喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~

中島健一

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第103話

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~ハルが異世界召喚されてから1日目~ 

 ダルトンと同い年のポーアは前方を確認していた。 

 反乱軍の兵士達がいる。 

 ポーアは掌を後方にいる仲間たちに向けていた。これは待ての合図だ。 

 ダルトンは固唾を飲んで様子を窺っている。 

 ポーアはその掌を地面と水平になるように伏せ、手を降ろした。
 
 その合図でロバートは前方にいる反乱軍の兵士の背後から近付き首をかっ斬った。 

 そのままロバートと幾人かで反乱軍兵士を葬る。 

「敵襲だ!!」 

 この攻撃に気付いた反乱軍の兵士達は声をあげた。 

 混乱する中、前進するロバートは前方をファイアボールで焼き払うと、そこから悲鳴が聞こえる。 

「「「うわぁぁぁぁぁ」」」 

 敵の何人かと前方を覆う草木を焼き払ったようだ。 

 ロバートはそのまま前進し燃えている木や草をまるで火の輪潜りのように頭を抱えながら飛び越え、両手を広げファイアボールを左右に放った。 

 ダルトンはロバートの背中を追いながら辺りを見回す。目立った行動をしているロバートを狙っている者がいるはずだ。 

 ──いた! 

 木の上だ。ダルトンが木の上の者目掛けてウィンドカッターを放とうとしたが、 

「ファイアーボール」 

 その兵士が足場にしていた枝が焼かれ、炎を纏った木が上から落ちてきた。 

「遅い遅い♪」 

 ダルトンの肩に手をおき優しく声をかけてきたのはイアンだった。 

「イアンさん...すみません」 

「ハハッ良いって♪」 

 粗方敵の隊を撃破したダルトン達は一度集まった。 

「オイ!イアン!危なかっただろ!」 

 ロバートはイアンの放ったファイアボールの残骸が自分の所に落ちてきたことに文句を言っている。 

「すまない。ただ君の援護をしただけなんだ」 

「バカ野郎!援護するやつに殺されかけてたまるかよ!」 

「「「はははは」」」 

 周りの連中は笑っていたが当の本人達に笑顔はない。 

 ロバートとイアンはダルトンと同じ村の出身でとても仲が良かった。 

 力と勇気のあるロバートと冷静で頭のいいイアンはいいコンビだった。 

 しかし戦争が始まり、二人はあまり笑わなくなった。昔はあんなにも仲が良かったのに。ダルトンは個人的にはイアンの方が好きだった。ロバートは少し近寄りがたい、そんな存在だった。 

「あとお前!また殺さなかっただろ?」 

「なんのことだい?」 

 ロバートがまたしてもイアンに突っかかる。 

「惚けるな。お前が魔法で打ち落とした奴、あれ生きてるだろ?」 

「さあ?」 

 ぐっとロバートはイアンの胸ぐらを掴む。 

「お前が殺さなかったせいで、仲間が危険に晒されるんだよ!」 

 イアンは例え戦争中でも敵兵を殺さない。そして、負傷している兵がいれば声をかけ、手当てをする。それが敵兵でも。そんな優しさを持つ青年イアンを村の人達は尊敬していた。 

 対して、ロバートは目的の為なら、敵を躊躇なく殺す。ダルトンはその姿に恐れ、同時に憧れてもいた。 

「まさかとは思うがイアン………カトリーヌを殺した野郎が目の前にいても殺さないつもりか?」 

「!!?」 

 ロバートの問に怯むイアン。 

「……わからない。ソイツを前にしてみないと……」 

「なんでだよ!?まぁお前が殺さなくても俺が殺すけどな?」 

 カトリーヌとはロバートとイアンの幼馴染みだ。オセロ村が襲われた時に犠牲となった。正義感の強い美しい獣人だった。 

 ダルトンと妹のフィルビーもカトリーヌには世話になったものだ。 

 ロバートとイアンのどちらかと付き合っていたなんて話は昔からあったが、今はもうそんな話はできない。 

 片目が潰れたハイエナのような獣人がそんなカトリーヌの背中を銛で貫いた。 

 ダルトンはあの時の光景がフラッシュバックしたのをグッと眼を瞑って堪える。  

 皆がイライラしている。 

 いつ殺されるかもわからない場所では精神状態もギリギリだ。 

 ロバートの言い分もわかるし、なるべく殺したくないイアンの気持ちもダルトンにはわかっていた。いやここにいる部隊の全員が二人の意見を理解していた。 

 皆が村にいた頃は、夢を語り合い、笑い合い、支えあってきたのだから。 

「そ、それよりもあともう少しで俺達の村ですよ!」 

 ダルトンと同い年のポーアが二人を宥める。 

「ふんっ」 

 ロバートはイアンの胸ぐらを離した。 

「あぁ、そうだな」 

 イアンは襟元を正す。 

 皆が見覚えのある密林から郷愁を、ダルトンは妹との、フィルビーとの思い出が甦る。 

 ──今フィルビーは何をしているのだろうか?苦しんでいるのだろうか?それとも…… 

 行軍を進め、ようやくダルトン達の故郷オセロ村の隣にあるダンプ村に着いた。そこは一部壊れていたが、概ねあの時のままだ。ここも現在、反乱軍が占領している。 

 逸る気持ちを抑えるダルトン達は周囲を偵察している。 

 警備はそこまで厳しくない。寧ろかなり甘い部分がある。 

「これは何らかの罠だな」 

 イアンは眉をひそめて言った。 

「罠だろうがなんだろうが俺は行く!もう少しで俺達の村なんだこんなところでぐずぐずするつもりはない!」 

 ロバートはダンプ村に突入した。 

「待て!ロバート!」 

 ロバートを慕う者達も後を追った。 

 イアンとダルトン達は村の周囲に待機し、それぞれが援護できるように準備をした。 

 ロバート達が突入してから数刻後…… 

「イアン!来てみろよ!」 

 ロバートが村に入るよう促した。 

 イアンとダルトン達は村に入り、ロバート達と合流する。 

「これは、どういうことだ?」 

「この村にはコイツらしかいなかった」 

「なぜだ?」 

「そんなの俺が知るか」 

 怯えながら膝をつき両手をあげ、敵意のないことを示す反乱軍の兵士達とそれを囲むロバート達。 

「何故お前達しかいないのか理由を言え!」 

 イアンが尋問をする。 

 反乱軍の兵士が言葉を選びながら答えた。  

「…この村の防衛を最低限なものにして、密林の中を回り込んでくる獣人国軍を破った後、サバナ平原に向かい獣人国左軍を殲滅せよとの指令があった……」 

「!!?」 

 ダルトン達はざわついた。 

「皆最後の戦いだからと言って、ここの防衛を蔑ろにして行軍についていっちまったんだ!!」 

 ダルトン達の動きが筒抜けになっていた。 

 そんなダルトン達の驚きを無視して反乱軍の兵士は続けた。 

「…この内乱も直終結する。俺達を殺しても意味がないんだ!お前らも俺達の仲間にならないか!?今なら良いように取り計らう!!」 

「そんなの俺達には関係ない……」 

 ロバートが冷たい目をしながら口にする。 

「この先のオセロ村にお前ら反乱軍はどのくらいいる?」 

 イアンが遮るように質問した。 

「多分俺達より少し多いくらいだと思うが……」 

 反乱軍の兵士はそう答えた。 

 ──ここは、皆で一度話し合うべきだ…… 

 イアンがそう考えていると、 

 ヒュンと風を切り裂く音が聞こえた。イアンは視線を音のした方に向けるとロバートが尋問に答えた兵士の首を切り落とした。 

 その頃、ハルとフィルビーはというと、 

 ハルがフィルビーを奴隷から解放し、フルートベール王国にある公園の片隅で、フィルビーの身体を洗っている最中だった。 

 ろくに水浴びをさせられていなかったフィルビーの身体をハルが水属性魔法で綺麗にしている。 

 ハルの掌から飛び出す水に幻想的な表情を浮かべるフィルビー。顔付近に水が来て眼を瞑るがずっと笑顔のままだ。 

 笑いが絶えない。ハルはこの時の水遊びが原因で一度戻ってしまった。おそらく人を楽しませる喜びによるものだろう。 

 またもフィルビーを救出し水浴び、というよりは水遊びをしている。 

 フィルビーは余程楽しいのか尻尾を一定のリズムに揺らしていた。 

 ハルは寝そべり、両掌を上空へと向けそこにフィルビーを乗っけた。そこから水属性魔法を噴射する。 

 フィルビーは水力で浮かび上がり、両手を広げながらはしゃいでいる。 

「もっともっと~!!」 

 ハルは更に水力を上げてフィルビーを高いところまで持ち上げた。 

 そして一気に魔法を解除する。 

 フィルビーは高いところから落ちていく。 

 ハルは落ちてくるフィルビーをキャッチしたが、先程まであんなにもはしゃいでいたフィルビーは何か思い詰めた顔をしていた。 

「どうしたの?怖かった?」 

 首を横に振るフィルビーは静かに語りだした。 

「よく夢を見てたの。高い崖から落ちる夢を…… 」 

「それを思い出させちゃったんだね……」 

「ううん……落ちたのはフィルビーじゃなくてお兄ちゃんの方なの……」
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