20 / 185
第20話 緊張して
しおりを挟む
~織原朔真視点~
榊さんと神楽坂さんとのコラボ中、僕の心臓が音を立てて鳴っているのがわかった。榊さんも神楽坂さんも登録者100万人を超える人気男性Vチューバーだ。初のコラボ相手がこのようなビッグネームなら緊張していてもおかしくない。緊張しているのもそうだが、よりにもよって何故音咲さんのキャッチフレーズを使ってしまったのか、その驚きと戸惑いによって僕は更に混乱していた。
今日音咲さんに体育館裏で助けられたことや緊張を紛らわそうとコラボ配信前にララさんのコメントを読んだことにより、音咲さんのことがどうしても頭の中に残っていたようだ。
気を付けなければならないとわかっていたが、やはり僕はこのコラボ配信にどう足掻いても緊張していたのだ。本番はどうしても場を盛り上げ、間を持たせようとしていらぬことを口走ってしまう。しばしば配信で炎上してしまうのはこういった緊張から来るのではないかと僕は悟る。
──音咲さん、この配信見てるのかな……
リスナーさんからの質問に答えていった僕だが、上手く話せているのかわからない。
『週末のアーペックスの耐久配信でプロ並の実力を持つシロナガックスさんとマッチングしましたが、あの時の気持ちなどを教えてください、とのことですが……僕もあの配信の切り抜き見ましたよ!』
榊さんはそう言った。僕はドキリとする。
「え、ちょっと炎上したの知ってます?」
榊さんは言いづらそうにしながら述べた。
『…え、えぇまぁ……』
『え?どういうこと?』
反対に神楽坂さんはその一件について知らないようだったので僕は説明した。
『──そんなことがあったんすね!?』
僕は神楽坂さんの相づちに間髪いれずに答えた。
「そうなんですけど、僕もシロナガックスさんも全くそんなこと思ってなくて、あのあとSNSで釈明というか誤解を2人で解いたって感じです」
それはよかったと神楽坂さんが言うと、進行の榊さんが次なる企画を銘打つ。そう、榊さん達とグラウンドカートをする時間となったのだ。
グラウンドカートとは子供から大人まで楽しめるレーシングゲームだ。僕もよくこのゲームの配信をしている。榊さんと神楽坂さんは所属する『LIVER・A・LIVE』が主催するグラウンドカートラバラブ杯なるモノを企画して、Vチューバー業界とグラウンドカート界を盛り上げていた。
ラバラブ杯は同接にして17万人程の人が視聴している大会だ。年に一回催されるその大会は毎年視聴者数が増加していて、注目度も高い。僕もその大会を見て、いつしか自分もVチューバー達の集まるグラウンドカートの大会に出てみたいと思ったものだ。
そして今、過去のラバラブ杯で1位と3位を獲ったことのある榊さんと神楽坂さんとグラウンドカートをしようとしている。
『え~と部屋たてますね』
榊さんから送られてきた12桁の部屋番号を入力して、榊さんと神楽坂さんの待機する場所まで移動した。
僕が部屋に入ったを機に神楽坂さんが口を開いた。
『視聴者参加型の配信なんで、参加されたい方はこの番号を記憶してください。一瞬しか見せないんで、いきますよぉ……』
『いや、ちゃんと見せないと皆わかんないでしょ!もしよかったら皆さん参加してください!……あと、参加された方は一回交代でお願いします!』
『お願いしま~す』
「宜しくお願いします!」
つっこまれた神楽坂さんに習って僕も挨拶をした。続々と僕らの部屋にリスナーの皆さんが集まってきた。
さて、グラウンドカートは最大12人でやるレーシングゲームだ。キャラクターがマシンに股がり、或いは乗り込み、コースを駆け回る。コース上には加速や対戦相手を邪魔するアイテムが散りばめられており、例えコーナリングをミスしたりコース外へ落下してしまい下位に落ちてしまっても、そのアイテムを上手く駆使すれば巻き返すことのできるゲームとなっている。
視聴者さんが集まり、コース選択画面となった。
このコラボ配信で僕が成すべきことは、自分の腕前と邪魔された時のリアクションを盛大なものにすることだ。グラウンドカートは別の動画投稿サイト、ニカニカ動画でも人気を博しており、ニカニカ動画で活動している配信者にもアピールできる筈だ。
そうと決まればどのレースも上位に食い込む必要がある。
カウントダウンに伴ってコース選択画面が終了し、いよいよレース開始となる。
僕のマシンはこのゲームで最も使用者の多い青い色のバギーだ。初級者から上級者まで利用するこのバギーは性能も含めて操作しやすい。スタート地点に集まった僕や榊さんと神楽坂さん、リスナーさん達数人がこのバギーにまたがっている。
レースの開始を告げるキャラクターが現れると、画面中央に3の数字が出現し、次に2。
『はい!ここぉ!!』
神楽坂さんが叫んだ。
それはスタートダッシュと呼ばれる技で、勿論僕もそのタイミングでアクセルを踏んでいた。
1、go!!!
12人のプレイヤーが一斉にスタートした。
榊さんと神楽坂さんとのコラボ中、僕の心臓が音を立てて鳴っているのがわかった。榊さんも神楽坂さんも登録者100万人を超える人気男性Vチューバーだ。初のコラボ相手がこのようなビッグネームなら緊張していてもおかしくない。緊張しているのもそうだが、よりにもよって何故音咲さんのキャッチフレーズを使ってしまったのか、その驚きと戸惑いによって僕は更に混乱していた。
今日音咲さんに体育館裏で助けられたことや緊張を紛らわそうとコラボ配信前にララさんのコメントを読んだことにより、音咲さんのことがどうしても頭の中に残っていたようだ。
気を付けなければならないとわかっていたが、やはり僕はこのコラボ配信にどう足掻いても緊張していたのだ。本番はどうしても場を盛り上げ、間を持たせようとしていらぬことを口走ってしまう。しばしば配信で炎上してしまうのはこういった緊張から来るのではないかと僕は悟る。
──音咲さん、この配信見てるのかな……
リスナーさんからの質問に答えていった僕だが、上手く話せているのかわからない。
『週末のアーペックスの耐久配信でプロ並の実力を持つシロナガックスさんとマッチングしましたが、あの時の気持ちなどを教えてください、とのことですが……僕もあの配信の切り抜き見ましたよ!』
榊さんはそう言った。僕はドキリとする。
「え、ちょっと炎上したの知ってます?」
榊さんは言いづらそうにしながら述べた。
『…え、えぇまぁ……』
『え?どういうこと?』
反対に神楽坂さんはその一件について知らないようだったので僕は説明した。
『──そんなことがあったんすね!?』
僕は神楽坂さんの相づちに間髪いれずに答えた。
「そうなんですけど、僕もシロナガックスさんも全くそんなこと思ってなくて、あのあとSNSで釈明というか誤解を2人で解いたって感じです」
それはよかったと神楽坂さんが言うと、進行の榊さんが次なる企画を銘打つ。そう、榊さん達とグラウンドカートをする時間となったのだ。
グラウンドカートとは子供から大人まで楽しめるレーシングゲームだ。僕もよくこのゲームの配信をしている。榊さんと神楽坂さんは所属する『LIVER・A・LIVE』が主催するグラウンドカートラバラブ杯なるモノを企画して、Vチューバー業界とグラウンドカート界を盛り上げていた。
ラバラブ杯は同接にして17万人程の人が視聴している大会だ。年に一回催されるその大会は毎年視聴者数が増加していて、注目度も高い。僕もその大会を見て、いつしか自分もVチューバー達の集まるグラウンドカートの大会に出てみたいと思ったものだ。
そして今、過去のラバラブ杯で1位と3位を獲ったことのある榊さんと神楽坂さんとグラウンドカートをしようとしている。
『え~と部屋たてますね』
榊さんから送られてきた12桁の部屋番号を入力して、榊さんと神楽坂さんの待機する場所まで移動した。
僕が部屋に入ったを機に神楽坂さんが口を開いた。
『視聴者参加型の配信なんで、参加されたい方はこの番号を記憶してください。一瞬しか見せないんで、いきますよぉ……』
『いや、ちゃんと見せないと皆わかんないでしょ!もしよかったら皆さん参加してください!……あと、参加された方は一回交代でお願いします!』
『お願いしま~す』
「宜しくお願いします!」
つっこまれた神楽坂さんに習って僕も挨拶をした。続々と僕らの部屋にリスナーの皆さんが集まってきた。
さて、グラウンドカートは最大12人でやるレーシングゲームだ。キャラクターがマシンに股がり、或いは乗り込み、コースを駆け回る。コース上には加速や対戦相手を邪魔するアイテムが散りばめられており、例えコーナリングをミスしたりコース外へ落下してしまい下位に落ちてしまっても、そのアイテムを上手く駆使すれば巻き返すことのできるゲームとなっている。
視聴者さんが集まり、コース選択画面となった。
このコラボ配信で僕が成すべきことは、自分の腕前と邪魔された時のリアクションを盛大なものにすることだ。グラウンドカートは別の動画投稿サイト、ニカニカ動画でも人気を博しており、ニカニカ動画で活動している配信者にもアピールできる筈だ。
そうと決まればどのレースも上位に食い込む必要がある。
カウントダウンに伴ってコース選択画面が終了し、いよいよレース開始となる。
僕のマシンはこのゲームで最も使用者の多い青い色のバギーだ。初級者から上級者まで利用するこのバギーは性能も含めて操作しやすい。スタート地点に集まった僕や榊さんと神楽坂さん、リスナーさん達数人がこのバギーにまたがっている。
レースの開始を告げるキャラクターが現れると、画面中央に3の数字が出現し、次に2。
『はい!ここぉ!!』
神楽坂さんが叫んだ。
それはスタートダッシュと呼ばれる技で、勿論僕もそのタイミングでアクセルを踏んでいた。
1、go!!!
12人のプレイヤーが一斉にスタートした。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
青春
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる