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第113話
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~ハルが異世界召喚されて2日目~
<サバナ平原最終決戦、獣人国右軍>
ハルとフィルビーは獣人国に入り、王都ズーラシアを抜け前回同様、オセロ村へと急ぐ、前回より絵本を選ぶ時間と聞き込みする時間がなくなった為、早く崖へと着いた。
戦場からは悲鳴と怒号が聞こえる。
前回の悲鳴一辺倒ではない為、まだ戦況は均衡していると考えられた。
不安がるフィルビーを崖の上に起き、ハルは戦場へと向かう。
「行ってくるね」
「…ハルお兄ちゃん……」
前回もハルが崖から降りるときにフィルビーに呼ばれた気がしたが、ハルは聞こえない振りをしてそのまま崖を飛び降りる。
「…ハルお兄ちゃん…もうこれ以上誰かを傷付けてほしくないの……」
フィルビーの虚しいお願いは吹き抜ける風によってかきけされた。
<獣人国右軍>
あぁ…目の前で仲間たちが殺られていく。
何で俺はここにいるんだ?
畑仕事をサボってたからか?
スープを残したからか?
いいや違う、全部自分で選んだのだ。
そう、周囲の目を気にして格好つけたから。親父の言うことを聞かなかったから。
──今の俺は...…
獣人国軍に入隊したロドニーは尻餅をついて目の前の戦闘に慄いていた。
今朝まで一緒にいた仲間たちの首が飛ぶ。
「ヒィィー!!」
「おい!ロドニー!立て!」
「立って戦え!」
ロドニーに仲間達の声は届かない。代わりに仲間の首を飛ばした敵兵と目があった。こっちに剣を構えて向かってくる。
後ずさるロドニー。
敵兵が剣を振り上げた。
──あぁ...親父の言うこと聞いとけば良かった……
目を閉じたロドニーは痛みに備え身体に力がはいるが、その痛みは一向に訪れない。
ロドニーはゆっくりと目を開けると、目の前で人族の少年が反乱軍を次々に薙ぎ倒しているのを目撃した。
前回の世界線では、獣人国側の兵士達は退却をしており、反乱軍がその背を討とうとしていた為に、ファイアーストームを撃ちやすかったのだが、今回はまだ獣人国側の軍が善戦していた為に乱戦を割って入る形でハルは助太刀していた。
そんな自軍の状況を知らず右軍の将ザカリーは反乱軍幹部のヂートを見やる。
「なんか見たことあるなぁ♪軍の偉い人かな?」
ヂートとザカリーは目があったのを切っ掛けにザカリーが仕掛けた。
ザカリーはヂートに向かって真っ直ぐ突き進む、その間、邪魔な反乱軍の兵士を双剣で切り裂き、押し退けながら前進する。
しかし、周囲の様子がおかしい。
ヂートもその異変に気付き辺りを見回す。
ヂートの方が早くその異変の元を特定した。
「子供?…しかも人族の?」
ヂートは一瞬肩の力を抜いたが、味方である反乱軍が一方的に殺られているのを目撃し、自身が将であるその責務を全うする為、ハルに攻撃を仕掛ける。
飛び蹴りをしながらこちらに迫るヂートを見てハルは思った。
「またこの攻撃かよ」
前回の世界線と同じ攻撃を仕掛けてくるということはこの攻撃にかなりの自信があるのではと推測する。
ハルは右足を前に出して半身で躱し、すれ違い様にヂートの足首を左手で掴んだ。
ヂートは自分の最高速度を見切られぎょっとする。掴まれた足首は引き寄せられ、もう片方の手によってヂートは首を切り落とされた。
ゴロゴロと転がるヂートの首。
ハルは転がる首に構うことなく、ジャイアントスイングの要領で回転する。周囲の反乱軍兵士は首のないヂートの身体によって吹き飛ばされた挙げ句、更にその胴体を投げつけられ隊列を乱された。
その光景を見ていたザカリーはその場から動けない。そしてハルが右から左へザカリーの前を通りすぎるのをただ見ていた。
まるで時間が止まり、動いているのはハルだけのように、ザカリーは感じただろう。
<サバナ平原の最終決戦、両中央軍>
獣人国中央軍の将ジャクリーンは大きな青竜刀で敵を斬りつける。
ルースベルトは自分の元上司に当たるジャクリーンを見てニヤリと笑ったが──。
「左軍より急報!ヂート様が討死!」
ルースベルトから笑みが消えた。
「あり得ん!一体誰に殺られたのだ!!」
「それが…人族の少年との報告が……」
その情報を聞いて更に信じられないルースベルト。しかし側面から迫ってくるハルを見やると考えを一変させた。
「アイツか!!」
ルースベルトは怒りに身を任せて、魔力をハンドアックスに込めた。
両刃の斧全体に炎が行き渡る。たまたま近くにいた味方である反乱軍の兵士まで飛び火していた。
ルースベルトはハルに向かって突進し、炎を纏ったハンドアックスを叩き付けた。
ハルは歩みを止めず片手でそれを受け止めもう片方の手でファイアーボールをルースベルトの左胸に唱えた。
ハルはハンドアックスをアイテムボックスに入れ、倒れたルースベルトを踏みつけながら前へ進む。
その光景を見たジャクリーンは呟いた。
「悪魔か…?」
<サバナ平原 獣人国左軍>
「ヂートがやられた!?」
バーンズは激怒した。そして持ち場を離れ一刻も早くヂートのいた反乱軍左軍へと向かった。
中央軍が見えてきた辺りでまたも信じられない報がバーンズの耳に届いた。
「…嘘だろ?ルースベルトまで?一体誰が!!?」
正面から歩いてくるハルを見て、バーンズは理解した。
──アイツだ……
ハルは中央軍を通り抜け獣人国左軍へと向かおうとすると、孤立した小隊がいるのを確認する。
ハルは見覚えのある熊のような獣人がいたので丁度良いと思った。獣人国側の兵士は誰もいない。
「ファイアーストーム」
バーンズは目の前の少年がヂートとルースベルトを殺った奴だと瞬時に悟った。
「全員でアイツを叩く!お前ら行く─」
威勢の良い発声は炎の渦によってかき消された。バーンズ率いる小隊は焼失する。
「「「うがぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
3人の将を倒し、戦況も獣人国側へだいぶ傾いた筈だ。しかし、フィルビーの兄である。ダルトンが見当たらない。
ハルはフィルビーを崖から回収してこの先にあるオセロ村へと向かった。
サリエリは遅れて戦地へと赴いた。自分の為に御膳立てが整っていることを確信していたが、目の前の戦地を見て喫驚する。
サリエリの両脇を伝令係が声を荒げて幹部達の討死を報告してくる。
しかし、サリエリには何も聞こえてこなかった。
<サバナ平原最終決戦、獣人国右軍>
ハルとフィルビーは獣人国に入り、王都ズーラシアを抜け前回同様、オセロ村へと急ぐ、前回より絵本を選ぶ時間と聞き込みする時間がなくなった為、早く崖へと着いた。
戦場からは悲鳴と怒号が聞こえる。
前回の悲鳴一辺倒ではない為、まだ戦況は均衡していると考えられた。
不安がるフィルビーを崖の上に起き、ハルは戦場へと向かう。
「行ってくるね」
「…ハルお兄ちゃん……」
前回もハルが崖から降りるときにフィルビーに呼ばれた気がしたが、ハルは聞こえない振りをしてそのまま崖を飛び降りる。
「…ハルお兄ちゃん…もうこれ以上誰かを傷付けてほしくないの……」
フィルビーの虚しいお願いは吹き抜ける風によってかきけされた。
<獣人国右軍>
あぁ…目の前で仲間たちが殺られていく。
何で俺はここにいるんだ?
畑仕事をサボってたからか?
スープを残したからか?
いいや違う、全部自分で選んだのだ。
そう、周囲の目を気にして格好つけたから。親父の言うことを聞かなかったから。
──今の俺は...…
獣人国軍に入隊したロドニーは尻餅をついて目の前の戦闘に慄いていた。
今朝まで一緒にいた仲間たちの首が飛ぶ。
「ヒィィー!!」
「おい!ロドニー!立て!」
「立って戦え!」
ロドニーに仲間達の声は届かない。代わりに仲間の首を飛ばした敵兵と目があった。こっちに剣を構えて向かってくる。
後ずさるロドニー。
敵兵が剣を振り上げた。
──あぁ...親父の言うこと聞いとけば良かった……
目を閉じたロドニーは痛みに備え身体に力がはいるが、その痛みは一向に訪れない。
ロドニーはゆっくりと目を開けると、目の前で人族の少年が反乱軍を次々に薙ぎ倒しているのを目撃した。
前回の世界線では、獣人国側の兵士達は退却をしており、反乱軍がその背を討とうとしていた為に、ファイアーストームを撃ちやすかったのだが、今回はまだ獣人国側の軍が善戦していた為に乱戦を割って入る形でハルは助太刀していた。
そんな自軍の状況を知らず右軍の将ザカリーは反乱軍幹部のヂートを見やる。
「なんか見たことあるなぁ♪軍の偉い人かな?」
ヂートとザカリーは目があったのを切っ掛けにザカリーが仕掛けた。
ザカリーはヂートに向かって真っ直ぐ突き進む、その間、邪魔な反乱軍の兵士を双剣で切り裂き、押し退けながら前進する。
しかし、周囲の様子がおかしい。
ヂートもその異変に気付き辺りを見回す。
ヂートの方が早くその異変の元を特定した。
「子供?…しかも人族の?」
ヂートは一瞬肩の力を抜いたが、味方である反乱軍が一方的に殺られているのを目撃し、自身が将であるその責務を全うする為、ハルに攻撃を仕掛ける。
飛び蹴りをしながらこちらに迫るヂートを見てハルは思った。
「またこの攻撃かよ」
前回の世界線と同じ攻撃を仕掛けてくるということはこの攻撃にかなりの自信があるのではと推測する。
ハルは右足を前に出して半身で躱し、すれ違い様にヂートの足首を左手で掴んだ。
ヂートは自分の最高速度を見切られぎょっとする。掴まれた足首は引き寄せられ、もう片方の手によってヂートは首を切り落とされた。
ゴロゴロと転がるヂートの首。
ハルは転がる首に構うことなく、ジャイアントスイングの要領で回転する。周囲の反乱軍兵士は首のないヂートの身体によって吹き飛ばされた挙げ句、更にその胴体を投げつけられ隊列を乱された。
その光景を見ていたザカリーはその場から動けない。そしてハルが右から左へザカリーの前を通りすぎるのをただ見ていた。
まるで時間が止まり、動いているのはハルだけのように、ザカリーは感じただろう。
<サバナ平原の最終決戦、両中央軍>
獣人国中央軍の将ジャクリーンは大きな青竜刀で敵を斬りつける。
ルースベルトは自分の元上司に当たるジャクリーンを見てニヤリと笑ったが──。
「左軍より急報!ヂート様が討死!」
ルースベルトから笑みが消えた。
「あり得ん!一体誰に殺られたのだ!!」
「それが…人族の少年との報告が……」
その情報を聞いて更に信じられないルースベルト。しかし側面から迫ってくるハルを見やると考えを一変させた。
「アイツか!!」
ルースベルトは怒りに身を任せて、魔力をハンドアックスに込めた。
両刃の斧全体に炎が行き渡る。たまたま近くにいた味方である反乱軍の兵士まで飛び火していた。
ルースベルトはハルに向かって突進し、炎を纏ったハンドアックスを叩き付けた。
ハルは歩みを止めず片手でそれを受け止めもう片方の手でファイアーボールをルースベルトの左胸に唱えた。
ハルはハンドアックスをアイテムボックスに入れ、倒れたルースベルトを踏みつけながら前へ進む。
その光景を見たジャクリーンは呟いた。
「悪魔か…?」
<サバナ平原 獣人国左軍>
「ヂートがやられた!?」
バーンズは激怒した。そして持ち場を離れ一刻も早くヂートのいた反乱軍左軍へと向かった。
中央軍が見えてきた辺りでまたも信じられない報がバーンズの耳に届いた。
「…嘘だろ?ルースベルトまで?一体誰が!!?」
正面から歩いてくるハルを見て、バーンズは理解した。
──アイツだ……
ハルは中央軍を通り抜け獣人国左軍へと向かおうとすると、孤立した小隊がいるのを確認する。
ハルは見覚えのある熊のような獣人がいたので丁度良いと思った。獣人国側の兵士は誰もいない。
「ファイアーストーム」
バーンズは目の前の少年がヂートとルースベルトを殺った奴だと瞬時に悟った。
「全員でアイツを叩く!お前ら行く─」
威勢の良い発声は炎の渦によってかき消された。バーンズ率いる小隊は焼失する。
「「「うがぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
3人の将を倒し、戦況も獣人国側へだいぶ傾いた筈だ。しかし、フィルビーの兄である。ダルトンが見当たらない。
ハルはフィルビーを崖から回収してこの先にあるオセロ村へと向かった。
サリエリは遅れて戦地へと赴いた。自分の為に御膳立てが整っていることを確信していたが、目の前の戦地を見て喫驚する。
サリエリの両脇を伝令係が声を荒げて幹部達の討死を報告してくる。
しかし、サリエリには何も聞こえてこなかった。
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