランドマスターは10mほどあった距離を、まさかの瞬きをした一瞬で拳の射程圏内にまで詰めて来ていた。俺は油断していたため少し反応が遅れたが体をひねって右ストレートを躱した。

そして後方へと2,3m飛び退いて距離を取った。


「ふふっ、これくらいは避けてくれないとね」


そう言うとグランドマスターは楽しそうに笑った。
彼にとってはこの手合わせはじゃれ合い程度で考えているのだろうか。

それじゃあ俺もそれぐらいで行かせてもらおう。


「それじゃあ今度はこちらの番ですね」


俺はそう言うと息を吸い込んだ次の瞬間に地面を勢い良く蹴りだし、一気に距離を詰める。お返しとばかりに俺は右拳をグランドマスターに向けて放った。

しかしグランドマスターはその攻撃を笑顔のまま余裕で躱す。
まあこれぐらいは対応できるだろう、な。


俺はその攻撃の勢いのまま体をひねり、彼の左腰に強烈な蹴りを喰らわせる。たださすがは最強、この攻撃にも対応し、ガードの構えをすると同時に俺の足を掴もうとしてくる。

そこで俺は蹴りの狙いを変更して推進力として利用し、今度は左手で顔に向かって裏拳を放つ。すると彼は上半身を反らしてその攻撃を回避した。しかし俺もこの一連の流れのエネルギーを無駄にすることなく次の攻撃を仕掛けようとする。


するとグランドマスターが回避したと同時に俺は彼の左側から何か嫌な予感がしたので、攻撃を中断して少し距離を取ることにした。おそらくあのまま攻撃をしていれば強烈な反撃が来ていたのかもしれない。



一連の攻防を見ていた観衆は息を吸うのも忘れるほどこの戦いに見入っているようだ。開始直後の歓声が嘘のように今では静まり返っていた。それに所々から「何だ今の...?」「何が起きたんだ?」と想像以上のスピード感で困惑している人が多いらしい。


「ほう...なるほど。体の使い方に力の伝え方、それに戦いの勘も素晴らしいね。それじゃあ..」


手合わせが始まってから終始笑顔だったグランドマスターが一気に真剣な表情へと変化した。それと同時に先ほどまでの雰囲気とは打って変わって場の空気が重くなったかのようなプレッシャーが襲い掛かる。


「お互い探り合いはここまでにしようか」


俺はこの瞬間、先ほどまでの迷いが一気に吹き飛んだ。
これは温存など考えている場合ではなさそうだ。

グランドマスターが身体強化を使うと同時に俺も身体強化を使用する。
ここからが真の手合わせが始まっていくようだ。


次の瞬間、目の前のグランドマスターの姿が消えた...
ように見えるほどの高速で迫ってきていた。

俺も地面を強く蹴り出してグランドマスターに応戦する。
そうしてこの手合わせで初めてお互いの体がぶつかり合った。


「きゃあああああああああああ!!!!」

「うわぁぁぁああああああ!!!」


俺たちの攻防によって発生した衝撃波が暴風となって観衆たちを襲う。
多くの人たちは腕で顔や頭を覆って身を守っている。

俺もグランドマスターもあまり周囲に被害が及ばないようには立ち回っているが、拳を交えるたびに互いが互いの実力をもっと知りたいという好奇心を刺激されて徐々に激しさを増していった。


すると突如グランドマスターが至近距離から魔法による火炎弾を放ってきた。
俺は初弾を何とか躱し、そして少し距離を取った。

すると追撃として無数に物凄い速度の火炎弾が放たれた。
俺はそれらを回避しながらも反撃のチャンスを伺い続ける。


そして一瞬、弾幕が薄くなった瞬間を狙って俺はサッカーボールサイズの水球を超スピードで連続して撃ち出す。ただの水とはいえ超高速で放たれた水球は岩を砕く威力を有しているため、まともにくらえばただでは済まない。

しかしその攻撃すらもグランドマスターは一つたりとも当たることなく避け続ける。やはりこのぐらいの攻撃ではやられてくれないようだ。まあそれはお互いに思っていることだろうが...


グランドマスターも俺の隙を突いては火球を放って攻撃を仕掛けてくる。
互いに攻撃を仕掛け、避け合い続ける。

このままじゃ埒が明かないと思い、そろそろ打開の一手を打とうとしたその時...


「なっ?!」


すると攻撃を避けた先にあったはずの地面に四角形の底がかなり深い穴が空いていたのだ。俺は不意の出来事に体勢を持ち直すことが出来ずに穴へと落ちていく。そして俺が穴にはまったと分かった瞬間、穴の上方に大きな火球が発生する。空中ではまずこの攻撃は回避できないだろう。


穴に落ちていく最中、グランドマスターの顔がニヤリと笑っていたのが見えた。
くっ、まんまと嵌められたものだ。

しかしこのままやられるほどやわではない。
俺はこの状況を利用して打開の一手として組み込むことにした。


俺は魔法で演習場にある火球も含めた大量の熱エネルギーを穴の底へと集める。すると一瞬のうちにエネルギーを失った火球は消え去り、それに加えて演習場表面の熱エネルギーまでなくなったために先ほど俺が放っていた水が凍って氷床となった。


「くっ?!こ、これは...!?」


その一瞬の出来事にグランドマスターもその凍った地面に足を囚われてしまったようだ。
そして次の瞬間、辺りに強烈な爆発音らしき轟音が爆風と共に鳴り響く。


大量の熱エネルギーによって穴の奥底の空気が一気に熱されて強烈な上昇気流が発生したのだ。そしてその力を使って俺は演習場の3mほど上空に飛ばされた。上手く風魔法を駆使して上昇気流の威力を方向を操作して観衆への被害は最小限に、そして自分の身を守りながら高度や位置を操作する。


そして上空から俺はグランドマスターに向けて回避不可能な一撃を放つ。
光速に近い稲妻が頭上からグランドマスターに襲い掛かる。


「ぐぁぁぁあああああああ!!!!」


グランドマスターは氷に足を取られていたことに加えて死角からの回避不可能な速度の攻撃ということもあって俺の雷撃をまともにくらってしまった。

その雷撃の威力でグランドマスター周辺の氷は一気に解け去り、一瞬にして辺りに水蒸気が立ち込めた。俺は水蒸気の立ち込めた演習場に魔法で減速しながらゆっくりと降り立つ。さすがにこれほどの魔法を連発したので少し疲れが出ていた。


少しづつ水蒸気の靄が消え去って次第にグランドマスターの姿が見えてきた。


するとそこには膝をついて息を上げているグランドマスターの姿があった。驚くことに彼はあれほどの雷撃をまともにくらったのにもかかわらず意識を保っているのだ。

しかしながらさすがに全身が雷撃によって痺れており身動きが困難になっているようだ。


「くっ...近接戦に加えて...魔法戦闘も...驚いた」


かなりのダメージを喰らっているはずなのにも関わらずグランドマスターは俺の方を見て微かに笑みを浮かべている。彼が最初から全力で戦い続けていたら俺は無事じゃなかっただろうと思い、想像しただけで少し身震いした。


「グランドマスター、まだ続けますか?」


俺は彼に戦闘続行の意思を確認する。
ひょっとしたらまだまだ続けるとか言いだすのではないかと思って気は抜かないでおく。


「いやいや、参った。私の負けだよ」


俺はその言葉を聞いて大きく息をつく。
それと同時に張り詰めていた気も解いていく。


「しょ、勝者...冒険者ユウト!!!」

「「「「「「「・・・・・おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」」


いつの間にか場外に行ってセレナお嬢様の近くで魔法障壁を張っていたマリアさんが勝者の宣言を告げると観衆たちが大歓声を上げた。「まさかグランドマスターが負けるなんて...!」とか「おいおい、歴史をまのあたりにしてるんじゃないか?!」など興奮した声に交じって「俺の金が!!!!」と悲痛な声で叫んでいる声も聞こえてきた。もしかしてこの手合わせで賭け事してるやつがいたのか?


まあ、とりあえず勝てて良かった。
3か月の努力は無駄じゃなかったみたいだ。

俺はこの国最強と謳われるグランドマスターを手合わせという形ではあるが打ち負かすことができ、少し自信をつけることが出来た。そうして満足感を胸にこの最強との戦いは幕を閉じた。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...