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第10話 清掃員
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~織原朔真視点~
僕はとあるつてを使ってホテルの客室清掃員としてアルバイトをしている。休みの日は夜の配信の為に朝から働いていることが多い。
そしてホテルの清掃員はとくに誰かと会話をすることなく1日を終えることができるのでありがたい。たまに廊下を歩いているとレストランはどこかとか近くにコンビニがないかとか訊かれることもあるが、その際はホテルの案内図やホテル周辺の地図を渡している。
僕はマスターキーを使って部屋に入り、今日最初の仕事にとりかかる。部屋に入って僕は少しだけげんなりした。
──この人の部屋からか……
脱ぎ散らかしたバスローブ、化粧品等の粉で汚れた床とデスク、ベッドやその周辺にはお菓子の食べカスが散らばっている。
清掃員をやっていると、部屋の汚れ方でその人の性格なんかもわかる気がしてくる。この部屋の宿泊客は、女性で何度もこのホテルを利用している常連だった。どういった人が泊まっているのかその姿を見たことはないが、この高級ホテルに何度も宿泊しているのだから会社の経営や出張の多い大企業の社員等をやっているのかもしれない。だけどどこかだらしない人というのが僕の見立てだ。
「それよりも仕事仕事っと……」
まずはベッドの枕やシーツ等をまとめて新しいものに取り替える。しかし枕を取ろうとしたその時、この部屋に泊まっていた人のだと思われるスマートフォンを発見した。
ベッドから出てきたそのスマホには何だか見覚えがあった。
手に取ると、スマホに付随してくるようにこれまたどこで見たことのあるロザリオのアクリルキーホルダーがダラリと垂れた。もう少しで思い出せそうだったその時、ドアのロックが外れる音が聞こえた。入ってきたのは椎名町45のメンバーにして僕の隣の席の音咲華多莉だった。
僕は驚愕を隠しきれない。そして思い出す。そうだ。このスマホは彼女のだ。
──え?じゃあこの汚い部屋は……
僕は彼女と目が合うと動揺してしまう。
「あ、それ私の──」
そう言って彼女が一歩、歩み寄ると表情を一変させる。何かこう、名探偵が真犯人に気付いたようなそんな表情だった。
そして音咲さんはやはり名探偵のように僕に告げる。
「あなた、私のストーカーだったのね!!」
そう言ってから彼女は息を大きく吸い込み、僕を糾弾する準備を整える。そして口を開いた。
「だから私に近づいてきた!そうでしょ!?」
彼女が何を勘違いしているのかわからなかった僕は、取り敢えず持っているスマホを彼女に渡そうとしたがしかし、
「動かないで!!」
僕はピタリと動きを止める。
「そのままそのスマホを床に置いて!こっちに滑らせるように放りなさい!そして両手を挙げて後ろを向いて!」
ミステリー映画のワンシーンのような指示をする彼女。僕は音咲さんの言う通りに片手を挙げて、もう片方の手でスマホを床に滑らせるようとすると、彼女は待ったをかける。
「待って!!」
しかし僕は止まれなかった。スマホを床に滑らせるようにして彼女に放る。
「あぁぁぁ!!!エドヴァルド様のロザリオがぁぁぁ!!!」
僕は彼女の絶叫を聞きながらゆっくりと曲げた膝を伸ばして、スマホを滑らせた手も挙げた。スマホは音もなく音咲さんの元へと向かって行った。
音咲さんは慌てた様子でスマホを取り上げると、真っ先にロザリオに傷はついていないかどうかを確認した。目立った傷が無さそうだった為彼女は安堵した。その様子を僕が窺っていると、彼女は仕切り直して言った。
「両手を頭の後ろで組んで、後ろを向きなさい!」
僕はその通りに従うと音咲さんは手にしたスマホで誰かに電話をかけているようだった。
「直ぐに1508号室まで来て!」
電話を掛け終えるとこの部屋に向かって来る慌ただしい足音が聞こえる。
「ど、どうしましたか!!?」
このホテルの支配人の声が聞こえる。
「どうしたもこうしたもないわよ!見て!ストーカーを捕まえたわ!!」
支配人は後ろ姿の僕に近付く。僕の正体がわかったのか少し安堵した様子だった。そして僕に告げる。
「両手を下ろしてください」
僕は腕を下ろすと音咲さんは不服そうに声を漏らした。
「なっ!?」
彼女の口から不平が発せられる前に支配人は言う。
「彼はこのホテルの歴とした従業員ですよ」
その言葉に音咲さんは思考停止状態に陥った。
「……え?」
僕はとあるつてを使ってホテルの客室清掃員としてアルバイトをしている。休みの日は夜の配信の為に朝から働いていることが多い。
そしてホテルの清掃員はとくに誰かと会話をすることなく1日を終えることができるのでありがたい。たまに廊下を歩いているとレストランはどこかとか近くにコンビニがないかとか訊かれることもあるが、その際はホテルの案内図やホテル周辺の地図を渡している。
僕はマスターキーを使って部屋に入り、今日最初の仕事にとりかかる。部屋に入って僕は少しだけげんなりした。
──この人の部屋からか……
脱ぎ散らかしたバスローブ、化粧品等の粉で汚れた床とデスク、ベッドやその周辺にはお菓子の食べカスが散らばっている。
清掃員をやっていると、部屋の汚れ方でその人の性格なんかもわかる気がしてくる。この部屋の宿泊客は、女性で何度もこのホテルを利用している常連だった。どういった人が泊まっているのかその姿を見たことはないが、この高級ホテルに何度も宿泊しているのだから会社の経営や出張の多い大企業の社員等をやっているのかもしれない。だけどどこかだらしない人というのが僕の見立てだ。
「それよりも仕事仕事っと……」
まずはベッドの枕やシーツ等をまとめて新しいものに取り替える。しかし枕を取ろうとしたその時、この部屋に泊まっていた人のだと思われるスマートフォンを発見した。
ベッドから出てきたそのスマホには何だか見覚えがあった。
手に取ると、スマホに付随してくるようにこれまたどこで見たことのあるロザリオのアクリルキーホルダーがダラリと垂れた。もう少しで思い出せそうだったその時、ドアのロックが外れる音が聞こえた。入ってきたのは椎名町45のメンバーにして僕の隣の席の音咲華多莉だった。
僕は驚愕を隠しきれない。そして思い出す。そうだ。このスマホは彼女のだ。
──え?じゃあこの汚い部屋は……
僕は彼女と目が合うと動揺してしまう。
「あ、それ私の──」
そう言って彼女が一歩、歩み寄ると表情を一変させる。何かこう、名探偵が真犯人に気付いたようなそんな表情だった。
そして音咲さんはやはり名探偵のように僕に告げる。
「あなた、私のストーカーだったのね!!」
そう言ってから彼女は息を大きく吸い込み、僕を糾弾する準備を整える。そして口を開いた。
「だから私に近づいてきた!そうでしょ!?」
彼女が何を勘違いしているのかわからなかった僕は、取り敢えず持っているスマホを彼女に渡そうとしたがしかし、
「動かないで!!」
僕はピタリと動きを止める。
「そのままそのスマホを床に置いて!こっちに滑らせるように放りなさい!そして両手を挙げて後ろを向いて!」
ミステリー映画のワンシーンのような指示をする彼女。僕は音咲さんの言う通りに片手を挙げて、もう片方の手でスマホを床に滑らせるようとすると、彼女は待ったをかける。
「待って!!」
しかし僕は止まれなかった。スマホを床に滑らせるようにして彼女に放る。
「あぁぁぁ!!!エドヴァルド様のロザリオがぁぁぁ!!!」
僕は彼女の絶叫を聞きながらゆっくりと曲げた膝を伸ばして、スマホを滑らせた手も挙げた。スマホは音もなく音咲さんの元へと向かって行った。
音咲さんは慌てた様子でスマホを取り上げると、真っ先にロザリオに傷はついていないかどうかを確認した。目立った傷が無さそうだった為彼女は安堵した。その様子を僕が窺っていると、彼女は仕切り直して言った。
「両手を頭の後ろで組んで、後ろを向きなさい!」
僕はその通りに従うと音咲さんは手にしたスマホで誰かに電話をかけているようだった。
「直ぐに1508号室まで来て!」
電話を掛け終えるとこの部屋に向かって来る慌ただしい足音が聞こえる。
「ど、どうしましたか!!?」
このホテルの支配人の声が聞こえる。
「どうしたもこうしたもないわよ!見て!ストーカーを捕まえたわ!!」
支配人は後ろ姿の僕に近付く。僕の正体がわかったのか少し安堵した様子だった。そして僕に告げる。
「両手を下ろしてください」
僕は腕を下ろすと音咲さんは不服そうに声を漏らした。
「なっ!?」
彼女の口から不平が発せられる前に支配人は言う。
「彼はこのホテルの歴とした従業員ですよ」
その言葉に音咲さんは思考停止状態に陥った。
「……え?」
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