上 下
36 / 146

第35話

しおりを挟む
~ハルが異世界召喚されてから4日目~ 

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
【Eランククエスト】
~ゴブリンをぶっ潰せ!~ 

『報酬』 
・討伐したゴブリン数×500ゴルド 

『クエスト達成条件』
・ゴブリンの討伐
・証明としてゴブリンの右耳の回収 

『場所』
・フルートベール王国領サザビー 

『ワンポイントアドバイス』
・犯されないように頑張ってね♡ 

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 
 冒険者のランクとレベルの相関性。あくまで目安。 

Sランク  レベル35以上
Aランク  レベル25以上
Bランク  レベル20
Cランク  レベル15
Dランク  レベル10 
Eランク  レベル8
Fランク  レベル6
Gランク  レベル5 

 目的地は王都を出て西、サザビーという街の近くだ。サザビーまでは馬車に乗って2時間かかる。 

 現在、ハルとフェレスはサザビーを目指して馬車に乗ってる。馬車と行っても金を払って乗るような上等なものではなく、商人の荷物が乱雑に置いてあるガタガタの馬車だ。 

 フェレスは息巻いて馬車に乗ろうとしたのだが、ハルの分はおろか自分の運賃すら持っていなかった。財布を逆さにして何も入っていないことをハルに悲しい目で知らせてきたのだ。尻尾もうなだれていた。 

 丁度サザビーに行く商人の荷馬車に護衛としてタダで乗れたのはよかった。 

 フェレスは猫の獣人で頭に2つのフワフワな耳とお尻に尻尾が生えてる以外は人族とあまり変わりがない。でもよく見ると鋭い牙と鋭い爪、大きな胸もある。性別は女性のようだ。 

 二人は狭い荷馬車に胡座をかいて座っていた。 

「Sランク冒険者って今どのくらいいるんですか?」 

「2パーティーにゃ!」 

「2パーティーともレベル35以上の方達から構成されてるんですか?」 

 フェレスは腕を組んで考えた。 

「ん~にゃーの見立てでは2パーティーとも丁度レベル35が1人いてあとはレベル20代がサポートしてる感じにゃ!?」 

「凄い……」 

「ただその1つのパーティーに1人だけ……」 

 フェレスは鋭い爪が伸びた人差し指を一本立てて言った。 

「1人だけレベル50の化け物がいるにゃ」 

 ハルはフェレスの人差し指を寄り目でみつめながら驚いた。 

「50!!?」 

「にゃははは!いい反応にゃ~♪この星にはまだまだ未知なことが拡がってるにゃー、それよりも強い奴がまだどこかにいるかもしれないにゃ?」 

 ハルは感心した。あの剣聖と紫色のドレスを着た女はレベルどのくらいなのだろうか? 

「そういえば、どうしてレベルが分かるんですか?」 

 ハルの質問を受けてフェレスの眼が怪しく光る。 

「猫の獣人は生まれつき鑑定のスキルを持ってるんだにゃ?」 

 今までふざけた口調で話していたフェレスが少し低いトーンになった。 

 ハルは急に寒気がする。 

 ──じゃあ僕のレベルまでわかってるんじゃ…… 

 フェレスは先程までの真剣な表情を崩して笑った。 

「嘘にゃ~!!そんなの持ってないにゃ!鑑定スキルを持ってる奴とか冒険者ギルドにある石板でわかるにゃ」 

「このやろう……」 

 フェレスは一頻り笑ったあと、何もないところから闇を出現させた。フェレスはそこに手を突っ込んで水の入ってる瓶を取り出した。 

「それっなんですか!?」  

 ハルは大きな声を出して言った。 

「これにゃ?これはアイテムボックスにゃ!この中にアイテムや武器や素材を収納してぇ、いつでもどこでも取り出せるスーパー便利なものにゃ!」 

 フェレスはアイテムボックスから寝間着や鼻メガネ、青色のに光る毛皮、ドラゴンの様な頭蓋骨を取り出してハルに自慢してくる 

「にゃーはこの魔法で皆から一目置かれてるのにゃ!これのお陰でにゃーは仲間達の荷物運びにゃ!って誰が荷物運びにゃぁ!」 

「そんなことは言ってないって!でもそれってどうやるんですか?」 

「むふふふ、これは、にゃーの血と汗の結晶なのにゃ!ギルドでも5、6人いや7、8、9、10人くらいしかできないにゃ!」 

 腕を組ながらうんうんと頷くフェレス。 

「闇属性魔法の一種ですか?」 

「ぎにゃ!なんでわかったにゃ?正確にはスキルにゃんだが、にゃーの見立てでは闇属性魔法の解釈が必要にゃ」 

「例えばこんな感じですか?」 

 ハルは自分の掌から闇属性魔法を展開した。 

 ──闇…無限に広がる空間、全てを飲み込む…… 

 ハルの掌から闇が渦巻き、重力がおび始めると、 

「ま、待つにゃ!」 

 フェレスが慌てて止めた。 

「え?」 

「できてたにゃ!できたを通り越してにゃーとこの馬車を飲み込もうとしてたにゃ!」 

「やった」 

ピコン
新しいスキル『アイテムボックス』を習得しました。 

 やはり、新しいスキルを覚えたとしても戻ることはない。 

「やっぱり君は面白いやつにゃ」 

 フェレスがハルに称賛の言葉を送ると、馬車が急停車した。 

 ハルとフェレスはともに進行方向に身体が傾き、また元の体勢へとドスンと戻った。 

「野盗か魔物どっちにゃ?」 

 フェレスは大きな声で馬を御している商人に訊いた。 

「ま、魔物です!ゴブリンです!ゴブリンの群が……」 

 商人の声は震えていた。 

「お手並み拝見にゃ」 

 フェレスはハルを見やる。 

「はい!」 

 前方には武器を構えたゴブリンが6体いた。小さな体躯、老人のようなしわくちゃな顔に汚ならしい身体、それぞれボロボロの衣服を身にまとい、これまたボロボロのナイフや長剣、棍棒などを持っている。 

 フェレスを見ると寒さを堪えるように震えていた。 

「にゃーはゴブリン苦手にゃ!!気持ち悪いにゃ!」 

「じゃあなんでこのクエスト受けたんですか!!」 

「初討伐クエストならゴブリンって軽い読み物ならお決まりにゃ!」 

 ハルはゴブリン6体が横並びになり、扇型の陣形をとっているその前に立った。 

 6体が一斉に襲いかかる。 

 真っ先にハルに到達した棍棒を持ったゴブリンが、ハルの脳天目掛けて棍棒を振り下ろした。しかし、ハルは魔力を込めた拳をそのゴブリンの腹部に放つと、下半身だけを残して胴体が散る。 

「え?」
「にゃ?」
「ひっ!!」 

 ハルとフェレスは驚き、商人は怯えていた。 

 ハルはレベルアップして初めて魔力を込めたパンチを放ったが、まさかここまでの威力を出すとは予想していなかった。 

 ──ゴブリンが弱いのもあるかもしれないけど…… 

 そしてハルは身体中に鳥肌が立った。初めて大きなゴキブリをティッシュの上から潰した感覚を思い出していた。 

 ──メキッブチッみたいな感触……あと5回もそれやるのか…… 

 残る5体はハルの攻撃を目の当たりにすると足を止め動かなくなった。 

「ハハハ、予想外」 

 ハルの攻撃を見たフェレスが呟く。フェレスは素がでると普通の喋り言葉になるようだ。 

「あ!しまった!素材が!」 

 小刻みに震えてる5体のゴブリンを水属性魔法と風属性魔法の並行魔法で溺死させた。 

 ゴブリン5体の右耳を回収する。 

「今の魔法はなんにゃ?」 

「今のは水属性と風属性魔法の応用です」 

「…というか、あのパンチはなんにゃ?なんでそんなに威力があるにゃ?」 

「鍛えたんで……」 

「筋肉にゃ!?」 

 このあとまたゴブリンを数体と魔物であるハウンドベアを相手にした。ハルは素材を覚えたてのアイテムボックスに回収した。 

 しかし、サザビーへ向かう道中にしては魔物が多い。 

「おかしいにゃ…確かにこの道はゴブリンが出てもおかしくはないにゃ……それでも出現しすぎにゃ…」 

 フェレスは静かに眉をひそめた。 

【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】 12
【HP】  121/121
【MP】  108/124
【SP】  149/149
【筋 力】 86
【耐久力】 107 
【魔 力】 114
【抵抗力】 102
【敏 捷】 99
【洞 察】 103
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 925/2600 

・スキル
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『自然の摂理』『感性の言語化』『アイテムボックス』『第四階級火属性魔法耐性(中)』『第三階級火属性魔法耐性(強)』『第二階級以下火属性魔法無効化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』『毒耐性(弱)』
  
・魔法習得
  第一階級火属性魔法
   ファイアーボール
   ファイアーウォール
  第二階級火属性魔法
   ファイアーエンブレム
  第四階級火属性魔法
   ヴァーンストライク
   ヴァーンプロテクト 

  第一階級水属性魔法
   ウォーター 

  第一階級風属性魔法
   ウィンドカッター 

  第一階級闇属性魔法
   ブラインド 

  無属性魔法
   錬成
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

処理中です...