喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~

中島健一

文字の大きさ
上 下
42 / 146

第41話

しおりを挟む
~ハルが異世界召喚されてから3日目~ 

 ボサボサの黒髪で目付きは悪い(自分ではそこまで悪くないと思ってる)負けず嫌いな俺の名前はスコート・フィッツジェラルド。 

 王立魔法高等学校のAクラスに入学した。そして現在、その入学式の最中だ。これから展開される学校生活を夢想する。これは単なる夢ではない。計画だ。 

 アマデウス校長の挨拶始まった。 

 フン、いずれアンタを越えてやる…おっと、思わず睨み付けてしまった。強い奴を見るとつい敵対したくなる…… 

 そして次に生徒代表の挨拶、レイ・ブラッドベルが壇上へと上がった。 

 コイツが俺のライバル。フフフフフフ、こうしてお前と同じクラスになれたんだ。直接俺がぶっ飛ばしてやるぜ!フッフッフッ…… 

 その時、俺の脳天に衝撃が走る。隣にいるゼルダに頭をグーで殴られたようだ。 

「ちょっと何笑ってんの?気持ち悪いんだけど?」 

 セミロングの赤茶けた髪に落ち着いた目付きは同い年にもかかわらず彼女を年上のように感じてしまう。 

 ゼルダ・セイルラー。 

 彼女は俺がいないとダメなのさ、なんせ彼女の護衛として俺はこのクラスに入ったのだから…… 

 ゼルダはスコートよりも地位の高い貴族だ。俺は騎士爵。貴族の階級でいうなら、まぁ奴隷みたいなものさ。 

 しかしゼルダは子供の頃から分け隔てなく接してくれる素晴らしい女性だった。 

 いつしか彼女を守ると俺は心に決めた。え?騎士なのになんで魔法やってんのかって?ゼルダが魔法の才能があってこの魔法学校に入りたいって言ったからだよ。彼女は俺が守らなきゃダメだろ?だから俺も魔法の練習をしたってわけだ。 

 この歳で魔法も使えるし剣技も使える。こんな有望な奴はいないと、言われたものだ。アイツを認識するまでは、俺のライバル…レイ・ブラッドベル…… 

<訓練場> 

 学校のオリエンテーションが一通り終わると、Aクラス担任のスタンがAクラス生徒の実力を見たいと言って、一堂が訓練場に集合する。 

 ──フフフ 

「あれが的だ!試験の時使ったよな?これを自分の持てる最高の力でぶつけてほしい」 

 Aクラスの者達が順番に各々魔法を行使する。 

 ゼルダが唱えた。 

「ウィンドカッター」 

 緑色に光る魔法陣の中心から風の刃が放出され、的に当たる。ゼルダの綺麗な赤茶けた髪が靡く。 

 ──美しい、ゼルダ、やはり君は最高だ。 

 次はスコートの番だ。 

「シューティングアロー」 

 白く輝く魔法陣から光の矢が飛び出し、的にあたった。 

 ──フン!こんなもんさベイビー 

 自分の魔法の出来を見て満足したスコートは髪をかき上げながらどや顔をする。もしかしたら声に出ていたかもしれない。 

 次はレイの番だ。
 
「シューティングアロー」 

 一筋の光が瞬きの間に的を捕らえ爆発する。的から煙がでている。 

 ──うっ 

「すっげぇ~」
「流石…」 

 Aクラスの者たちがレイの魔法に感嘆の声をあげる。 

 ──フン、流石は俺のライバル…こうでなきゃ面白くない…… 

「次、ハル・ミナミノ」 

 スタンが最後の生徒の名前を呼んだ。 

 ──どうやったら俺はアイツに勝てるんだ…… 

 スコートはレイの魔法について考察している。レイとゼルダ以外の生徒に興味がないようだ。 

 スコートがレイに勝つ姿を想像していると、 

「フレイム」 

 よく耳にする魔法が聞こえた。唱えられたらどんなに良いか、得意の夢想の中でスコートがよく唱えている魔法だ。 

 その魔法名を他人の声で聞くと違和感を覚える。しかしそれは現実に起こっていた。 

 スコートは顔の表面にチリチリと熱を感じると、詠唱した平民出の生徒を見る。 

 業火の炎が生徒の掌から迸る。的が消滅し、鉄の箱だけになった。 

「なっ!?」 

「ハル?…」
「ハル君?…」 

「「凄い!!」」 

 女子生徒二人が庶民の元に駆け寄る。 

 そんな中、スコートのライバルであるレイは歓喜を滲ませている表情をしている。 

「今の第二階級魔法だよな?」
「すっげぇ~」 

 他の生徒達は戸惑いと賞賛の言葉を漏らしていた。 

 そしてスコートは、 

「コイツ…庶民だよな?」 

 自分は騎士爵だがそれなりのプライドは持っていた。もしかしたらいつも他の貴族達から偏見の目で見られているせいで、スコートも庶民に対してそんな目で見ていたのかもしれない。 

「ハル…この魔法、いつ使えるようになった?」 

 担任のスタンが質問する。 

「ん~1週間くらい前ですかね?」 

「…そうか…今お前レベルいくつだ?」 

「えっと12です」 

 ハルのレベルを聞いた生徒達は、 

「12!?」
「嘘だろ?」 

 信じられないと言った声が聞こえた。スコートも無意識に声を漏らしていた。 

「おいおいそれは……」 

 ──嘘だ!何かの間違いだ……いや…コイツは魔法が凄いだけだ、一対一の戦いなら俺の方が強い! 

 スコートが現実逃避をしていると、スタンが言った。 

「そうか…嘘じゃないんだな?」 

「はい」 

「…よし!お前らハルを見習って魔法に励めよ!」 

 ──俺はこんな奴認めんぞ!? 

~ハルが異世界召喚されてから4日目~ 

 襲撃は今回もなかった。平常どうりAクラスはダンジョン講座の授業をした。 

 そしてその放課後、 

「まって!クロス遺跡ってことは泊まり込みじゃないですか!」 

「そうだ!三泊四日だ!」 

「そんな!急です!着替えとか用意しなきゃ…」 

 女子生徒達がざわざわしている。 

「昨日説明したろ?Aクラスは恒例でレベルアップ演習の時に王都からでるって?」 

「出るとしか聞いてません!」 

「そうだっけ?」 

 スタンは頭をかいた。 

───────────────────── 

「突然すぎるよね?」 

 ゼルダがアレックスに声をかける。 

「本当にそう!」 

 アレックスはいつもの調子で答えた。 

「ねぇ?これから皆で買い物行かない?明日から寝食を共にするんだし」 

 ゼルダが砕けた言葉で誘った。 

「行こう!ね!?マリアも行くでしょ?」
 
 アレックスはその提案を受け取ると、すぐに了承の返事をして友達のマリアを誘った。 

「うん!」 

 マリアの快い返事を聞くと、アレックスは他の女子生徒にも声をかける。 

「クライネもリコスも行こう?」 

 クライネは声をかけられて驚いていた。 

「ぇ!?…行きます……」 

 控え目な返事をするクライネ。 

「リコスは?」 

 アレックスは、三編みの丸い大きな眼鏡を掛けている女子生徒リコスに、もう一度尋ねた。 

「ぅ…うん。行く…でも大丈夫?」 

「何が?」 

「私が一緒に行っても……」 

「大丈夫に決まってるじゃない?」 

 Aクラスに平民はハルと、このリコスだけだ。リコスはいつも大きな本を持っている如何にもオタク気質な女の子だ。 

 マリアはレイを探したが、もう教室から姿を消していた。残念そうな表情を浮かべている。 

「ハルも…行く?」 

 アレックスは他の女子生徒を誘う時よりも緊張しながら尋ねた。 

「どこに?」 

「これから明日の準備に着替えとか、防具とか買いに行くんだけど?あと水着も」 

「行く!」 

 ハルの返事を聞いて、アレックスの表情が急に明るくなった。 

 ゼルダも男子生徒のスコートを誘う。 

 アレックスは他の男子2名。 

 デイビッドとアレンに声をかけ、レイを除いたAクラスの全員が参加することになった。 

───────────────────── 

<武器防具店> 

 短剣から大剣、槍、パルチザン、トライデント、ハルバート、杖、籠手、フルプレート、盾 

 ──中二病満載の場所だな 

 ハルはそう思いつつ内心テンション上がっていたのはここだけの話だ。 

 皆が其々の防具を見ている中、ハルは何となく壁に飾られている長剣を手に持った。 

 白銀に輝く刀身は鏡のようにハルをうつす。 

 ──このくらいの武器がほしいかも、ゴブリンジェネラルの大剣はデカ過ぎるからなぁ。 

「なんだお前?ロングソードがほしいのか?」 

 ハルは刀身の角度を変えて、声のする方を映した。刀身には黒髪のボサボサ頭に目付きの悪いスコートがいた。 

 ──あぁこの人、訓練場で魔法を的に当てた後、こんなもんさベイビーって言ってた人だ。 

 ハルはちびま○子ちゃんに出てくるキャラクターかよ!ってその時ツッコンだのを思い出した。 

「…うん。ほしいかも」 

「フン。俺は騎士出身だからな?俺の勝ちだな?」 

「…ぁ、ぅん。そうだね?」 

 ──何言ってんだこの人? 

 ハルはロングソードを手に持ち、今度は防具を見に行く。 

 何故だか後からスコートがついてくる。 

 ──なんでついてくるんだ…… 

 その時、店内から、 

「やめてください!」
「やめてって言ってるでしょ?」 

 マリアの拒絶する声と、ゼルダの落ち着いた声が聞こえてくる。 

「なんだよ?一緒に選んでやるって言ってんじゃん?」
「なぁ?」
「グッフフ」 

 マリア、アレックス、ゼルダ、クライネ、リコスが柄の悪い冒険者3人に絡まれていた。 

 ハルは思う。 

 ──この世界は本当に治安が悪いな……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

異世界でスローライフを満喫する為に

美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます! 【※毎日18時更新中】 タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...