50 / 122
第三章 王都誘拐事件編
第42話 護衛依頼
しおりを挟むギルマスから破格の報酬を貰ってから数日後、俺はいつものように依頼を受けるためにギルドへとやってきていた。
依頼を探そうと掲示板のところへと向かうと、偶然にも掲示板で依頼書の整理作業をしていたレイナさんと目が合った。
挨拶をしようとすると俺が声をかけるよりも早くレイナさんは俺を見るなり即座に作業を中断し、こちらの方へと駆け寄ってきたのだ。
「ユウトさん、こんにちは!実はちょうどユウトさんにお話ししたいことがあったんです」
そういうと俺はレイナさんに連れられて受付へと向かうこととなった。一体話って何の事だろうか?先日の緊急依頼の件はもう一段落ついたし、もう思い当たることはないけど。
俺はレイナさんとともに受付へとやってくるとすぐにレイナさんは一枚の依頼書を俺へと差し出した。それを一目見た瞬間に俺は忘れていた大事なことを思い出した。
「これって...」
「はい!Dランクへと昇格するために必要な護衛の依頼です。ようやく入ってきたのでいち早くユウトさんにお伝えしようと思っていたんですよ」
そうだ、ゴブリンの件ですっかり忘れていたけれどDランク昇格のために護衛依頼が入ってくるのを待っていたんだった。これでようやくDランク昇格のための第一歩を進められるわけか。
「レイナさん、ありがとうございます!ぜひ受けさせてください!!」
「承りました!では、詳しい依頼内容について説明いたしますね」
ということで俺はついにDランク昇格のために初めての護衛依頼を受けることとなった。
護衛依頼というのは依頼主を守りながら道中で魔物に襲われたり、そして盗賊などの対人戦があったりと今までに経験したことがないような依頼となるだろう。だからこそ不安もあるが、新しいことっていうのはやはりワクワクしてしまうな。
「依頼主はマーカント商会さんで、ここサウスプリングから王都セントラルまでの護衛となります。報酬の関係上、今回は一人しか雇えないとのことなので本来なら初めての方に回すような依頼ではないのですが...」
「えっ、それじゃあどうして僕に?」
そう聞くとレイナさんはニコッと笑顔を見せる。
「実はギルドマスターと相談しまして、ユウトさんなら問題ないということになりました!」
な、なるほど...?
それは信頼されているってことでいいの、かな。
「ありがとうございます...でいいんですかね」
「私もギルドマスターもユウトさんの実力は分かっていますからね!」
何だか僕への評価が異様に高い気がするけど出来ればほどほどでお願いしたいところだ。
正直あまり期待され過ぎるとプレッシャーが...
「では依頼の方を受理しておきますね。護衛依頼頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます!」
さてと、出発の日は3日後だからそれまでにいろいろと準備しておかないとな。初めての護衛依頼だからっていうのもあるけどそれに人命がかかってるんだから慢心せずに万全を期して挑まないと。
その日は他の依頼を受けずにギルドを後にした。宿に帰ってから護衛依頼の日までに用意するべきこと、そしてやるべきことをリストアップしてしっかりと準備をしていくことにする。やっぱりToDoリストっていうのは大切だからな。
そうして俺は出発までの3日間をすべて護衛の準備に費やすことになった。幸いなことにお金は十分すぎるほどあるので節約することなく必要なものは全て気兼ねなく買うことが出来る。
お金、あってよかった。
そうして色々としているとあっという間に準備期間の2日が過ぎていったのだった。そして準備期間の最終日、俺は最後の必要なものを取りに行くためにガルナ鍛冶・装備屋に向かった。
ゴブリン・イクシード戦で以前ヴェルナさんに作ってもらった剣が壊れてしまったので、もう一度ヴェルナさんにお願いして新しく作ってもらっていたのだ。その受取日が偶然にも出発の一日前という...ギリギリ間に合って本当に良かった。
「こんにちは~!」
「あっ、ユウトさんいらっしゃいませ!」
お店へと入るといつものようにエルナさんが元気よく出迎えてくれた。先日新しい剣をお願いしに来た時にも思ったが、以前と比べて一段とお店の商品の数が増えている気がする。それにどれも品質が良いものばかりだ。
「おぉ、ユウトじゃねーか!頼まれてたものならもう出来てるぜ」
「こんにちは、ヴェルナさん。今すぐ受け取ってもいいですか?」
「もちろん!今すぐ持ってくるから待っててくれ」
俺がお店に入るなりすぐにヴェルナさんもお店の奥から顔を出してくれた。
お願いしてからあまり日が経っていないのに、本当に仕事が早い。
「よっと、待たせたな。これが新しい剣だぜ」
そういうとヴェルナさんはカウンターの上に立派な片手直剣を置いた。
俺はそれを手に取って鞘から取り出して剣の感覚を確かめる。
「うん、すごく良いですね!」
「そうだろ!まあ前に作ったときからあんまり日が経ってないから品質自体は変わんねーけどな」
「いえいえ、それはすぐに剣を壊してしまった僕が悪いんですし」
そうなのだ、以前の剣は作ってもらってすぐに壊してしまった。いくら超越種と戦ったからと言っても自分の作ったものをそんなにすぐ壊されるというのは作り手にとって悲しいことだろう。本当にヴェルナさんには申し訳ない。
「いや、いいんだよ。そんだけ相手が強かったってことだろ?逆に俺の作った武具でユウトを助けられたなら鍛冶師冥利に尽きるぜ!」
そんな風に言ってもらえるなんて...何だか嬉しいな。
ちょっと目頭が熱くなってしまった。
「今度こそ簡単に壊れないように大切に使いますね!」
「おう、ありがとよ!」
俺は代金を支払い、新しい剣を手に入れた。
ついでと言ってはなんだが防具のメンテナンスも一緒にしてもらった。
これでリストアップした準備項目はすべて完了した。
あとは出発の日に寝坊しないだけだ。
なんと明日は朝早くに出発することになっているので集合時間も早いのだ。サウスプリングから王都セントラルまでは馬車で数日かかる距離があるらしいのでそのようになった。おそらく日が落ちるまでに出来るだけ先に進みたいのだろう。
俺は昔から早起きはあまり得意ではないので少し心配である。
セラピィに頼んで起こしてもらおうかな...
57
お気に入りに追加
3,320
あなたにおすすめの小説
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。
あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」
長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。
だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。
困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。
長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。
それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。
その活躍は、まさに万能!
死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。
一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。
大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。
その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。
かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。
目次
連載中 全21話
2021年2月17日 23:39 更新

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる